理由を丁寧に確認することの大切さ

感覚的におかしい、間違っている、と感じることも、それはそれで人間として大事なんですが、
社会のルールは、長い歴史の中で、多くのケースをふまえて、様々な側面から検証して、特に法治国家では慎重に法制化・運用されるべきものですから、
何らかの行為に違法性があるかどうか、
誰かの発言が問題であるかどうか、
それらに対しては、どこがどう問題なのかという「理由」を、多面的な議論にも耐えうるように、丁寧に文字・文章で確認することが大切と考えます。
(議論に耐えうるということは、その確認する「理由」が、ほとんど反論が難しい状態になるように、磨いていくプロセスと思います。)

社会のルールだからといって、そのルール自体が絶対的に正しいかどうかというと、
ルール自体が、時代や環境変化を経て、社会自体のありたい姿とずれていたり、適合しないのであれば、ルール自体を丁寧に変えていく必要もあると思います。

しかしながら、往々にして、問題であると思われる(決めつける)言動に対して、「なんでそんなことも(問題であると)わからないの?」と、当たり前のように語る方がいらっしゃいますが、
そうであれば、多面的に検証して「問題あり」と説明できるはずですから、丁寧に説明してほしいんです。
でないと、「当たり前」と思っている問題言動が問題であるその理由が、明文化されないと、「当たり前」と思っている人々の間でも、その理由が本当に一致しているのか、一面的でないか、検証に耐えうるか、わからないはずです。
さらには、その問題言動に様々な社会問題を結び付けて、説明の焦点が分散して、理由の本質をぼやけさせてしまう人が少なくありません。問題点が問題であることを補強しているつもりかもしれませんが、因果関係が希薄なことを増やしても議論に耐えづらいままです。
もちろん、社会問題の理由がただ一つに帰着できるほど単純ではないことは理解しますが、軸となる強靭な理由をはっきり明確にさせる方が効果的と考えます。

そういう点で、ここ数日の、「性交同意年齢」に関する、毎日新聞の記事は、私はかなり上記に沿った(理由を丁寧に確認している)理想的な記事と感じました。
感覚的な人々にとっても、明確になった理由は、賛同できるものと思います。

記事中で、
『SNSでは「意味分からないし気持ち悪い」「どんな理由があれば許されるの」などの投稿が相次いだ。』
とありますが、これでは、法制化の根拠にならないですよね。
「気持ち悪い」という感情は、それ自体も尊重しますし、社会問題の提起のきっかけとしても重要と思いますが、
「気持ち悪い」という主観的感情で法制化したら、ほとんどすべてのことが違法行為になってしまうでしょう。
(なお、ツイッターなどのSNSは、理由を丁寧に確認するには、文字数が少なすぎますから、そういう丁寧な構築に向いておらず、丁寧な構築が軽んじられる社会に助長するという点で、構造的な問題があります。)

今回の「性交同意年齢の引き上げ」が必要な理由は、記事中にもありますとおり、

「成人と未成年の性行為は、恋愛の形をした性搾取・加害である。
未成年者は恋愛と錯覚し、未成年当時は被害と気づくことができない。
こうした被害があまりに多く、保護(=違法行為化)が必要である。」

ということが一番の理由であり、法改正の根拠となるはずです。
(他に語られる理由も、法改正根拠の補助となりますが、一番の理由はぶれずに簡潔に明確にして、反論を強くはねのけられるようにすべきです。)

このように整理しないと、「感覚的にわかるでしょ」では、反論と戦えないというか、議論が構成できないのです。
感覚の発露だけでは、理解が広がらず、社会を変えられないのです。(感覚的な共感の内輪うけで終わりです。)
きちんとした説明をできない自分を棚に上げて、「なんで(感覚的に、当たり前のこととして)わからないの?」と言うのは、どこかで相手をバカにしていませんか? 大丈夫でしょうか。

たいてい、誰もが感覚的にはぼんやりとわかっているんです。
しかし、丁寧な確認がされないと、理解してさらに他の人に説明することができないんです。
丁寧な確認ができれば、理解してさらに他の人に説明することができて、みんなで社会を変えられるんです。

さらに、毎日新聞が報道した、立憲民主党の性犯罪刑法改正ワーキングチーム座長の寺田学衆院議員の見解を紹介した記事も、焦点が明確で、良い記事・論調です。

引用しますと、

「そもそも、成人と中学生という非対等な関係の中で、
未成熟な中学生に性行為に関する真の同意が行えると考えるのは、
成人側の勝手な思い込みと考えます。」

これが問題の温床である、と明確にしていることが、大変重要と思います。
これを基点とすれば、補強する理由も理解しやすくなりますし、
問題の解決に必要な対策の打ち手を策定する際の根拠としても明確であり、使えます。
根拠を強化するために周辺環境を学び調べる上でも、明確な軸は役立ちます。
(先ほどの1つめの記事の内容とあわせて、)
これが被害・問題の元凶で、この元凶を潰さなければいけない、この元凶をつぶせばかなりの被害を減らせる、という点でも、軸は重要です。

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※なお、朝日新聞も本件について記事化していますが、識者の選定によるものなのか、記事化する記者・会社側の資質によるものなのかわかりませんが、
感覚に訴える表現が多く、本質的な理由の「焦点」が集中されておらず、理解がしにくいものと感じました。

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コロナ、オリンピック、原発、政策、戦争、といった、ともすると議論が二極化・多極化・分断しやすいものも、丁寧に理由を探っていくことで、
(むしろ、相手方の主張の根拠にも、ある側面では正当性や事情があるのではないかというところまで多面的に推量・想像力を働かせることで、)
解決まではいかなくとも、論点が整理され、
場合によってはそれぞれの立場を理解しあい、共存しながら、より良い道を一緒に真摯に探し求めて育める、といったこともありうるのではないでしょうか。

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※私としても今後も自らさらに学び、当記事をはじめとしてさらに磨いていきたいと思います。

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