見出し画像

「映画の自主上映会」で出ていくお金と入ってくるお金ー収支について

「自主上映会の活動をしている」というと、営利のお仕事だと勘違いされることもあるのですが、少なくとも「はしのまち映画会」は非営利の地域活動です。興味のある方のために、初年度(2022年10月~)の収支を紹介したいと思います。


以下、それぞれをご説明します。

支出

映画を配給会社から借りる費用

配給会社や映画のタイトル、そしてお客さんの数によって異なりますが、1本1万円くらいの映画もあれば、数万円の映画もあり、人気の映画は100万円を超えることもあるそうです。(手が出ませんが‥)

自主上映会向けに貸し出しをしている映画の多くは、50人まで3万円~5万円、それ以上のお客さんがいたら一人あたり課金(+@500円など)、などの形が多いです。

たくさん集客できる人気作品は貸出料金が高いので、大きな会場を借りないと黒字になりづらくなります。そして大きな会場を借りると、集客・宣伝がかなり大変になります。いわばハイリスク・ハイリターンです。

逆に貸出料金がそこまで高くない映画はどうかというと、映画の特定のテーマに関心がある、比較的少数の人向けことも多く、小さな会場であっても集客に苦戦することもあり、難しいところです。なので小さな上映会をする場合は、「自分や仲間が見たい映画」にしておくと、たとえ集客に失敗しても納得度は高いです。

なお、教育的な目的や、ある問題を世に広く知ってもらいたいような映画の場合は、使用料が安価・無料だったり、一人あたり500円、など主催者が損しない形で貸し出しを行ってくれることもあります。

年間サブスク契約も

たくさんある映画ラインナップのうち、1年間24回・累計参加者人数200人まで定額で自主上映会に使用してOK(ただし会場は限定)という年間契約サービスもあります。

それは、ユナイテッドピープルの「cinemo」というサービスです。社会派なものや、社会を見る視点が変わりそうな映画ラインナップが多く、「はしのまち映画会」では上映会場の「つくるがっこう イホルラ舎」での上映会はcinemoの年間ライセンスを利用して上映しています。

【1ヶ所プラン】
事前登録した1ヶ所での上映が可能。
年間ライセンス料:132,000円(税込)
※前払い。上映素材(DVD/ブルーレイ)の発送費込み。

上限人数:累計参加者人数200人までの上映料が含まれます。
※超過1人当たり550円(税込)の追加料金が発生します。

回数制限*:24回まで (1日何回上映しても1回とカウント)
※1回11,000円(税込)*20人まで の追加料金で増やすことが出来ます。
20人まで。超えると一人550円(税込)の追加料金が発生。

cinemo


宣伝費用(チラシ印刷代、紙代など)

地域の人たちに上映会を知ってもらう方法はいくつかありますが、アナログな方法としては、チラシやポスターになります。

配給会社が、デザインされたチラシを用意してくれている場合
映画告知のデザインが刷り上がっているチラシを配給会社から購入して、裏面の余白に日時や会場を追い刷りするパターンと、配給会社はチラシデータのみ用意してくれて、編集・印刷を自分たちでするパターンとあります。
データは、Adobe illustratorの形式、MicrosoftWord形式などがあり、映画や配給会社によって異なります。

配給会社でチラシの用意がない場合
映画によっては、すべてイチから自分たちでデザイン・印刷しなければならないパターンもあります。

追い刷りをするにしても、印刷を外注するにしても、自分のプリンタで印刷するにしても、いずれにしても印刷費用がかかります。

印刷を外注する場合は、せっかくなので地域の印刷屋さんに発注できるとよいのですが、数百部程度の印刷だと割高になるかもしれません。

「はしのまち映画会」では、チラシに追い刷りするときは「市民活動サポートセンター」の輪転機を利用、追い刷りではなくチラシ片面または両面印刷する場合はグラフィックという印刷サービスを使っています。

上映会会場を借りる費用

ホールや公民館、カフェ、フリースペースなどを上映会場として借りる費用です。
ホールはたくさんのお客さんを収容できますが、そのぶん使用料金が高くなりますし、宣伝や当日の運営など、複数の人手が必要になると思います。
一緒に運営してくれる仲間がどのくらいいるかによって選ぶとよいと思います。

「はしのまち映画会」の場合は、農家さんのおうち、レンタルギャラリー、フリースクール、パン屋さんの蔵など、民間のスペースを個人的にお借りしています。
使用料は無料でOKという方もいらっしゃれば、運営維持のために1回あたり数千円いただきます、という方もいます。

民間の会場は公的な施設と比べると割安で、物販や飲食もOKなど融通が利きやすいのがメリットですが、定員があり一度にたくさんの人に来ていただきにくい=上映費用を賄えない というリスクがあること、また駐車場のスペースが確保しづらいケースが多いです。

「はしのまち映画会」は「交流」が目的なので、大きな公共スペースを借りるのではなく、小さくてもあたたかみのある市民の場所がよいということで、定員が20~30人くらいのスペースをお借りしています。

映画素材を配給会社に返却する際の送料

地味ですが、配給会社にDVD素材をお借りして上映会をしたあと、返却する送料が毎回かかります。(レターパックなど追跡可能な方法で返却しています)毎回500円前後かかることになります。
(オンライン上映の場合は不要です)

配給会社への支払い手数料

これも地味ですが、上映後(前のこともあります)配給会社にお支払いをする際に、銀行の支払い手数料がかかることがあります。
数百円ではありますが、計算に入れておきましょう。

映画を再生・映す機械(DVDプレイヤーやプロジェクターなど)

ホールや公民館などを利用する場合は、映画を再生する機材のレンタルができることもありますが、上映会を想定していない民間のスペースでは、映画を再生・映す機械などを原則主催者が用意する必要があります。(配給会社ではふつう、貸出はしていません)

「はしのまち映画会」は当初、DVD再生可なパソコンとミニプロジェクターで実施しようと考えていたのですが、

  • パソコンだと映画の再生中にポップアップ通知が出てきたりすることがある

  • 上映中、パソコンの画面側の光が気になることがある

  • 接続のためのケーブルなど持ち物が増える

ということから、「DVD・プロジェクター一体型」の機材を使っています。
画質を考えると、DVD専用プレイヤーと高級なプロジェクター、そして音質を考えるとがスピーカーを導入したいところですが、費用の関係でいまは断念しています。

▼「はしのまち映画会」で使っているDVDプレイヤー&プロジェクター。

スクリーン

ホールや公民館などを利用する場合は、スクリーンも貸してもらえることがありますが、上映会を想定していない民間のスペースでは原則主催者が手配する必要があります。(これも配給会社では貸出はしていません)

「はしのまち映画会」は、当初「市民活動サポートセンター」に借りていたのですが、1回1,000円ほどかかるので、途中から持ち運びしやすい大きめの中古のスクリーンをジモティー経由で入手しました。
1回のみの上映会、などであればレンタルのほうがお得かもしれませんので、地域の市民活動を支援する団体があれば問い合わせてもいいかもしれません。

▼「はしのまち映画会」で使っているスクリーン

上から吊るすタイプです。鴨居や天井から吊るせるようにしておくと、自立型より設営の時間を短縮できます。

▼天井からスクリーンを吊るす会場では、天井に2か所、フック付きワイヤーを固定して垂らしています。(下記を買いました)


暗幕などの備品(会場にない場合は手配が必要)

ホールや視聴覚室などを利用する場合は、遮光カーテンや暗幕の用意もある場合がありますが、上映会を想定していない場所で昼間に上映するのであれば、暗幕も主催者で手配する必要があります。(これも配給会社では貸出はしていません)

「はしのまち映画会」の場合は、古民家での上映会が多いため、雨戸を閉めて上映したり、光が入る窓や障子には暗幕をつるしたりしています。
(本当は遮光カーテンがよいのでしょうが、これも費用の関係で断念しています。)

また、小さいお子さんやトイレの近い方などが、上映途中で出入りすることが予想される場合は、出入り口にも暗幕をつるしておくと、出入り口周辺のお客さんに親切かと思います。

▼「はしのまち映画会」で使っている暗幕(スクリーン後ろの障子の部分にこれを2枚吊るして使っています)

最初のほうは鴨居に養生テープを貼って暗幕を吊るしていたのですが、毎回のことで養生テープを消費していくのはもったいない・エコではない・時間がかかるため、暗幕にハトメをつけ、ハトメの間隔にあわせて鴨居に釘を打っていただき、吊るすようにしています。(古民家・民間ならではの対応をいただいています…感謝)
ハトメや釘はご寄付いただきましたが、ない場合はこれらの購入費用が別途かかります。

イベント保険料

会場となる場所が保険に入っていない場合は、イベント保険加入を検討するとよいでしょう。
保険に入るかはいらないかは任意ではありますが、入っておくと何かあった時に安心です。
非営利活動として自主上映する場合は、最寄りの社会福祉協議会でボランティアイベント保険に加入することができます。

ちなみに、郵便局で振り込んだ後その用紙を持って社会福祉協議会で申し込む必要があるので、日にちに余裕を持って申し込むとよいと思います。(インターネット等では申し込みができません)

チケット販売サイトへの手数料

チケットを事前決済しておくと、当日の受付と、キャンセル時の返却がスムーズになるので、運営の人手が足りない時は検討するとよいと思います。

チケットの決済ツールにはいろいろなものがありますが、「はしのまち映画会」では告知サイトがつくりやすい、参加者への連絡がしやすい、キャンセル対応がしやすいなどの理由でPeatixというチケット販売サイトで前売券を販売しています。
販売実績の4.9%+売れたチケット1枚につき99円がかかります。
販売代金の振り込み時の振込手数料(210円)は主催者負担ですが、初期費用、月額費用は発生しません。

その他、同様のツールにはPassMarketなどもあるので、使いやすいものを選ぶとよいと思います。

※「自主上映会のチケットの販売方法」という記事でさらに詳しく説明します。

交通費

運営スタッフの自宅から会場まで離れている場合は、交通費がかかることもあります。はしのまち映画会では計上していませんが、持続可能な活動にする場合は、電車代やバス代、ガソリン代など計上しておくとよいと思います。

収入

次に収入についてです。

参加者からいただく料金(前売券・当日券)

前売券、当日券など、映画に参加いただく方から参加料金を徴収しています。

※「かかる費用」÷「参加見込み人数」にして赤字にならないような価格の設定方法もあるかもしれませんが、私たちの上映会は、通常の映画館より明らかにクオリティが劣るため、そんなに高い値段をつけるのは忍びなく、「映画館に行くよりは、(交通費を考えると)お得」と思える値付けとして前売1200円、当日1500円をベースに設定しています。(2023年9月現在)

また、若い世代にも映画に親しんでもらいたい・知ってもらいたいという気持ちから、高校生以下は無料としています。

1本の上映に4万円くらいのコストがかかるとすると、前売1200円だと、33人が前売券を購入してくれたらペイする計算ですが、実際には会場キャパが20人そこそこ、そこに高校生以下も来場するので、1日1回上映なら赤字確定です…。
長く続けるために、会場を貸してくださる方のご都合と体力・気力とお財布と相談しながら、1日の上映回数を設定しています。

物販

参加者から頂く料金だけではコストを回収できないので、「はしのまち映画会」では下記のような物販も行っています。

―映画のパンフレット
売上が見込めそうで、かつ余ったら返却OKのパンフレットを配給会社が用意している場合は、あらかじめ仕入れておき、上映会場で映画パンフレットの販売をしています。

人気のドキュメンタリー映画「人生フルーツ」の場合は、20人ほどが入れる会場で1日2回上映し、40人以上の参加があったのですが、用意していた10冊があっという間に売れていき、もっと仕入れておいたらよかった…と後悔しました。(さらに何カ月もたってから「在庫はないですか」とお問い合わせもいただきました)

逆に、「これはみんな買うだろう」と思っていたパンフレットがそこまで売れないことも。

余った分を返却できないシステムの場合は赤字リスクを避けるため、「はしのまち映画会」では仕入れをしていません。

―『ビッグイシュー日本版』
都会の人の多い駅前などで販売されている雑誌『ビッグイシュー日本版』をご存じでしょうか。
本来はホームレスの人が路上で販売するために作られているのですが、20冊以上であればイベント販売用の卸価格として定価1冊450円の雑誌を360円で仕入れることができます。
さまざまな特集が組まれているので、映画のテーマにあった特集を意識して仕入れています。
そこまで毎回たくさん売れるものではありませんが、珍しがってまとめて買ってくださる方もたまにいるので、侮れません。

―お菓子や飲み物、雑貨
食がテーマの映画の場合、それにちなんだ食べ物を販売することもあります。
(たとえばフェアトレードチョコがテーマの映画の場合は、フェアトレードチョコを使ったクッキーなど)
地域で食べ物や飲み物、雑貨などをつくっている方の商品を委託いただいて販売し、代理で販売するための手数料を売り上げの1割ほどいただくケースもあります。
食べ物・飲み物は雑貨より売れ行きが良いですが、たくさんお客さんが見込めるわけではないので、売上よりもこういう地域の取り組みを面白がってくださる方と組めるとよいと思います。

―お弁当
午前中の上映の場合、映画の後のアフタートークの時にみんなで食べるお弁当を地域のお弁当屋さんにお願いすることがあります。
余りが出ないよう、前売券や予約申し込みの時に希望を聞いておくとスムーズです。
(Peatixなどの決済ツールでお弁当の決済まで済ませるときは、手数料を支払っても損がない値段をつけておく必要があります。)

※環境問題がテーマの映画でプラごみを出してしまっては意味がないので、そういうテーマの映画の場合は食器持ち寄りにしたり、プラスチック容器を使わないお弁当屋さんにお願いするなどの配慮が必要です。

寄付・カンパ

寄付ボックスを置いておくと、たまにですがお釣りなどをご寄付いただける場合もあります。(ありがたいことです…)

助成金

地域活動に助成金が出ることもあります。お住まいの市町村や都道府県に市民活動をサポートする組織がたいていあるので、そういった組織が案内している「助成金情報」をチェックするとよいでしょう。

はしのまち映画会では、2022年度にわかやまNPOセンターが事務局を務めている「花王ハートポケット」という助成金をいただくことができました。

**

いずれにしても、小規模にやっている限りは儲かることはありませんが、私たちの場合は地域の人たちがつながりあい、楽しんでくれることを目的にやっています。
特に、まちづくりをしていたり、何か志を持って活動されている人たちと繋がれるのはとてもうれしいことです。

はしのまち映画会
https://hashinomachi-movie.jimdosite.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?