見出し画像

人の輝きが失われてしまう瞬間

村上春樹さんの小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」で印象に残る文があった。今朝その文を確認しようと家の本棚を探したが見つからなかった。

ウィキペディアのあらすじを簡単にまとめると、多崎つくるは高校時代、名前に「色」の漢字が入った4人の友人(アカ、アオ、クロ、シロ)といつも行動を共にしていた。友人4人はいずれも地元の大学に進んだが、多崎は東京の工科大学に進んだ。大学二年生の頃多崎つくるはいきなり友人のグループから追放されてしまう…

私が印象に残ったのは、シロと呼ばれていた美しい少女が高校時代は眩しいほど輝いていたが、高校卒業後多崎つくるがシロに会った時、シロの輝きは失われていた。という部分だった。

その文を読んだ時、映画評論家の淀川長治さんが「オードリー・ヘプバーンはマイフェアレディという映画に出演後、輝きを失ってしまった。」と話していたのを思い出した。

「マイ・フェア・レディ」と「メリー・ポピンズ」は第37回アカデミー賞授賞式で激突した。『マイ・フェア・レディ』はアカデミー賞に12部門でノミネートされ、そのうち8部門を受賞するという高い成績を残したが、オードリー・ヘプバーンは主演女優賞にノミネートすらされなかった。実はブロードウェイでの初演からマイ・フェア・レディのイライザを演じていたのはメリー・ポピンズの主演女優ジュリー・アンドリュースだった。サウンド・オブ・ミュージックの美しい歌声で有名なジュリー・アンドリュースはもちろん自分の歌声。オードリー・ヘプバーンの歌声は全て吹替だった。そして主演女優賞を獲得したのはメリー・ポピンズのジュリー・アンドリュースだった。

淀川長治さんはマイ・フェア・レディの出演で受けた心の傷が原因でオードリー・ヘプバーンの輝きが失われてしまったと言っていた。

真実かどうかは分からないが、大きな心の傷は人の輝きを奪うことがあるのだろう。気をつけましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?