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こんなときどうする?「家族に給与を支払いたいとき」

「家族は仕事を手伝ってくれているし、給与として報酬を支払おう。その方が節税できるしね。」
(後日、税務署から電話が・・)
「家族への報酬は認められませんよ。修正申告してください」

実は自分で確定申告している方で、こういった指摘を受けて相談に来られる方は多いです。いったい何が問題だったのでしょうか。
シリーズ「犬も歩けば税に当たるー経営者なら一度は悩むことー」では、日常で疑問に感じつつスルーしがちな税のアレコレを解説します。


家族向けの支出は経費として認められない

家族向けの支出は、原則として経費にできません。例えば食費、一緒に行ったレジャー代が挙げられます。他にも、別居している家族への生活支援なども対象外です。
理由は、確定申告において「配偶者控除」や「扶養者控除」という形でもともと一定金額を支出として自動的に計上する仕組みが整えられているからです。更に計上すると税制の仕組み上、二重計上になるのです。
ここでいう家族とは、生計を共有する人たちのことです。一つ屋根の下に一緒に住んでいなくても、生活費を仕送りしていたり、経済的なつながりのある家族も含まれます。

父親がアイスクリーム代で税務署に叱られたハナシ

ここで私の身近な事例を1つ。
私の両親は新潟で農家をやっているのですが、税務調査が入ったことがありました。長い間ずさんな管理をしていたので、いろいろな指摘を受けたらしく、後になって私が税務署調査のことを知り、後処理を手伝いました。(その後、私が両親の担当税理士としてキッチリ管理しています)

少し笑ってしまったのは、父親のボヤキです。
「家族で食べたアイスクリームの代金すら認められなかった。」
「家族と言っても従業員だ。農家は夏は暑いし、アイスクリームは、身体を冷やすために従業員にポカリスエットを飲ませるようなものなのに」
と言うのです。

税理士の私からすると
「父さん、そりゃ無理があるよ。だって家族なんだもの。」
と思うのですが、家族向けの支出が経費にできないことが、一般的にしっかり理解されていないんだと感じたのです。

ちゃんと手続きすれば、給与は経費にできる

家族への報酬は原則として認められていませんが、あくまで「原則」であり、所定の手続きを踏めば経費にできます。白色申告と青色申告によっても扱いが違うので、詳しく解説します。

事業専従者とは

事業専従者とは、納税者と生計をともにする配偶者や15歳以上(12月31日時点)の親族のことです。少なくとも6カ月以上は従事している人が対象になります。

青色申告の場合の手続き

青色申告では、専従者への給与を「青色事業専従者給与」と呼びます。専従者の情報と支払限度額を、事前に税務署に届け出ます。そうすれば、限度額の範囲内で給与として経費計上できるのです。
とはいえ、支払限度額が青天井なわけではありません。一般的な金額に比べて高すぎると認められないこともありますので、常識の範囲内で設定しましょう。

白色申告の場合の手続き

白色申告では、専従者への給与は経費にできません。その代わりに「事業専従者控除」という制度が設けられています。次のうち、金額が低い方を控除額として適用することができます。

  • 配偶者の場合は上限86万円。その他の親族は1人あたり上限50万円

  • 控除をする前の事業所得等の金額を『専従者の数+1』で割った金額

青色申告と比べるとかなり制限があることが分かると思います。そういう意味でも、青色申告は優遇されていることが分かりますね。

注意!扶養者控除や配偶者控除は併用できない

注意が必要なのは、専従者給与や専従者控除を使うと、扶養者控除や配偶者控除は受けられないと言う点です。どういう理屈かというと、冒頭で紹介した通り、専従者給与や専従者控除は、配偶者控除や扶養者控除と重なるため、二重計上になってしまいます。なので、この制度を使う場合は扶養者控除や配偶者控除が適用できなくなるのです。
もし確定申告で、両方をやってしまっている方は修正申告が必要になりますので注意してください。また白色申告の方に多いですが、専従者控除の金額が、配偶者控除や扶養者控除の金額より小さくなっている時があります。そうなると損なので、ちゃんと比較したうえで選びましょうね。

まとめ

様々な観点で説明してきましたが、ここまでの話をまとめます。

  • 原則、家族への支出は経費にならない。ただし専従者として手続きをすれば認められる。

  • 青色申告の場合は、事前の専従者登録が必要で、限度額内に収める。

  • 白色申告の場合は、明確に定められた計算方法に従う。

  • 配偶者控除と扶養控除は受けられなくなるので注意。

専従者の制度は誰でも無制限に利用できるかというと、そうでもありません。税務調査が入ったときに利用実態を合理的に説明できる必要があります。
自分の場合どんな方法を選ぶべきなのか、ちゃんと説明できそうか、不安な方はお近くの税理士さんに相談してみてください。

橋本美菜税理士事務所は、
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