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イノベーションについて思うこと

イノベーションの現在地


近年、イノベーション・マネジメントが注目されている。

扱う対象は、課題の発見から価値提供までの一連の流れであり、技術経営においては、研究開発マネジメントの領域に含まれるものと捉えている。

イノベーションの分類方法にはいくつかの種類や宗派的なものが存在するが、個人的には以下を好んで使用している。

  • 漸進的イノベーション:既存技術の延長上にある価値創造。

  • 破壊的イノベーション:全く新しい方法による非連続的な技術革新。

特に、前者のようなイノベーションは既存企業が持続的に発展するための機能として必要とされており、2019年には、ISO56002 Innovation management systemとして国際規格化されている。

なお、ISO56002については以下、「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」が詳しい。


私としては、破壊的イノベーションのマネジメント方法を確立することにより、技術レベルの飛躍的な進歩に貢献したいと考えているが、現実には漸進的イノベーションの再現性すら覚束なく、どうやら実現は数十年以上先になりそうだ。

イノベーションの課題

ところで、日本企業にイノベーションが必要とされているのはなぜだろうか?

私は、相対的に見て日本企業が価値を生み出せなくなっているということだと考えている。

言葉の壁

根本的な課題は、技術者であってもそうでなくても、日本語しか扱えない人が多いことではないだろうか。より悪いことに、それで現状困っていないから問題無い、という風潮すらある。

日本語話者の人数は、英語、中国語のそれぞれ1割に満たない。市場が大きければ、規模の経済が働く。事業で利益が出なければ、投資も少なくなり、イノベーションの点で不利となる。

ローカライズの難しさ

一方で、日本語化や日本文化への対応の難易度が高く、非日本語圏の先端技術が日本に流入しづらいことにより、日本国内の技術力向上が阻害されていると思われる。

これは外資企業の参入障壁としても機能し、海外市場の影響を受けにくくなるため、相対的に競争力が低下するとまでは言えないが、競争が少ないということは、イノベーションの点では不利である。

組織文化

また、日本企業は年功序列を重視する特殊な環境であり、変化に対する現状維持の圧力が大きい。

本来は技術革新をリードすべき経験豊富な権力者によって、リスクを取る、新技術を採用するといった取り組みが阻害されているのが現状である。

私の経験上、特に大企業の子会社では、役員人事を業績+株主(親会社)の意向で決定するケースが多く、問題を起こしたくないという意識から現状維持を重視する傾向が強いと感じる。

個別最適のシステム

非効率な業務システムも、価値創造を阻害する課題である。

数多ある企業がそれぞれ独自の仕組みで組織運営を行っている。

現代においては殆どの場合、ベストプラクティスが結集されたパッケージやSaaSを利用することが最適解だが、システムを変えることで仕事が無くなる人が出てくるとか、ウチは特殊だから簡単には適用できないとか、何かしら理由を付けて現状維持とすることが常である。

独自の仕組みを採用することで、システムの更新や企業の統合にも多くの技術的リソースが消費され、イノベーションにとって不利となる。

課題解決への取り組み

これらイノベーションの課題は社会的な課題であるため、社会全体で取り組む必要があると考えている。

例えば大企業においては、

  • 安定したエコシステムを、グループ会社を超えたサプライチェーン全体に適用する

  • システムや人材等、大企業の強みであるリソース面も含めてベンチャーを支援する

といった取り組みを加速させ、その延長として、業界再編による知的資産の結集、組み合わせによるイノベーションの創出、企業価値の増大へと繋げたい。

また、イノベーションの源泉となる技術者は質・量とも不足しているため、技術者への転換、及び技術者を目指す若年層のための基礎的な人材育成を、社会基盤として構築、強化したい。

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