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割とわかる行政法 4〜行政指導と届出〜

行政書士の勉強をする上で避けて通れない行政法。
イメージのしにくさから苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。ですが、一度わかってしまえば得点源にしやすい分野です。
 自分の勉強がてら要点をまとめたので、行政書士の勉強中の方、さらっと行政法がどんなものか知りたい方のお役に立てるかなと思います!

 今回は、第4弾「行政指導と届出」について学んでいきます。
この辺りはぶっちゃけ簡単なので要点を押さえてサクッと終わらせちゃいましょう!特に行政指導は簡単な割に頻出なので美味しい部分ですよ。

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↓前回はこちら↓





行政指導について

 行政指導は行政手続法第4章で規定されています。
条文を読む前に誤解を恐れずにざっくり言ってしまうと、
行政指導とは『行政から国民への助言』というイメージです。
というかそれだけです。ただ、行政は権力を持ってるので、注意点が何点かありますよ、という話です。

行政指導、その意義は

 では、イメージを掴んだところでまずは行政指導の定義と一般原則をそれぞれ見ていきましょう。

 まずは、定義です。

行政指導  行政機関がその任務又は所掌するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

行政手続法 第1章 総則 第2条6項(定義)

 はい、作為、不作為なんてちょっと難しくて嫌な感じがしますが、
平たくいうと「やっていい事、やって欲しくない事を職権の範囲で指導したり、勧告、助言をする行為が行政指導だよ」ということです。
処分には当たらないので、公権力の行使には当たらないわけで、あくまでも国民の協力によって理想(=行政指導の内容)を実現しましょう、という事です。

 ちょっとした注意点で、かつ試験でもよく問われるのが『特定の者』です。よく『特定の者、又は不特定の者』で正誤を問われることが多いのですが間違いですので、読み飛ばさないようにしましょう。

 では、次に行政指導の一般原則を見てみましょう。

 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまで相手方の任意の協力によってのみ実現されるのものであることに留意しなければならない。

行政手続法 第4章 総則 第32条1項(行政指導の一般原則)

 一般原則でも念を押すかのように「行政指導の内容があくまで相手方の任意の協力によってのみ実現されるのものであること」であることが明記されていますね。
 それに加えて、あくまで行政指導は「所掌事務の範囲内」ですることも求められています。ここも押さえておきましょう。

 また、2項では、このように記述されています。

2  行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならない。

行政手続法 第4章 総則 第32条2項(行政指導の一般原則)

 はい、行政指導は非権力的な行為ですので、従わなくても罰を与えたりすることが禁止されています。

行政指導の性質

 以上のことから、行政指導には3つの性質が認められます。

  1. 組織的限界「当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならない」

  2. 行政指導の任意性「行政指導の内容は相手方の協力によってのみ実現されるものである」

  3. 不利益取扱いの禁止「行政指導に従わないことを理由に不利益な取り扱いをしてはならない」

 です、とにかく「非権力的な行為なので穏便に、罰とかもダメなんだ」っていう感じです。
 

行政指導の方法

 定義や性質がわかったところで、次は行政指導のやり方についてみていきましょう。

  行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
(一部省略)
3  行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前2項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
4  前項の規定は、次に掲げる行政指導については指導しない。
  一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
  二 すでに文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの。  

行政手続法 第4章 行政指導 第35条(行政指導の方式)

 一部省略して記載してみました。それでも長いですね。
要点だけ掴みましょう。
 まず、行政指導をする際には、行政指導の趣旨及び内容、それから責任者を明確にしなければならないです。責任者ってところが忘れやすいので注意です。

 次に、行政指導が口頭でされた場合、求めがあれば書面で交付しなければなりません。ただしこれには例外があって、その場で完了する行為であったり、すでに文書で同様の内容を通知している場合は、交付の必要はないです。
太字部分が重要な点です。これだけ覚えましょう。他の細々した部分は演習でぶつかった際に六法開くくらいで大丈夫です。



一度に沢山指導しちゃおう、行政指導指針!

 では、基本の行政指導が理解できたと思うので次は行政指導指針ですね。

  同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数のものに対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。

行政手続法 第4章 行政指導 第36条(複数の者を対象とする行政指導)

 行政指導指針とは、複数の者が対象になる行政指導において、あらかじめ定められるものです。そして、基本的に公表されるものであることを留意しておきましょう。 

届出とは

  なんと、届出についての条例は立ったの2つだけ!!
いっぺんに見ておきましょう。

届出  行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。

行政手続法 第1章 総則 第2条7項(定義)

 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達した時に、当該届出をすべき手続き上の義務が履行されたものとする。

行政手続法 第5章 届出 第37条(届出)

 これだけですし、この中で重要な点も2つだけ!

  1. 届出と申請の違い

  2. 届出は事務所に到達した時点で義務の履行が済む(書類等に不備がなければ)

1は届出と申請の定義をしっかり理解して両者を区別できるようにする必要があります。
2はこのまま覚えてください。それで問題は解けます。

届出と申請の違いが重要

 最後に届出と申請の定義を再確認し、両者の相違点を見ておきましょう。

申請  法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対しなんらかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

届出  行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためのものを含む。)をいう

行政手続法 第1章 総則 第2条3項、7項(定義)

太字部分が重要です。申請と届出の大きな違いは「行政庁の許諾が必要かどうか」です。
条文だけ読むと、そんなに似てるかな?と思いがちですが、よく問われますし、実際問題文読むと混乱するので、しっかり区別がつくようにしておきましょう。
 届出で行政庁の諾否の応答をすべきもの、みたいな一文があれば、間違いなんだ!とわかるようにしましょうね。


 はい、今回はここまでです。
前回の不利益処分よりは随分と楽だったんじゃないかなと思います。
この行政法シリーズは、定期的に加筆修正して読みやすさをブラッシュアップしていますので、何回も読んで知識を確実なものにしてくださいね!
質問も随時受け付けておりますので、ご気軽にどうぞ。

次回は、命令等を定める手続についての予定です。
次回で行政手続法が、やっと終わりますので楽しみにしててくださいね。

後で追記する:行政指導の中止等の求めについて

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