見出し画像

ベストエンディング

何年か越しのライブハウスで、
私は完全に私だった。
その空間の中で私はあきらかに私だった。
これまではたくさんの人の中の自分を
無理矢理認識していたんだな。と思った。
何年か越しだからこそ、
より顕著にそれが理解できたように思う。

俯瞰の感覚はいつにも増して、
私をまるっと飲み込み、
私ごと空間を捉えていた。



しばらく、まぁ5年以上会っていない友人が
薄暗いライブハウスで外見でなくオーラか何かで
私を判別してくれるあたりも懐かしく思った。
特別な言葉を交わしたわけではないけれど
それだけで十分だった。

あの頃には視えてなかったものが
次々と目に映り、
大人になるのも悪くないな。と思う。




数年前に覚えた振り付けは
ちゃっかりと身体に染み込んでいて
なんの違和感もなく
音楽に合わせて勝手に動き出した。
少しだけ、当時の感情も
思い出せたような気がする。



+++

俯瞰した私は
これからの私がすべきことを
認識させてくれるだけでなく
ここで、
ここまでの幕がおりることも教えてくれた。

ここに来なければならなかった理由はこれか。

そう感じた瞬間に、
私はもう、次のページに進んでいるんだと思った。

私は一切の後ろ髪をひかれることなく
ライブハウスを出て
青いネオンの街を駅に向かって歩いた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?