選んだ道が「正解」だから
会社員生活28年が、不満だったわけじゃない。
それでも、中学生のころから「伝える仕事」に憧れて、その最前線にいられた10年と、子どもを産んでからの18年はやっぱり違った。
持ち前の好奇心と、自分に負けず嫌いな性格で、目の前の課題に向き合い、何とかしようとしてきた18年だって、確かに学びも成長もあった。
だけど、50歳を前に、人生の後半戦を見通したら自分の好きな「ことば」に関わる仕事をあきらめきれなかったのだと思う。
器用だったり、柔軟性が高かったり、責任感が強かったりすればする程、決断は難しいかもしれないけれど、私の場合は、女性がまだまだ活躍しづらい状況や、自身が転勤のない職種を選んでいたことなど、そもそも男性と同じレースに参加できなかったことが逆に、新たな仕事への後押しとなったのかなぁとも、振り返れば感じている。
今日は、ふとしたご縁から人生の先輩方に誘っていただき、大阪・岸和田のパンメーカーを訪ねて、社長と工場長にたっぷりお話を伺う機会をもてた。
パンの香ばしい香りに包まれながら、情熱をもって、ひとつひとつパンを生み出すこだわりを聴けることは、とても楽しい。若かりし頃、仕事でインタビューしていた頃は、こんな風に「ことば」を味わえなかった。若かったということもあるだろうが、自分に受け止める度量も余裕もなかった。
仕事でもなく、かといって遊びでもなく、平日、岸和田のホテルでPCに向かって、今日、心を磨いてくれた「ことば」を味わえる時間を持てるなんて、会社を卒業した時には思いもしなかった。
人生は不思議だなぁ。
「こんなに幸せでいいんでしょうか?」と師匠に尋ねたら「いいの、いいの」と返ってきた上に「もっと運がよくなっちゃって」とも。
選んだ道を、歩いている道を、正解にしていけばいいのかな。
こうして「ことば」にして、いちいち確かめないと、先に進めない小心者気質もまた、私らしい。