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シリーズ:政府統計を触る ①国勢調査

はじめに

薫です。
noteのアカウントを作成してから3年以上経過していたようです。
書きたいことが色々とある中、多忙でなかなか時間が取れなかったのですが、最近は少し余裕が出てくるようになったので、これから少しずつ動き出していきたいと思っています。
今回は、国勢調査について統計の概要や具体的な分析等を紹介します。「政府統計に触る」はシリーズ化して、今後も様々な政府統計を紹介していく予定です。
個人的な頭の整理が主な目的ですが、通りがかりのどなたかに役に立てると嬉しいです。

1.国勢調査とは

国勢調査は、国内の人及び世帯の実態を把握し、各種行政施策その他の基礎資料を得ることを目的としており、政府統計の中では唯一の全数調査です。読者の皆さまの中にも、国勢調査に回答した記憶がある方もいらっしゃるかもしれません。
調査は5年に1回実施されており、第1回調査は大正9年(1920年)、最近では令和2年(2020年)に第21回調査が実施されています。
調査事項は以下のとおりです。

①氏名
②男女の別
③出生の年月
④世帯主との続き柄
⑤配偶の関係
⑥国籍
⑦現在の住居における居住期間
⑧5年前の住居の所在地
⑨在学、卒業等教育の状況
⑩就業状態
⑪所属の事業所の名称及び事業の種類
⑫仕事の種類
⑬従業上の地位
⑭従業地又は通学地
⑮従業地又は通学地までの利用交通手段

国勢調査によって、国内の人口や世帯等の実態を把握することができ、行政機関においては、各種政策を実施するための基礎資料となります。
また、行政以外の民間企業や研究機関であっても、国勢調査の結果を用いることで様々な分析が可能です。今回は、国勢調査の結果を使ってできる分析の例をご紹介したいと思います。
なお、国勢調査を含めた政府統計のデータはe-Statより取得できます。e-Statではエクセル形式(.xlsx)のほか、APIでのデータ取得も可能ですので、是非使ってみてください。

2.国勢調査を使った分析の例

2.1.各地方の人口の推移

e-Statでは、大正9年から令和2年までの時系列で、全国や都道府県、市区町村ごとの人口のデータが提供されています。このデータを地方ごとに集計することで、各地方の人口の推移を整理することができます。
結果は以下のとおりです。

図1 各地方の人口の推移

結果を見ると、関東地方の人口の伸びが顕著です。一方、それ以外の地方については、2000年あたりから減少傾向にあることが分かります。
首都圏の一極集中や(特に地方部における)人口減少といった社会課題が世間ではよく言及されるところではありますが、それはこのようなデータが裏付けしていると言えます。

2.2.転入超過率の比較

e-Statでは、全国や都道府県、市区町村ごとに人口移動に関するデータが提供されています。例えば、ある自治体において、5年前からその自治体に住んでいる人の人数や、5年のうちに他の自治体から移動してきた人数、他の自治体に移動した人数、またその移動元や移動先の内訳等のデータです。このデータを活用して、各自治体における転入超過率※を算出し、自治体ごとに比較することができます。
※ 転入超過率は (転入数 - 転出数) /  自治体の人口 として算出 
結果は以下のとおりです。

1位 浪江町(福島県) 72.91%
2位 楢葉町(福島県) 41.59%
3位 青ヶ島村(東京都) 21.30%
4位 与那国町(沖縄県) 18.91%
5位 早川町(山梨県) 16.85%
6位 小笠原村(東京都) 16.80%
7位 十島村(鹿児島県) 16.62%
8位 広野町(福島県) 16.46%
9位 三島村(鹿児島県) 14.81%
10位 川上村(奈良県) 14.55%
(略)
1950位 古平町(北海道) -6.30%
1951位 七宗町(岐阜県) -6.35%
1952位 上砂川町(北海道) -6.51%
1953位 歌志内市(北海道) -6.52%
1954位 檜枝岐村(福島県) -6.75%
1955位 鮫川村(福島県) -7.51%
1956位 諸塚村(宮崎県) -7.81%
1957位 笠置町(京都府) -7.95%
1958位 野迫川村(奈良県) -8.12%
1959位 球磨村(熊本県) -29.18%

図2 転入超過率の比較-全国(赤が転入超過、青が転出超過)
淡色地図(国土地理院)に国勢調査の結果を重ね合わせて掲載
図3 転入超過率の比較-東京周辺(赤が転入超過、青が転出超過)
淡色地図(国土地理院)に国勢調査の結果を重ね合わせて掲載
図4 転入超過率の比較-大阪周辺(赤が転入超過、青が転出超過)
淡色地図(国土地理院)に国勢調査の結果を重ね合わせて掲載

転入超過率のランキングを見ると、上位は福島第一原発の周辺地域(浪江町、楢葉町、広野町)と離島(青ヶ島村、与那国町、小笠原村、十島村、三島村)でほとんどが占められています。前者については、原発事故に伴う規制が解除され、住民が帰還しつつあることが要因と考えられます。都市部の自治体では、中央区(東京都)が22位(9.47%)、名古屋市東区(愛知県)が47位(6.35%)、つくば市(茨城県)が50位(5.78%)にランクインしています。
ランキングの下位のうち、1959位の球磨村は令和2年7月豪雨の被害による村外避難の影響で大きなマイナスとなっており、その他は、山間部に位置する地方自治体が多くを占める結果となっています。

2.3.移動元の傾向

2.2.でも記載のとおり、e-Statでは5年のうちに他の自治体から移動してきた人について、その移動元に関するデータが提供されています。このデータを活用して、特定の自治体における移動元の傾向を分析することができます。
今回は例として、湯沢町(新潟県)について分析します。湯沢町では移住・定住政策を推進しており、特に東京まで新幹線で70分程度で通勤できることをメリットに、東京近辺の人々対して積極的にPRを行っています。
結果は以下のとおりです。

図5 移動元の傾向-関東・甲信越(グレーが湯沢町)
淡色地図(国土地理院)に国勢調査の結果を重ね合わせて掲載
図6 移動元の傾向-東京周辺
淡色地図(国土地理院)に国勢調査の結果を重ね合わせて掲載

図5を見ると、湯沢町に移住した人々の移動元は、新潟県の周辺自治体(新潟市、長岡市、上越市、魚沼市、南魚沼市等)と東京近辺がほとんどであり、東京近辺の人々に向けたPRはおおむね成功していると言えるでしょう。
図6では、移動元の傾向について東京近辺に拡大しています。湯沢町への移住は、都心(千代田区、中央区、渋谷区等)よりも周辺の住宅地(世田谷区、練馬区、足立区、八王子市等)からの方が多く、具体的なPR施策を検討する際の参考にすることができます。(なお、都心より周辺の住宅地の方が人口が多いことには注意が必要です。)

3.まとめ

今回は、国勢調査を使ってできる分析の例を紹介しました。
国勢調査と聞くと、人口の把握を目的とした政府統計というイメージが強いかもしれませんが、今回分析に使用した移動に関するデータに加えて、性別や年齢、職業、交通手段等に関するデータも調査事項に含まれているので、政策だけでなく、法人・個人の意思決定においても様々に活用できるのではないでしょうか。
次回も別の政府統計についてご紹介する予定です。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


~参考資料~
・総務省統計局「令和2年国勢調査の概要」
統計局ホームページ/令和2年国勢調査の概要 (stat.go.jp)
・総務省統計局「e-Stata 政府統計の総合窓口」
政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
・湯沢町移住・定住支援ポータルサイト
湯沢町移住定住ポータル (yuzawa.lg.jp)


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