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『ダンキラ!!!』毒島九十九はなぜ蜘蛛モチーフなのか。衣装や名前から探る蜘蛛とのつながり

1月12日は少年ダンサー育成ゲーム『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』のダンサー・毒島九十九の誕生日。
鍛え上げられた肉体を活かしたダイナミックなダンキラが持ち味で、モデルとしても人々を魅了している。

そんな九十九が所属するチーム“TOXIC”は、英語で「有毒な」、「中毒性の」を意味する形容詞。
蛇や蝶といった毒を持つ生物のモチーフが衣装に取り入れられており、九十九には蜘蛛が割り当てられている。

数ある生物の中から、なぜ蜘蛛が選ばれたのだろうか。
衣装や性格などの特徴から、九十九と蜘蛛のつながりについて考えてみよう。

※このnoteは個人が趣味で書いたものであり、公式等とは一切関係ない。

銃の一部だった蜘蛛の糸

九十九のダンキラウェアには、蜘蛛の巣が大きくあしらわれている。
腰回りにはバレットベルトが巻かれ、ライフル用と思われる弾丸が目に付く。いかにも強そうに見えるが、デザインに取り入れた理由はそれだけではないだろう。

蜘蛛と銃には歴史的なつながりがある。
狙いを定めるときに欠かせない照準器には、かつて蜘蛛の糸が使われていた。
蜘蛛の糸はタンパク質で作られており、強靭さとしなやかさを兼ね備えている。まるでTOXICが得意とするヴォーグダンスをしているときの九十九のようだ。
ちなみに九十九が好むプロテインは「タンパク質」を意味しており、筋肉の主成分もタンパク質である。

温度の変化にも強く、環境に左右されることのない蜘蛛の糸。
細く丈夫で安定した素材ならば、視界を遮らずに十字の目盛りを作ることができる。だからこそ、照準器の材料に選ばれた。

現在はデジタル化した照準器が使われているが、古い銃の照準器には蜘蛛の糸が採用されている。
デザイナーの蛇ノ目シキが九十九のダンキラウェアにバレットベルトを取り入れたのは、こうした歴史的背景をイメージしたからかもしれない。

蜘蛛らしい性格とキラートリック

九十九の性格などからも、蜘蛛らしさを感じることができる。
たとえば九十九がことあるごとに口にする「弱肉強食」だ。

蜘蛛は肉食で、場合によっては共食いをすることもある。
仲間内でも油断はできず、強い者しか生き残ることができない弱肉強食の世界に生きているのだ。

また、蜘蛛の天敵としてベッコウバチやジガバチが挙げられる。ただし蜂全般に弱いわけではなく、スズメバチに対しては優位をとることも可能だ。つまり蜘蛛と蜂は、お互いが天敵同士なのだといえる。

蜂と蜘蛛の大きな違いは群れで生きるか個で生きるか。女王蜂を筆頭に社会的集団を作る蜂と、基本的に1匹で生き抜いていく蜘蛛は生活そのものが相容れない。
とくにメインストーリー第10章には、九十九と“蜂”の対比が反映されているように見える。

九十九のキラートリックにも蜘蛛との共通点が見られる。
「飛べる!はちゃめちゃ☆トラベル」のときに習得した「人間飛行機」を思い出してみよう。

「人間が空を飛ぶなんていったいどうした」と最初は面食らったものだが、蜘蛛ならば可能だ。
蜘蛛にはバルーニングと呼ばれる能力があり、空に向けて扇状に糸を吐くことで無風状態でも飛行できる
風がなくとも飛ぶことができるのは、九十九と蜘蛛との共通点のひとつだろう。

災害としての蜘蛛

『ダンキラ!!!』公式サイトにおける九十九のプロフィールには「パワフルなダンキラは災害レベルと揶揄される」と書かれている。
蜘蛛は世界各地の神話や伝説などで吉兆とみなされることもある一方、災害の象徴としても描かれてきた。

たとえばインドの『リグ・ヴェーダ』、『マハーバーラタ』などに登場するヴリトラは、蛇の姿のほかに蜘蛛として描写される場合がある。
ヴリトラは水を堰き止め、神々や人々を困らせていた。インドラなどの神はヴリトラを倒そうと知略を巡らせ、水場を解放する。
このようにインドの神話におけるヴリトラは幾度となく災害を引き起こしては、神や人の成長を促してきた

災害は厄介なものであるが、困難を乗り越え新たな世界を作る契機としての役割も果たしている。
展開を大きく揺さぶるような九十九の行動も、仲間の成長に一役買っているのかもしれない。

また、日本にも土蜘蛛をはじめとする蜘蛛の化け物を退治した伝説が残っている。
土蜘蛛は源頼光が退治した妖怪でもあるが、朝廷の命に従わなかった辺境の民も指していた。
権力者に流されず自らの信念を貫こうとするスタンスは、九十九とも似ているのではないだろうか。

蜘蛛とダンスの結びつき

ところで蜘蛛の一種であるタランチュラは、とあるダンスの語源になったといわれている。
イタリア・ナポリ地方の伝統舞踊、タランテラだ。

タランチュラに噛まれると毒のせいで踊り狂ってしまうと、かつてのヨーロッパでは信じられていた。
このとき踊られたダンスがタランテラ。タランチュラの毒を治すための踊りとしても知られていたが、効果のほどは定かではない。
15世紀~16世紀頃のイタリアで広まった舞踏病「タランティズム」も、タランチュラに噛まれたために発症したと信じられていたようだ。

古くからダンスと結びついていた蜘蛛は、ダンサーのモチーフにぴったりだといえるだろう。

蜘蛛と九十九の関係性

最後に、なぜ蜘蛛をモチーフにしたダンサーに「九十九」という名がつけられたのか考えてみたい。

蜘蛛と九十九といえば連想できるのが「九十九髪茄子」と「古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)」である。
どちらも戦国武将の松永久秀(まつながひさひで)が所有していた茶道具で、戦乱の世に大きな影響を与えた。

久秀が織田信長に仕えたときに献上した茶入が九十九髪茄子。
しかし信長は久秀が所有する茶釜・古天明平蜘蛛を欲しがった
献上するよう何度も言われるが久秀はこれを拒否。その後信長に反旗を翻し、最期は古天明平蜘蛛を自ら砕いて命を絶ったといわれている。

大事なものの命運を手放さなかった久秀の姿勢は、大切なものを守るために強くなった九十九にも似ている
久秀の生き様を反映した2つの茶道具を連想できる名前やモチーフが九十九に与えられたのも、偶然ではないのかもしれない。

参考資料
https://www.jataff.or.jp/konchu/mushi/mushi14.htm
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67843
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2015_08_06_01.html
https://www.riken.jp/press/2017/20170119_1/
https://www.discoverychannel.jp/0000027784/
https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/134316/kawamura.pdf
https://kotobank.jp/word/%E5%9C%9F%E8%9C%98%E8%9B%9B-99277
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiGazouCard/U426_nichibunken_0056_0007_0000.html
https://kotobank.jp/word/%E3%82%BF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%A9-94568
http://www.miyaobi.com/meihin.html
http://www.seikado.or.jp/collection/clay/002.html

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