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『ダンキラ!!!』破走ギンコとタバスコの共通点。2度の喪失を経て宇宙へ

本日9月6日は破走ギンコの誕生日。
ギンコは少年ダンサー育成ゲーム『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』に登場するダンサーで、ダンキラチームB.M.C.やダンサー連合・黒流星を率いるリーダーでもある。

漢の中の漢として羨望のまなざしを向けられるギンコだが、周囲を驚かせる要素はダンキラの実力だけではない。

たとえば、常人にはまねできないような味覚

学園内のコンビニでいなりずしを買っては、真っ赤になるほどタバスコをかけて食べている姿が目撃されている。常にタバスコを制服のポケットに忍ばせていると、コーチの間ではもっぱらの噂だ。

ギンコはなぜ、これほどタバスコを愛用しているのだろうか。
タバスコやトウガラシの歴史をたどってみると、ギンコとの共通点らしきものが浮かび上がってきた。

※このnoteは100%個人の趣味で書いたものであり、公式等とは一切関係ない。

喪失の中で生まれたタバスコ

タバスコ発祥の地は、アメリカのルイジアナ州。エドモンド・マキルヘニー(Edmund McIlhenny)がレシピを開発し、やがて世界中に広まった。

タバスコ開発のきっかけとなった出来事は南北戦争。1861から1865年に奴隷制度の廃止をめぐり、アメリカ合衆国(北部)と連合国(南部)との間でくり広げられた戦争である。

戦前、エドモンドはニューオーリンズで銀行家として働いていた。
しかし南北戦争に巻き込まれそうになると家族を連れ、妻の出身地であるエイブリー島へと逃れる。
財産のほとんどをニューオーリンズに置いてきたエドモンドだったが、幸いにも妻の家族が経営していたプランテーション(大規模農場)があった。
園芸が好きだったエドモンドは、砂糖などを栽培し生活を立て直そうと試みる。

しかし軌道に乗り始めたプランテーションも、長くは続かなかった
南部連合軍での従軍を終え、エイブリー島に帰宅したエドモンドを待ち受けていたのは一面荒れ果てた農場。進軍の影響で、プランテーションも大打撃を受けていたのだ。

農場にはわずかな穀物が残っていた。そのうちのひとつがキダチトウガラシと呼ばれるスパイス。
エドモンドは再び農場でトウガラシを育て始め、さらに料理にかけるためのソースを作った。
このとき生まれたものが、現在「タバスコ」として親しまれている調味料の原型である。

南北戦争で財産を失い、農場が荒れ果てても前を向いたエドモンド
喪失を乗り越え
タバスコを生み出した経緯は、ギンコが歩んできた人生にも似ていた。

関東ギガントモンスターズ時代。そしてブラック・メテオ時代。
2度の喪失を乗り越え、ギンコはB.M.C.という新たな居場所を手にしたのだ。

どこまでタバスコをかけるのか

エドモンドは1968年にタバスコを商品化し、ニューオーリンズなどで売り始める。
知名度を上げるために、レストランにもタバスコをおろした。
するとタバスコは、どんな店にも置いてあるおなじみの調味料として親しまれるようになる。

タバスコはルイジアナ州の住人(ケイジャン)たちの食文化と相性がよかった。
肉料理や魚料理はもちろん、アイスクリームなどの甘いものにもかけて食べていたという。
今では名産品としてタバスコソーダなども売られているらしい。
どんなものにでもタバスコをかけたがるのは、ギンコだけではなかった。

ちなみにタバスコのボトルは、中身が1滴ずつ出てくるように設計されている。
これはエドモンドがこだわったポイントで、料理に注ぐのではなくふりかけて食べられるようにという配慮の表れだ。
しかし、いなりずしにしたたるほどタバスコをかけるギンコにとっては、少々もどかしい構造かもしれない。

タバスコの刺激は宇宙をも征す

ギンコの好きなものはタバスコだけではない。
星空鑑賞も趣味で、相棒のフェネック・ベガをつれてよく夜空を眺めに行っている。
そのため、キラートリックやチーム名の中にも宇宙にちなんだ単語が。

実はタバスコにも宇宙とのつながりがある。

タバスコが普及し始めた1970年代。NASAの宇宙飛行士は、宇宙での食生活を支えようとスペースシャトルにタバスコを持ち込んだ。
宇宙飛行士が愛用の調味料を持参することは珍しくないが、タバスコのような辛いソースはとくに重宝された

宇宙空間では、人間の味覚や嗅覚が減退するといわれている。
これは無重力化で体内の体液バランスに変化が生じるためで、常に風邪をひいているときのような感覚になるそうだ。

結果として、地上にいたときと同じ味付けではおいしさを感じにくくなる
そこで食事にアクセントを加えるために、タバスコなどの刺激的な調味料が使われた。
ギンコが食事のたびに多量のタバスコを使うのは味覚が宇宙にあるからではないかと、思考が飛躍してしまった筆者を許してほしい。

魔除けや薬になったトウガラシ

タバスコの原材料であるトウガラシの歴史も少しさかのぼってみよう。

トウガラシなどの香辛料は、古代エジプトの時代から人々に使われていた。
当時は食用というよりも、儀式のための道具としての役割が強い。
たとえばエジプトではミイラを作るとき、腐敗や悪臭を抑えるために香辛料が用いられていた。

中国では赤いトウガラシに魔除けや厄除けの効果があると信じられている。
中華街などで目にするトウガラシのお守りは、この民間信仰によるものだ。

「悪いものを遠ざける」、「平穏を守る」といったトウガラシの役割は、紅鶴学園都市の治安を守る黒流星の働きにも似ている

日本にトウガラシが伝わったのは朱印船貿易の時代。とくにトウガラシは日本の風土と相性がよく、全国に広まっていく。
しかし当時は食べ物としてではなく、薬の一種として認識されていた

1625年になると、江戸の薬研堀(やげんぼり)に居を構えるからしや徳右衛門が七味唐辛子を売り始める。
漢方薬のようにさまざまな香辛料を調合した七味唐辛子は、薬効があると信じられていた。
そのため寺社の門前で販売されることが多く、参拝客を通して全国に普及したという。

ギンコのダンキラウェアや私服に描かれている狐のマークから連想される稲荷神社にも、七味唐辛子の出店が並んでいた。
京都の伏見稲荷には現在も七味唐辛子の専門店があり、山椒を効かせた調合が好まれている。

ちなみに余談ではあるが、インドにトウガラシが持ち込まれて間もない16世紀~17世紀頃には「トウガラシを食べている民族は好戦的で荒っぽい」とする見解もあった。
インド中部で勢力を伸ばしていたマラータ族のお気に入りだったトウガラシ。ギンコがタバスコをかけるときのように、どんな料理にも唐辛子を入れていたといわれているほどだ。
マラータ族の行動に悩まされていた人々は、反抗的な態度の原因はトウガラシにあるだと考えた。
現代では信じられないような話かもしれないが、未知の食材はそれほどまでに不思議な力を持っていると思われていたのだろう。

テッペンを目指して

ギンコの辛い物好きは、ゴールドハイムに置かれたインテリアからも伝わってくる。

ギンコが使っている102号室の壁にかけられたスカジャン。背面の文字をすべて解読することは難しいものの、上部には「CRAZY BASTARD」と書かれていることがわかる。
「クレイジーなやつ」と訳すこともできるが、ドイツのベルリンで売られているホットソース「Crazy Bastard Sauce」も思い浮かべてしまう。

Crazy Bastard Sauceはハラペーニョやハバネロなどを使用した、本格的な辛さが味わえる調味料。マイルドな辛さの商品もあるが、ギンコだったらもっとも辛いレベルを愛用するに違いない。

ダンキラでも辛さでも、目指すのはテッペンのみ。
そんな漢気あふれる姿は、これからも多くのダンサーや観客たちを魅了することだろう。

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参考
リジー・コリンガム著、東郷えりか訳『インドカレー伝』河出文庫(2016)
https://www.tabasco.com/tabasco-history/
https://epicureandculture.com/tabasco-history/
https://www.stem.org.uk/system/files/elibrary-resources/2019/02/TasteInSpace%20%28Japanese%29.pdf
https://www.npr.org/sections/thesalt/2012/02/23/147294191/why-astronauts-crave-tabasco-sauce
https://abcnews.go.com/Technology/astronauts-cravings-hot-food-cold-space-travel/story?id=15784827
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/45/2/45_100/_pdf
https://hamarepo.com/story.php?page_no=1&story_id=1817
https://www.yawataya.co.jp/about/history/
http://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/pepper.html
https://www.shichimi.net/
https://www.crazybsauce.com/

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