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Social Cafe「Sign with Me」訪問記 ー誰が"障害"者なのか?ー

3月某日、本郷にあるスープカフェ「Sign with Me」に、友人とふたりで行ってきました。


Social Cafe「Sign with Me」とは

「Sign with Me」は、手話と筆談を公用語とするスープカフェです。


自分たちはスープと、デザートドリンクセットをオーダーしました。
(前の記事でも紹介した画像ですが)

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ファミレスのような店員さんを呼ぶタイプのお店だと、オーダーの際手話などを使わなければならないのかな?とドキドキしていたのですが、着席する前にレジで会計するタイプだったので安心しました。

自分は少しだけ手話を学んだことがあるため、オーダーの際できる範囲の手話を使ったら、手話ができる人だと思われたらしく、その後すごいスピードで手話を使われてしまい笑ってしまいました。
すみません、指文字とあいさつもやっとなくらいです。

(余談ですが、この現象は、あいさつだけ中国語を学んだことがある自分が、中華料理屋さんで会計の際「吃饱了(お腹いっぱい)」と言うと中国語ができる人だと思われ、その後怒涛の中国語を使われ笑うしかなくなるのと似ていると思います。)

しかしこちらのお店の仕様は、メニューに写真が多く載せられていたり、セットに番号が振られたりしていたりと、指差しとジェスチャーだけで不自由しない工夫がなされていました。
手話という文化に生きていてもその外で生きていても、手話を学んでいても学んでいなくても、誰でもバリアフリーなお店だなと思います。


お店の雰囲気はほんとうに普通の、都会にあるおしゃれなカフェ、といった感じで、居心地がよかったです。

自分は「手話が公用語」という点に興味を持って伺ったのですが、同行してくれた友人は「おもてなしの気持ちを感じるカフェ」だと言っていました。

曰く、「聴覚障害のある方も働いているカフェでありながら、リラックスするような店内BGMが流れているのは、お客さんのことを考えているからだ」と。
また、同行してくれた友人は手話を正式に学んだことがないとのことだったのですが、店員さんの笑顔がとても素敵で、手話を使わなくても安心してオーダーをすることができたと教えてくれました。

このあたりの友人の指摘が、自分も「居心地がよい」と感じた理由なのだろうなぁ。
自分がなんとなくで感じている雰囲気を、言語化して伝えてくれた友人には尊敬しかありません。

スタッフさんの素敵な笑顔は、ぜひInstagramでチェックしてみてください!



聴覚にバリアのある方との連絡手段

ちなみに、感染症騒ぎで営業を自粛しているのではないかと考え事前に問い合わせのメールを送っていたのですが、そのやりとりも「おもてなしの気持ち」を感じるものでした。
それというのも、問い合わせのメールを送った当日のお返事は「通常通り営業しています」というものだったのですが、その後営業時間の短縮が決定した際にわざわざその旨をメールしてくださって、そのお心遣いがとてもうれしかったのです。

ただ、「手話と筆談が公用語」として運営しているだけあって、連絡手段がファックスかメールしかないというのは、自分にとってはちょっと大変でした。
自分はメールやLINEのやりとりが苦手で、体調の良い時にしか、滞りなくメールのやりとりをすることができません。
そのため、自分はどんな場面であっても電話連絡が好ましいのです。

この"文化"の違いは不便なことではあったけれど、しかし反面とても興味深いことでもあると思います。

それは、「反転すれば、この現象は、聴覚にバリアにある方にとっては日常的なものなのでは?」ということです。

その数日前に、聴覚にバリアがある方もいるグループで食事をする機会がありました。
そして、その方とふたりで他の参加者を待っている際、自分が他の参加者に待ち合わせ確認の電話をしていると、その方に「自分は電話ができないから、こういう直前の連絡を電話でできるというのは、タイムラグがなくていいですね」と言われたのです。

確かに予約したお店に遅刻の連絡をする時などは即時の連絡が必要なため、メールなどではお店の人に気づいてもらえないことの方が多いはず。
それは、ほとんどのお店で働いているのは聴者であり、彼らにとって最も効率的な手段であるのが電話だからということなのでしょう。

そうとなれば、マジョリティたる聴者ではない方は、電話が得意な人間と一緒にいない限り絶対に遅刻できない、というプレッシャーが常にあるのではないでしょうか。

そして逆に、視覚情報を重視する聴覚障害者がマジョリティの空間では、メールができない自分はマイノリティであり、"障害"者となるわけです。
(そもそも聴覚障害者がマジョリティの空間でなくても、自分は今の社会において発達障害者であり精神障害者なのですが)(笑うところです)



誰が"障害"者なのか

上記のことは、最近観た以下の話題とつながるものを感じます。


結局「誰が"障害"者か」=「何が"障害"なのか」ということは、その空間において、どのような属性を持ってどのような文化に生きる人間がマジョリティなのか、ということによって規定されることに過ぎないのだなぁと思わされます。


ただ、「Sign with Me」では別に手話ができなくても手話ができる人と同様にサービスが受けられるため、ほとんど誰もがマジョリティになれる空間だと感じました。

これに関して、お店のHP「Sign with Meについて」より、「願い」の項を引用します。

願い
ろう者か聴者に関係なく交流や相談をし合う中で新しい考え方を生み出せる場になることを願っています。

これはひとことで言ってしまえば「インクルーシブ」とか「ダイバーシティ」とかといったことを指すのだと思いますが、それを「願い」と表す点が「Sign with Me」の魅力だと思います。

しかし、視覚にバリアがある方や、あまり表情を見て話すのが得意ではない人など、視覚的なコミニケーションをとること自体に困難を感じている人にとってはまた違った困難があるのかもしれないませんね。

それはそれとして、カフェとしてとても良いお店でしたし、手話でのお話会などもやっているようなので、またお伺いしたいと思います。


「手話が公用語のカフェ」


・「Sign with Me」のスタッフさんは…
インクルーシブと言えば、HPの「スタッフ募集」のページではスタッフさんのことが「アクター」と表記されていることが気になりました。

たしかにHPには「手話が公用語」と書いてあるだけで、「すべてのスタッフが聴覚にバリアがある」とは書いてないため、聴者で手話を「アクト」しているスタッフさんもいるのかもしれませんね。
そのことは「Sign with Me」の「願い」である「ろう者か聴者に関係なく交流や相談をし合う中で新しい考え方を生み出せる場」を実現しようとする実践であるようにも感じます。

これは自分の想像に過ぎませんので、真相はわかりませんし、わからない方がおもしろいような気がします。


・スターバックスの「サイニング・ストア」

それと並行して紹介したいのが、スターバックスが今夏、日本初の「手話を主なコミュニケーション方法とする店舗」、「サイニング・カフェ」をオープンするというニュースです。

この記事内では「聴者と聴覚に障がいのあるパートナーが共に働き、多様な人々が自分らしく過ごし活躍できる居場所の実現を目指す」というスターバックスの姿勢が紹介されています。
これは明らかにインクルーシブな職場にすることを意識した運営ですね。

ちなみにこの記事はスタッフについてだけではなく、来客へのはたらきかけや「サイニング・ストア」の意図など、引用しきれないほど面白い情報が紹介されているので、(自分が言うのもおかしな話ですが)ぜひご覧ください。



おしまい。



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【余談】

本郷と言う場所は他にもおしゃれなカフェがたくさんあるようですね。

今回は二次会と称してアンモナイトと言うコーヒー専門店にお邪魔したのですが、雰囲気がとても良く、ドリンクもおいしかったです。
チョコレートドリンクのSをいただきました。

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食べログなどを見ると他にも気になる喫茶店があるので、「Sign with Me」もそうですが、本郷と言う街自体また行ってみたい場所になりました。

クリームソーダ、いいですよね。


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