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最高の茶番劇【映画】翔んで埼玉

#映画感想 #邦画

【見た映画】

翔んで埼玉

2019年

出演:GACKT, 二階堂ふみ

【はじめに】

皆さんは自分の出身地にほこりを持っていますか?

私は兵庫県生まれの兵庫県育ち、18で地元を出て、現在は沖縄県に住んでいます。

いつも出身地の話をすると、

「兵庫って......神戸?」

などと言われます。

もう一度言いますが私の出身は、兵庫県です。

これは兵庫県民あるあるですが、「兵庫出身です」という人に神戸市出身の方はほとんどいないことでしょう。神戸市出身の方は「神戸出身です」と答えるからです。

このことには地元を離れてはじめて気づきました。県外の人はそのくらいの認識なんです。

確かにパッとしたものはありませんが、私は地元の兵庫県がとても好きです。山もあれば海もあり、都市もあります。北部では何メートルも積もるほどの雪が降ります。一部では”日本の縮図”であるとも言われています。

失礼しました。今回は兵庫ではなく埼玉県のお話です。

とはいっても私は埼玉県には訪れたこともなく、これと言って愛着がありません。そんな私でも本作が楽しめるのか、はなはだ疑問でしたが、心配ご無用でした。

関東近郊出身の方は、私よりももっと楽しめる要素が多いと思いますが、地元を愛する心がある方、逆に地元がそんなに好きではない方、そんな方々にぜひとも見ていただきたい作品です。

ただの茶番ではありません。茶番であることには間違いないですが、感動するほどに最高の茶番であることは保証します。


【あらすじ】

娘の結納のため一路東京へと向う、埼玉在住の菅原家。その道中車内のラジオで、ある伝説の物語が流れ始めます。

それは、東京屈指の名門校・白鵬堂学院を舞台に、生徒会長・壇ノ浦百美と、アメリカ帰りの転校生・麻実麗の出会いから語られる物語です。

見るからに東京都民の麗は、実は埼玉県民が東京都に入るための手形制度の撤廃を求める“埼玉解放戦線”のメンバーだったのです。

埼玉県人を庇い立てする麗を怪訝に思っていた百美でしたが、何故か麗に心を惹かれていき、次第に東京と埼玉、そして千葉までも巻き込んだ抗争に巻き込まれていきます。


【感想】

ただの茶番コメディではありません!!

どこからどう見ても、はっきりとしたコメディ映画であり、埼玉県を面白おかしくいじって笑おうという雰囲気があふれ出ている本作ですが、ただそれだけの作品だと思ってみてみると、とんでもなかったです。(翔んではいるんですが...)

誰しもが映画を鑑賞するときに、言葉にできないけれど漠然と持っている、「こんな要素があったらいいな」を全部詰め込んだような作品でした。

「笑いあり、涙あり」とはよく言いますが、こんなになんでもありな作品には未だ出会ったことがありません。

もちろんジャンルとしてはコメディに入りますし、物語の根底としてコメディの要素は十分に入っています。

ただ、登場人物が誰一人として笑わせようともふざけてもおらず、「何がコメディだ!こっちは真剣なんだ!」と言わんばかりの迫真の演技を見せてくれます。

誰かが何かに真剣に取り組んでいる。ただその方向が完全にボケに走っていることに本人が気づいていない。そんな状況が永遠と続き、何を見ているんだろうと不思議な気持ちになります。

そこを映画演出の力でめいいっぱい感情を揺さぶることで抑え込まれます。

鑑賞を終えて、ふと冷静になってみると、なぜあんなに感動していたんだろうと、はてなが止まりません。

そんなとんでもない力を持った茶番劇でした。

【考察】

GACKTさんの名演に心をつかまれました。

歌手として活躍し、バラエティ番組でも目にすることの多いGACKTさんですが、私は彼の演技をしっかりと見るのは今回が初でした。

さすがは舞台役者といったところで、演技がとても大きく、設定がかなり突飛な本作の中でもたっぷりの存在感でした。

なにより、GACKTさんの人間性そのものがキャラクターや作品の雰囲気を一つレベルの高いものに持って行ってくれているように感じました。

バラエティ番組でもなじみがある分、あれだけの空気感と雰囲気を持っていながら、少し身近でありながら”ちょっと変で面白い人”という認識が生まれており、それが作品の求めていう難しい役どころにとてもマッチしていたと思います。

もう一人の立役者はやはり千葉群代表を演じた伊勢谷友介さんでしょう。

伊勢谷さんもこの「真剣にバカをやる約」にピッタリだと私は思いました。

GACKTさん演じる麻実が千葉群にとらえられた時のやり取り、埼玉群VS千葉群、埼玉と千葉の連合軍による攻め込み、このあたりのシーンは本作でも特に見ものです。

【おわりに】

劇中でも結納に向かう車の中で、カーラジオを聞く菅原家の娘は思わず、

「何なのこれ......」

と漏らしています。

視聴者の気持ちをそのまま代弁してくれる、この存在が意外と大きいです。

皆さんもご自身の地元に思いをはせながらぜひご覧ください。

そして、何よりも面白いのは鑑賞後、ご自身の地元について調べて、頭の中でこのとんだ茶番劇のパロディを作ってみましょう。

代表する著名人は誰でしょうか?特産品は何でしょうか?

そんなことを考えながら、VS埼玉を掲げると2度楽しめます。

そして身近にある埼玉発祥のものについても調べてみてください。日本埼玉化計画がどれほど進んでいるかに絶句することでしょう。

ほら、あなたのすぐそばにも埼玉が。

いつか世界に埼玉が翔びまわる時が楽しみでなりません。


最後までお読みいただきありがとうございます。

それでは、また。


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