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田舎暮らしのParadoX

1. 目的

 リーマンショックの後、私は地方勤務が多く、しばらく田舎暮らしを経験していましたが、地元にどっぷり浸かっていると気付かない、外部の者から見た田舎の問題点とその解消方法などを NOTE に記しておきたいと思います。

2. 定義

 表題にある「パラドックス」の意味について、ご承知とは存じておりますが、ここで再度、確認しておきたいと思います。Webster's Dictionary には、"a tenet contrary to received opinion" つまり、受け入れた持論とは正反対の見解、Wikipedia には、「正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す」と定義されています。

3. 問題

 新幹線を降りてみると、当然のことながら、駅前には商店街が軒を連ねています。新幹線の駅のある街ですから、それなりに全国的にも知られた地域ですが、人通りはまばらです。特に違和感もなく Google Map で経路を調べて目的地に向かいますが、また、当然のごとく観光をしながら歩いています。すると、観光客には興味をそそる一軒のお店が目に留まり、お店に入ります。お店の人と話してみると、商店街の客が減ったと嘆いています。私にしてみれば、最近来たばかりですから、「そうなんですね」と相槌を打って会話を続けましたが、実は、しばらく住んでみると、色々と分かってくるところがあります。お店の人の話では、昔は休みの日にもなると、商店街の人通りは一杯だったとのことです。

4. 観測

 よくご存知の通り、今どきの日本は、どこに行ってもイオンがあります。そうです、全国各地にイオンはあります。もちろん、この街にもイオンモールがあります。有難い事に東京に住んでいても地方に住んでいても、イオンを利用している限り、物価も手に入る物も何の変化もありません。休みの日は、ご多分に漏れず、食料品の買い出しに来ていましたが、スターバックスもあるので、それこそ何の変わりもありません。そして、その街にはショッピングモールがもう一つ、アリオがあります、意外と近くに。歩くにはちょっと遠いかなと思いますが、クルマなら数分の距離です。実は、アリオの方が後にできたらしく、休みの日は「人で一杯」です。学生さん達も、休みはアリオで楽しんでいるようです。そう、人で一杯なのです。

5. 理由(わけ)

 新幹線が留まる駅だからといって、所詮は田舎の地方都市、都内とは事情が違います。休みの日に買い物に出てくる人の数には、限りがあることは容易に理解できます。前述のお店の人の言っていた「昔は休みの日にもなると、商店街の人通りは一杯だった」そのお客さん達は、みんなアリオに行っているのです。駅前の商店街なんて、アリオの規模と大差ありません。地元の人達にとっては、待ち望んでいたショッピングモールだったことでしょう。田舎町を発展させ、活気づける為の最新のショッピングモールのはずですが、観光客がイオンやアリオに興味を持つわけもなく、小さな田舎の地方都市に、それもこんなに近くに二つもショッピングモールを作って、商店街からお客さんが居なくなるのは、火を見るよりも明らかな、当然の事です。

そして、ひとつ不自然に感じたのは、アリオの「外では人が歩いていない」事です。アリオの規模のショッピングモールが人で一杯なのですから、出入り口も、駅までの商店街も、この人達で賑わっていておかしくありません。いったい、この人達はどこから来るのだろう。アリオに住んでいるわけではないだろう。私もそうですが、みんなクルマでアリオだけを目指して出てくるのです。そして、アリオの駐車場に停めて、アリオでお買い物をし、アリオのカフェで休憩し、そして直帰する。商店街も駅前も、自宅とアリオの間は素通りして帰宅しているのです。前述の嘆いていたお店の人も恐らくそうでしょう。

という事で、もうご説明の必要はないと思われますが、パラドックスを説いてみましょう。冒頭に記述した通りパラドックスとは、受け入れた持論とは正反対の見解、つまり、

正しそうに見える前提
  地方活性化、田舎町を発展させ、活気づける為に
  集客力のある施設が必要。クルマを前提とした都市計画。

妥当に見える推論
  最新のショッピングモールの招致、集客に見合う駐車場の整備。

受け入れがたい結論
  商店街からも街からも人が消えた。街は寂れて行く。



6. 結論

 首都圏郊外で生まれ育った私でも、地方都市に移ると都会っ子なのです。しかし、外部の者には問題が丸見えで、どうしたら良いのかは容易に分かります。 あなたならどうしますか?

一つの提案としては、ショッピングモールの駐車場は、モール直結を避け、街全体として駐車場を整備する。

もう一つの提案は、休みの日などは、パリのように街全体を歩行者天国とし、次世代モビリティの利用を前提とした都市計画を建てる。

観光中心の地方都市ですから、休日の歩行者天国も、環境に配慮した次世代モビリティも容易に受け入れられることでしょう。

以上




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