バラバラ・バルトス=ヘップナー(ロコバント靖子 訳)『クリスマスの思い出 冬の炉端で』(原著1982)


ドイツ語の原著のタイトルを訳すと「クリスマスABC」となるように、主にドイツでのクリスマスの風習やその起源などについて詳しく書かれた本です。そこに著者の子供の頃のクリスマス期間の思い出や、クリスマス料理の紹介なども加えられていたりします。

夜が明ける前に早朝のミサに行く習慣などは、日本の大晦日の初詣に近い感覚なのかなーと比較したり、エリコのバラってどんなんかなーと思ってタイムラプス動画を見て「おおっ!」と思ったりと、ウンチク本としても楽しく読めました。

また翻訳者が、原著に醸し出されているであろうクリスマスの暖かくワクワクした雰囲気を、たとえば「さあ」「そう」などの感嘆詞をうまく使って残してくれていることも、魅力の一つとなっています。

ただ時折、この執拗なまでのレシピの解説や思い出に対する美化はなんだろう? と少し引っかかっていたのですが、訳者あとがきを読んでその疑問がスッと腑に落ちました。それが分かると、このエッセイの、行間から滲み出る悲哀まで感じられて、より一層著者の思い出の美しさが際立ちます。

本書は、そういったほのかなミステリ要素をも含む一冊となっています。クリスマスが始まるアドヴェントの時期に、ぜひ!

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