前向きブログ「HSS型HSP一人旅(和倉温泉編)」
どうも。クレオパトラの長谷川優貴です。クレオパトラというお笑いコンビでネタをしたり、エンニュイという劇団を主宰したり、CHARA DEというお笑いコンテンツ制作団体の代表をしたりしています。
こんばんは。
今日は、今年1月にLINEブログに書いた一人旅のブログを再編集して掲載します。HSS型HSPの人間が一人旅するとこんな感じだよという内容になっているので、共感できる人は面白いかもしれません(笑)そうじゃない方も、考えすぎだよと思って笑っていただけたら幸いです。
2020/1/27 00:35
昨日から石川県にいた。
新幹線で金沢まで行き乗り換えて、和倉温泉駅へ。
コメディアンのせとたけおの紹介で3月に能登演劇堂という会場で公演をさせていただけることになり、会場の下見で石川県に来ることになった。
せとたけおの計らいで温泉宿も取ってくれていた。優しい男だ。
和倉温泉駅に到着するとせとたけおの姿はない。僕が特急で来てしまったせいで予定の時間が狂ってしまったようだ。30分以上は駅で待たなければいけない。しかし、駅周辺にはなにもない。仕方なく、周辺にある気になる物をスケッチすることにした。
最近、写真よりもスケッチのほうがいいのではないかと考えていた。昔ワークショップでスケッチをすると自分の見た景色が感覚で残ると教わった。とにかく見たらその場でダッシュで描く。雑でもいいからその場で描く。そして、そのスケッチした物などを手で触れる。触れると材質や質感が感覚として記憶に残る。何故その形をしているのかも理解できる。民俗学者の今和次郎という方の本を読んでからスケッチをはじめると凄く面白いと思います。
金髪のやつがうろうろしながら何かをずっと描いているせいか、不審な目で見られた。そうこうしている内に、コメディアンせとたけおが実家の車で到着。車に乗り込み、早速能登演劇堂へ。車内で、牡蠣が名産だと言いたいせとたけおがどうしても柿のイントネーションになってしまうというどうでもいいくだりが続いた。能登牡蠣というのが有名らしい。せとたけおに言わせると能登柿だ。
途中、鎌をもったばあさんがうろうろしていて、あのタイプのばあさんが至る所にいて捕まったら首を落とされてゲームオーバーという謎の設定の物語をたくさん考えたが、今考えるとよくわからないので割愛する。
能登演劇堂に到着。親切な担当者の方々に劇場内を案内していただいた。劇場内のほとんどの場所を舞台として使っていいというめちゃくちゃクリエイター想いの劇場さん! しかも、どこもかしこも発想次第で舞台にできるように作られている。こんな劇場見たことない! 使い尽くしたい!! ちゃんとした劇場でこんなにワクワクしたのは初めて。そして、舞台の奥の扉が開き外の景色と繋がり、外の景色がセットのように見えるという仕組みもあるのだ。これは圧巻だった!
こんな素敵な劇場でやらせていただけるなんて有り難い。せとさんに感謝。せとさんと話して面白い内容思いついたので三月お楽しみに。
(※コロナの影響で中止になってしまいました。もしかしたら、いつか実現するかも)
劇場を見終わって、そのまませとさんの車で宿へ。せとさんは奥さんと子供と実家へ。後から知ったけどせとさん誕生日だったらしい。言ってよ! 全くなんて男前なのさ。
和倉温泉は、宿が乱立している。僕の宿はメインストリートから少し外れた場所にあった。古い感じだが所々リノベーションして綺麗になっている。女将がパンチが効いていてガンガン話しかけてくる。おそらく60は越えているかな。笑顔が優しくて癒された。部屋に案内される途中、朝ご飯は何時にするかと聞かれた。しかし、僕は朝食付きなことすら知らなかったのでなんて答えようか悩んだ。だが、女将はそんな遅い返事は許さない感じで捲し立ててくる。僕は答えていないが朝7時に決定した。起きてこなかったら何回も電話すると念を押された。その発言のあとの笑顔も優しかった。
部屋に入ると六畳くらいの和室が広がっていた。旅館という感じで旅気分を盛り上げた。旅館の部屋の奥にあるスペースの名前がわからず調べたら、何となく居心地がよく、つい椅子に座って長居してしまうあの空間の名称は「広縁(ひろえん)」というらしい。その名の通り、幅が広い縁側。広縁からの見晴らしもいいが、部屋の逆側の障子を開けると海が一望できた。
僕は、夕飯を食べる為に部屋を出た。この時点で、19時頃だった。外に出たものの真っ暗でなにも見当たらない。どこがメインストリートなのかも検討がつかない。でも、携帯電話で調べたくはない。とにかく歩いたら広い通りが見えてきた。夜の海を見ようとしたが、目の前まで来たら飲み込まれそうで怖かったのでやめた。大きな旅館が見える方にとりあえず進んでみた。すると正解だったようで、何軒か飲食店を発見。ここでミスるわけにはいかない。観光客向けの値段が高いだけでそんなに良い材料を使っていない店なのか、地元の食材をちゃんと使った地元の人達に愛される店なのか見極めなければいけない。入るなら絶対に後者だ。外観が綺麗でそんなに古くなく、ちゃんとチェーン店のようにメニューの写真を撮ったりレイアウトしている店は怪しい。少し古くて汚いが掃除が行き届いていて、メニューが手書きで写真がピンボケしている店が理想だ。
一軒どちらともとれない店を発見。しかし、メニューを見ると一手間加えている品が多い。これは板前の技術がないと無理なラインナップと確信。日本酒の種類も多いので地元の酒屋との繋がりあり。これは期待ができる。入店すると綺麗でシンプルな作りの店内。意外と広い。長いカウンターの一番奥に通される。オーナーらしき板前を見ると耳に黒いピアスを三つつけたチャラい兄ちゃんだった。歳も若目。これはハズレだったか? と一瞬焦ったが、包丁捌きと他の店員への的確な指示の出し方で安心。とりあえず、おすすめのカワハギの肝和えとなまこ酢と瓶ビールを頼んだ。
写メを撮っているのを見られて、食事中にSNSをやるチャラい若者だと思われたら嫌だったので、大将が厨房に入ったのを見計らって急いでシャッターを押す。大将が戻ってきたら何食わぬ顔でビールを飲む。カワハギの肝和えは凄く美味しかった。しかし、そのあと来たなまこ酢の量を見て焦燥感が強くなった。一人で食べる量ではないのだ。味は最高だった。あんなに柔らかいなまこは初めてだった。でも、この後なにを頼んでも量が多いのではないかと考えたら怖くなった。
僕が量に焦っていることを大将に悟られないように結構な速度でなまこを口に入れている時に、新たな客が三人来店。大将の態度を見る限りどうやら常連のようだ。先頭で入ってきたリーダー格の男性、歳はおそらく60代。議員的な格好をしている。後ろにはラフな格好をした40代後半の男性と、スーツを着た50代くらいの男性。どちらも、肌が浅黒くテカテカと光っていて梅宮辰夫さん的な太り方。見るからになにかの社長だった。リーダー格の男性は、大将に「先生」と呼ばれていて、かなりの食通のようだ。刺身はなにがあるか確認し、アジのなめろうの荒く切ったやつとオーダーした。「先生に言われてから荒く切るようにしてます」「そうだろ? そのほうが味を感じやすいんだよ。食感も良いし」という会話が交わされた。
先生は、僕の真隣に座っている。変な食い方をする若者だと思われたくない。ビールがもう少しでなくなる。次の一手を打っておかないと……。店員さんを呼び、白子焼きと〆張鶴純の熱燗を頼んだ。どうだ。通な感じだろ。先生、俺ちゃんと考えてオーダーしたよ。聞いてくれていたかい先生。俺成長したんだぜ。と、教え子の設定で心の中でミニコントをしていたらあっという間に白子焼きと熱燗が出てきた。ポン酢が付いていたが、焦げ目のついた白子は塩がふってあり、そのままで十分美味しかった。口に熱々のまま放り込み、舌で潰し、中からどろっと出てきたところで熱燗をぐいっと呑む。口の中で白子の淡白な味わいと熱燗のほんのりした甘さが混ざり合い只々美味。幸せを感じていたら、先生がおあいそと言った。さくっと食べてさくっと呑んでさくっと帰る。粋だ。先生あんたやっぱり粋な男だよ。本当は腹が全然満たされていなくて丼物とか食べたかったが、粋だと思われたくて僕もお会計をした。おあいそと言いたかったがまだ僕には早い気がしてお会計お願いしますと言った。すると「レジでお願いします」と言われた。先生はカウンターで払っていたのに。レジの前に立つのは粋ではない。しかし、仕方ない。お会計を済ませて「ご馳走様でした」と言い、店を出た。粋だ。粋な客を装うことができた。充実感。満腹感はないが。
外にでると風が強くて寒い。もう一軒どこかでご飯を食べる財布の余裕はない。時間はまだ20時過ぎ。BARを探すことにした。
怪しい通路があったので入ってみた。そこに初めての方も飲みやすいBARだと書いてあったので入ってみた。中には屈強な男が二人。店員が二人ともデカい。店内は普通のBARだ。客は僕以外誰もいない。ただ、店員がデカい。とりあえず、白州のソーダ割りを頼んだ。お通しが肉団子4つだった。BARのお通しで肉団子を見たことがなかったので、なんとも言えない気持ちになった。肉団子とデカい男が二人。なんかヤバイBARに来てしまったのかもしれない。掘られる覚悟を少ししだした時に、旅行ですか?と話しかけられた。正直に話すと片方の小さいほうのデカい男がせとさんと同じ高校出身だった。面識はないらしい。どうやら、小さいほうのデカい男が40歳で年上で、大きいほうのデカい男は、38で年下だがオーナーらしい。僕が東京から来たというと、大きな方のデカい男は「昔、日大の相撲部でずっと東京にいたんですよ」と言ってきた。相撲取り!? 確かに言われてみればそれくらいデカい。
そこからは、相撲部時代の話を聞いていた。阿佐ヶ谷に寮があったらしく、たまにゲイの方に干しておいたまわしを盗まれたという。まわしは一反4万くらいするらしい。プロのやつとなるとシルクでできているからうん十万円するという。まわしの付け方も教えてもらった。先月福島のいわきで入ったBARで鎧を着させられるという事件があったので、今回も本当にまわしをつけさせてもらえるかもと期待したが、それはなかった。二杯飲んで店を出た。結局、小さいほうのデカい男が何故デカいのかは聞けなかった。
少し海を見て、宿に戻り露天風呂に入った。誰もいなくて貸し切りだった。
寝ようと思ったが、明日7時に起きないと女将に怒られると思ったら緊張して眠れなくなった。仕方なくTVerでゴッドタンの腐り芸人セラピーを観た。それでも眠れなくて、一回コンビニに出かけたら暗すぎて帰り道間違えて、遭難をしかけた。で、結局1時間くらいしか眠れなかった。しかし、寝坊はしなかった。さあ、大広間に行こう。ここで一抹の不安がよぎる。
「あれ? 浴衣のまま行くのが普通なのか? 私服に着替えたほうがいいのか?」
でも、イメージでは浴衣で食べている感じがする。浴衣でいこう。
10分前には、朝食が用意された大広間についた。「あら、ちゃんと起きれたの?偉いね」と褒められて嬉しかった。大広間には、僕のテーブルと、家族用のテーブル、あと四人グループのテーブルがあった。女将が1人で準備をしていた。7時になっても他の客は現れなかった。先に食べ始めようとしたが朝7時に食う量じゃなくて驚いた。
女将はそんな僕の表情を見逃さなかった。「いつも朝食べへんのやろ?」いや、そういう問題ではない。量が多いのだ。正直朝は意外と食べている。でも、バナナと納豆くらいだ。この量は、昨日の粋ぶった俺の夕飯よりも多い。しかも、一昨年の二日酔いのせいでまだ胃がやられていた。しかし、一欠片でも残したら、女将を失望させてしまう。食い切るのだ。全て。
「向こうにご飯あるんでね。おかわりしたかったら…あ、せえへんか」
と言って笑っている。なんてユニークなおばはんだ。朝からやってくれるじゃないか。おかわりはしないけど絶対に完食する。そう心に決めた時、四人席のグループが10分遅れで現れた。男が2人と女2人のおそらく大学生の4人組だ。女の子は普通だったが、男が2人とも真面目そうだった。なにかのサークルの先輩後輩なのかもしれない。そこで違和感に気がついた。
あれ? こいつら私服だぞ。
金髪で浴衣のおっさんが1人で朝食を食っている。どう見られただろうか。恥ずかしくて仕方なくなってきた。若い女人が2人もいるし、なんか意味わからないけど、緊張してきた。漬物を咀嚼する音も鳴らしたくなくて飲み込んだ。女将の為に完食しなくてはいけない緊張感もあるしパニックになってくる。とにかく平然とした顔で食べ続ける。しかし、胃は満腹マークをチカチカ点滅させている。とにかくお茶で流し込んだ。なんとか一欠片も残さず完食。女将! 見てくれたか女将! 女将はもう別の部屋に行ったようでいなかった。褒めてもらいたかったのに。金目の昆布締めの昆布を食うのか食わないのかで議論している大学生を横目に大広間を出た。出る時も粋な男の雰囲気を醸し出しながら出た。最後、襖に少し挟まれた。
そのあと、また露天風呂に入り空をぼーっと眺めた。湯気と雲が同化して空と繋がっている気持ちになった。癒された。
8時半にはチェックアウトして、散策に出かけた。最後、女将に会えなかったことが心残りなのと、もしかしたらあの人女将じゃなくて普通の従業員かもしれないと思ったら、女将であってほしくてたまらなくなった。
とりあえず、海に出てスケッチをした。
朝、1人で海を見ながらスケッチするのは想像以上に気持ち良かった。感覚が研ぎ澄まされていく感じがした。凡庸な台詞だが、海を見ていたら全てちっぽけに思えてきた。一昨年、八戸で知り合った韓国太鼓をやっているチェさんに聞いた話を思い出した。チェさんは昔、日本全国を韓国太鼓を叩きながら歩いて旅をしていたらしい。その時に、知らない人の家に訪問して韓国太鼓を披露すると言っていたので、僕ら芸人でいう営業とか路上ライブみたいですね。お客さんと呼吸合わせてやらないと盛り上がらないですよね、と言ったら
「人間に合わせようとしたら合わないよ。自然と呼吸を合わせないと」
と言った。この言葉が凄くズシンと心にきた。いつの間にか人間主体で考えていた。自然と合わないとそりゃ人間とも合わないよな。と反省したのを思い出した。海と呼吸を合わせた。自分の小ささを確認できた。もっと謙虚に期待せずに無心で走ろうと思った。力をもらえた。
そのあと、お寺とか色々周った。3時間くらい歩き回った。
電車の時間があるので、和倉温泉駅に向かうことにした。歩くと20分くらいかかるので、宿の車で送ってくれるそうだが歩くことにした。
これもチェさんの教えで、乗り物はタイムマシンみたいなものだから、時間と感覚を狂わすから歩けるときは歩いて移動したほうがいいと。ちゃんと自分で地面を踏み締めて土地の感覚を覚えた。
三月の公演が楽しみだ。
良い旅だった。せとさんに感謝。
最後まで読んでくださってありがとうございました。この文章に出てくるような行動や思考も昔は、普通だと思っていました。だから、結構疲れましたね。変だとわかってからは、自分でも少し笑っちゃいますね(笑)
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