ジョブ理論

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (書評と感想まとめ)

ジョブ理論を引き合いに出しながら、私がWebで成果を出すために使っている方法論の説明をしつつ、リスティング広告の運用者こそ、デジタル時代のマーケターの最初のキャリアとして活きるのではないか、という持論を述べていきたい所存。

「ジョブ理論」をすごく乱暴にまとめると

・顧客が求める必要十分な解決策とは、「ジョブを片づけること」
・ジョブとは、「特定の状況で人が成し遂げたい進歩」
・顧客の状況を把握して、ジョブを見つけると、イノベーションは起こせるよ

ってことが書いてある理解です。

どんな〝ジョブ(用事、仕事)〟を片づけたくて、あなたはそのプロダクトを〝雇用〟するのか?」
私たちが商品を買うということは基本的に、なんらかのジョブを片づけるために何かを「雇用」するということである。その商品がジョブをうまく片づけてくれたら、後日、同じジョブが発生したときに同じ商品を雇用するだろう。ジョブの片づけ方に不満があれば、その商品を「解雇」し、次回には別の何かを雇用するはずだ。
この理論が目指すのは、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片づける解決策とそれに付随する体験を構築することにある。

もっと詳しく知りたい方は

要約してあったり、わかりやすくまとめているブログ記事はすでにたくさんありますので、気になる方は参考にしてみてください。

超要約「ジョブ理論」 - Magic Hour Blog 
https://blog.indee-jp.com/413/

ジョブ理論とは | クリステンセン教授が提唱するビジネス用語解説・イノベーションとの関係 - 経営企画・マーケティング | ボクシルマガジン https://boxil.jp/mag/a3584/

ジョブ理論(Jobs-To-Be-Done)とは?顧客の本質的なニーズを定義する | Bizmap Media
 https://media.bizmap.tokyo/jtbd/about-jtbd/

ジョブ理論と私

ジョブ理論との出会いは2010年末。読んだのは「ジョブ理論」ではなく、「イノベーションへの解」でした。

ビービットのコンサルタントとして2年間、幾多のプロジェクトを通じて、ずっと考え続けて、自分なりのターゲティングのキモみたいなのがおぼろげに掴みはじめていて。それが、より具体的に言語化された形で書かれていてビックリした。

顧客が特定の「用事」を片づけるために製品を「雇う」、という考えに基づくこの手法を用いれば、顧客が現実に生活を送る様子を正確に映し出すような形で、市場を細分化することができる。

自分の考え続けて来たことがズレてなかった、という事への自己肯定感と、そのことを自分よりももっと考えて、理論として一定体系化している人がいたということ。あまりの衝撃に、神楽坂のジョナサンでビジネス本読みながら溢れてくる涙が止まらないという状況に陥り、客観的に見るとかなり変な人だ。

状況を徹底的に具体化することが、Webで成果を出すためのキモ

余談はさておき、ジョブ理論を知る前に、おぼろげに掴んでいたことを言語化すると、「状況を徹底的に具体化することが、Webで成果を出すためのすべてなんじゃないか」ということ。

で、当時意識していたのは、セグメンテーションを「状況」で切って分類して振り分けや優先度を決めた上でコミュニケーションを考える、ということ。

一般的に、マーケティングのセグメントは、「20代女性」みたいな消費者の属性に注目することが多かった。

↑(参考)セグメンテーションについて私が以前書いた記事(PR)

属性でセグメンテーションすると、相関は明らかにできるが、因果関係はわからない、と本書では言い切っている。

属性ベースの区分に基づく理論は、属性と結果の 相関関係 を明らかにすることはできる。だが、製品にどのような特長や機能を付加し、どのようにポジショニングすれば、顧客に 買わせる ことができるかを示すのは、状況ベースの分類化(細分化)手法に基づく、確かな因果関係を示すマーケティング理論だけなのだ。

属性は相関で状況は因果。なんてしびれる断言なのか。

特に、Webはユーザー中心の能動的なメディア(スマホがそこまで普及していなかった2010年時点では特に)なので、ユーザーは何らか目的意識を持って行動している。(自覚している場合もしていない場合もある)

言い換えれば、なんらかゴールを目指して走っているわけで、そのゴールに対するスタートになるのが、ユーザーが置かれている「状況」になる。

ジョブを定義するのに(その解決策を見つけるためにも)状況が不可欠なのは、なし遂げたい進歩の性質が状況に強く影響されるからだ。

状況というスタートとユーザーの目指すゴールが明確になれば、あとは、スタートからゴールに導くために、どういう働きかけをすればよいかが一気に考えやすくなる。

この種の状況でこの種の進歩を遂げようとする顧客にとって充分に役立つか?〟という問いなら、答えは簡単に得られる。顧客がなし遂げようとしている進歩の〝状況〟は、因果関係を理解するうえできわめて重要だ

状況がスタートで、進歩がゴール。

われわれはジョブを、〝ある特定の状況で人が遂げようとする進歩〟と定義する。重要なのは、顧客が なぜ その選択をしたのかを理解することにある。ゴールへ向かう動きを表すため、あえて「進歩」ということばを選択した。

厳密には動きを含むので、動的な「進歩」という言葉を選んでいるとのことだけど、ゴール、と言ってしまった方が、個人的には考えやすいと思っている。状況からゴールを考え出して、ゴールに導く方法を考えればよい。なんてシンプル。

ちなみに、スタートとゴールのパターンが複数あるようであれば、振り分けなどで分岐させ、個別に働きかけをするか、優先度をつけて割り切るか、という判断になる。それがセグメンテーションとターゲティングという話。

「ビジネスゴール」の方を変数と捉えて配置する

もちろん、ビジネス成果を出すためには、ビジネス上のゴールにユーザーを導く必要がある。

自分のゴール(ユーザーゴール)に向かって進むユーザーをなるべく幸せな形でビジネスゴールに導きたい。

そのためには、状況(スタート)と、ユーザーゴールを固定した上で、ビジネスゴールを調整しながら、うまく配置すること。

①:ビジネスゴールを分解した中間地点として「Web上のゴール」を設定する。(いわゆるコンバージョンポイントの設計

②A:ユーザーゴールに向かう道の途中に「Web上のゴール」を置く

②B:ユーザーゴールの先に「Web上のゴール」を置く
(ユーザーのゴール・ビジョンを引き上げる)

このパズルをセグメンテーションのパターン別に解いていく感じです。

ポイントは、「ユーザーの置かれている状況は変えられない」ので、そこを固定で考えると、変数が減って一気に解きやすい問題になるという点。

ジョブ理論での考え方も、非常に近くて、

ある人のジョブを完全に満たすには、ただプロダクトを生み出すだけでなく、ジョブのさまざまな面に対応する体験を創造し、さらにはそうした体験を一貫して構築できるように、企業のプロセスに統合する必要が出てくるからだ(プロセスの統合についてはあとの章で述べる)。これをうまくなし遂げれば、競合相手に真似されるおそれはほぼなくなる。

ジョブを満たす体験の中に、企業のプロセスを統合する、という考え方は、ユーザーゴールの途中か先にCV地点を設定する、というイメージに近い。

若干、抽象的に書いてますが、

ほとんど何を言ってるか伝わってないんじゃないかと思うけど、これが自分にとってのWebで成果を出すためのフレームワークになります。

ジョブは日々の生活のなかで発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である

状況を起点にすると、因果関係で捉えられる。因果関係であれば、論理的に考えられるので、天才じゃなくても努力次第でなんとかなる気がするし、解決策を説明されたときも多くの人に腹落ち感を持ってもらうことができる。

ちなみに、Webで成果を出す場合は、提供したい商品サービスは固定(制約条件)なので、中間ゴールを置くけど、ジョブ理論の場合は、さらに進んで、ビジネスゴール自体をユーザーゴール(解決したいジョブ)をより最適な形で達成できるような商品やサービスを開発すれば、イノベーションが起こせる、ということを言ってるという理解です。

まずそれぞれの企業は、片づけるべきジョブを、その複雑な様相も含めて理解する必要がある。次に、消費者がジョブを解決するために求める体験に照らして、自社が何を提供してどう適合させられるかを考察し、さらには進歩を阻む障害物を消費者が乗り越える手助けもしなければならない。ジョブを理解し、最良の解決策をもたらす者が、競争優位を手に入れられる。

もちろん、万能ではない。

体験ではなく、単純なコストや効率による比較になると、有効ではなくなる。

ジョブ理論は、消費者がさほど困っていなかったり、存在する解決策で充分間に合ったりするときには役に立たない。商品取引のように、ほぼすべてが数学的分析によって決定される場合にも有益でない。コストや効率は、ジョブ理論でいうジョブにとって中核をなす要素ではない。そのような状況では、進歩を遂げるための社会的、感情的、機能的側面をとり混ぜた複雑なニーズがない。あるのは合理的な意思決定で、コンピューターがあればたやすく解決できる。

実際には、コストや効率の比較になっている場合、比較軸をずらしにいくという手を打ちますが、それについてはまた別途。

とにかく、属性ではなく、状況にフォーカスすると、相関関係ではなく、因果関係になるので、ロジックで考えられるので、クリエイティブじゃなくても成果だせるよ、という話。

検索キーワードには状況が発露する

状況を軸でセグメンテーションを考えるのと相性がよいのが「検索」。

検索キーワードには状況が発露するので、検索キーワードを手がかりにするとユーザーの置かれた状況をかなり的確に想像することができる。

他のデジタル広告、ディスプレイやインフィード広告では、ユーザーの置かれている状況を類推するのはかなり難しく、属性に頼っていくしかない。マス広告も、受動的であり、場面はある程度コントロールできても、状況に当てることはなかなか難しい。

ゆえに、状況を想定・分類しやすい検索系の施策は、因果関係のロジックをしっかり詰めさえできれば、クリエイティブな発想のジャンプがなくとも、凡人でもしっかりと成果をだすことができるようになりやすい。

SEOはユーザーにフォーカスすればよいのでシンプル

ちなみに、このユーザーの状況にあわせて、ニーズに応える記事を書けばGoogleが上に上げてくれる、というのがSEOの私なりの考え方。

そういう意味ではSEOはユーザーにフォーカスすればよいので、シンプルだと言える。(シンプルが故に難しかったりもするんだけど。)

これを最初からCV(ビジネスゴール)を意識しながら記事を書いてしまうと、検索順位は上がらない。まずはユーザーのことだけ考えるのがポイント。

※SEOで上位するための考え方はこの記事にまとめましたので、参考にしてみてください。

リスティング広告はビジネスゴールと資源配分という変数が増える

リスティング広告の場合には、ビジネス側が費用負担する広告という特性上、効率的にユーザーをビジネスゴールに導くことが求められる。

そのため、SEOのようにシンプルにはいかない。

また、どのキーワードにいくらまで出すのか?どれくらい配分するのかという資源配分も考えないといけない。そのため、複数の変数の落とし所をどう設計していくのか、というトレーニングになる。

デジタルマーケティングのファーストキャリアにリスティング広告運用が最適だと思う理由

マーケティングのデジタル化による本質的な変化は、接点の変化・ターゲティングの精度向上とフィードバックのスピード、すなわち高速PDCAが可能になったこと。

その中で、ユーザーの状況が想像しやすい検索キーワードを軸に、ユーザーニーズ(ユーザーゴール)とビジネスゴールの折り合いをつけるシナリオを設計し、その複数のシナリオのボリュームや強さに応じて資源配分をしていいくというPDCAをまわせるリスティング運用者はデジタルマーケティングで成果を出すための経験を積みやすい職種。ゆえにファーストキャリアに最適だと思ってます。

まとめ

・ジョブ理論で提唱されている「状況ベースのセグメンテーション」や、「その状況におけるジョブ(進歩≒ユーザーゴール)」を特定するという考え方こそ、Webで成果を出すためのキモ(だと個人的には思っている。)

・とはいえ、一般的に広告でのタッチポイントにおける状況を特定(想定)し、分類するのは、ほとんど無理なので、結局、属性に頼るしかない。

・そんな中、検索キーワードを手がかりにすると、ユーザーの状況を特定(想定)し、分類しやすい。

・さらに、リスティング広告では、ユーザーの置かれた状況におけるジョブ(ゴール)を軸にしながらビジネスゴールに導くシナリオを設計し、その妥当性を検証しながら、さらに複数のシナリオ間の資源配分を最適化していく。すべてロジックで詰められるので、理解しやすい。またデジタルマーケティングがもたらした武器である、ターゲティングの細分化とフィードバックの高速化を駆使して成果を出す、という技術を最短で身につけることができる。

・なので、デジタルマーケティングやるなら、リスティング広告運用からやるのがおすすめ。


(最後に)このnoteについて


その週に気づいたことや読んだ本などをまとめていく週報note。
毎週書く!という強制力で文章を書くリハビリを進めていくのが目的。

※今回は、1月28日~2月2日


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