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001 カクテルパーティー効果

「のぉJK、カクテルパーティー効果って知っちょるか?」
「知らないわ、なによそれ?」
「多少うるさくとも自分の話は耳に入って来るっていうアレじゃ。騒がしい状況で自分の名前は頭に飛び込んでくる感覚、お主も経験したことあるじゃろ?」
「あぁ、それをカクテルパーティー効果って言うんだ。確かにあるわね。逆に名前を呼ばれた気がするけど、誰も呼んでなかったみたいなこともあるわ」
「うむ、情報は重要じゃから自分に関することには自動的にアンテナが向いているんじゃよ」
「確かに音の情報処理が巧みな人って賢く見えるわよね。頭良さそう。聖徳太子は10人の家臣の言葉をそれぞれ聞き分けたっていう話とか有能エピじゃん」
「確かにその話は有名じゃし、本当にそんなこと出来たらさぞかし頭の回転が速かったんじゃろうが、あれは後世の時代の人間による作り話という説が有力なんじゃよ」
「マジ!?」
「大マジじゃ!超人エピソードは細部が異なるものがいくつかあるが、大体は聖徳太子は幼い頃から賢くて、複数人の話をいっぺんに聞き、的確に答えることができた。その超人的な力を讃えて豊聡耳皇子と呼ばれたと言うものじゃ」
「名前がつくほど耳が良かったんだね」
「いやいやだから、これがデマなんじゃよ。逆なんじゃ、順番が」
「逆?どういうことよ?」
「耳が良いから耳の名が付いたのではない、耳の名が付いたから耳が良いという伝説ができたんじゃ」
「……?」
「当時、ミミというのは男性の敬称で耳や美美という字が使われとったそうじゃ。聖徳太子の名も例外ではない。ただの敬称でつけられた名前なんじゃが後世の人間は豊聡耳皇子という名前を聞いて、さぞ豊かで聡明な耳を持つ皇子じゃったんじゃなと解釈したんじゃよ」
「確かに名前が先の方が合理的で現実的ね。でもなんかちょっと残念」
「まあそれほどまでに聖徳太子が臣民に耳を傾ける優れた為政者じゃったことは確かなんじゃろうよ。現代でも耳がいいと格好がつくのも確かじゃ」
「そう言われるとバンドの音楽を聴いて『ベースが良かった』っていうと、なんか通っぽいよね」
「確かにそれはあるな。一般的にフィーチャーされるのはボーカルじゃから逆張り的なもんじゃろか」
「音楽に理解がある人のふりをして『ベースが良い』って言ったことある人は若干数いると思うわ」
「じゃなじゃな()」
「悪酔いしなきゃいいけどね……」

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『イリーとJK』 001 カクテルパーティー効果

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