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土用干し

8月7日 最高気温33℃ 最低気温24℃

今日も朝から夏空が広がっている。が、昨日あたりから朝晩に吹く風がスーッと涼しくなってきた。これだけ暑さが続いているからホッとする半面、わずかながらでも移ろう季節にどこか寂しさも感じてしまう。明日から暦は立秋で、自然に沿った流れといえばそうなのだけれど。

昨年と違い、今年は夏の土用(2023年は7/30~8/7)に入ってから晴れの日が続いていたので、絶好の梅干しの土用干し日和。ただ、ここのところのゲリラ豪雨のことを考えると、終日家にいることも少ないし、朝に晴れていたとしても、突然の豪雨で万が一雨ざらしになってしまったらと想像すると、干したまま出かける勇気もない。天気に翻弄されながら昔ながらの3日3晩というわけにはいかず、出勤するまでの朝のほんの数時間だけ干したら取り込んで、ということを数日続けている。
土用の前半にはまず昨年漬けた梅干しの仕上げ。二年サイクルで仕上げるこの方法は、友人でもあり、私の食の先生でもあるアッコちゃんが教えてくれたもの。我が家の庭で育てている赤紫蘇は土用干し前にはまだ育ち切らず、土用明け頃が収穫時。となると紫蘇漬けのタイミングがずれてしまい、どうしたものかと長年抱えていた疑問が、アッコちゃんによってスッキリと解明されたのだ。
お陰で慌てることなく、紫蘇漬けが好きなのにそれをがまんして作ることもせずにこれまで「こうあらねば」と縛られていた何かからも解放されてますます梅づくりが好きになっている。仕上げの土用干しも終えてやわらかく出来上がった昨年仕込みの梅干しは、もちろん酸っぱいのだけれど、よく言われる塩の角も取れて、味までやわらかさが出てきたような気がする。そして昨年の仕上げを終えると、お次は同じ今年の梅干しの出番。まずは白干しの状態で土用干し。1日干して裏返し。返すついでにひと粒ずつやわらかくコリをほぐすように揉んでいる。強い陽射しに照らされた梅は、ほのあたたかくふんわりとしていて、その手ざわりが気持ちがいい。次第に塩分が乾いて表面が粉を吹いたように白っぽくなり、それも一晩を越すと今度は夜露のような水分がキラキラと梅を包み込み、なんとも言えない美しい姿を見せてくれるのだ。光をまとった梅の姿が見れるのは一瞬のことで、その後は再び梅酢の中へ。追い作業で赤紫蘇を仕込み、再会するのはまた来年のこの季節。
一年に一度の梅仕事。それが二年でひと巡りと考えると、気持ちがゆるやかになっていく。駆け足で過ぎ去っていく季節に寂しさや焦りを感じたら、甕の中でゆっくりゆっくり熟成されて、静かにそのときを待つ梅干しのことを思いながら、今年仕上がった梅干しをおまじないのように口の中へポンとひと粒。口をすぼめるほどの酸っぱさと美味しさが、どこかへと吹き飛ばしてくれる。