休園日、スタチューになる

休園日。

昨日とは打って変わって静かな時間が流れる。
人も動物も、少し気をゆるめて過ごす日。

ちょっと前までは毎日この静かな動物園だった。
賑やかな動物園が戻って来たことは嬉しいが、たまの休園にほっとしたりもする。

さて、今日は、2度目の登場、プレーリードッグのお話。

普段はお客さんが居てなかなかゆっくりみられないので休園日は長めに観察する。

実はこの「観察する」がとても難しい。
プレーリードッグたち、基本的に飼育員を警戒しているのだ。お客様は大丈夫だったりするのだが、飼育員はダメである。
どこで飼育員とバレるかと言うと制服の青色だ。青いユニフォームのやつはおれたちの住処に入ってくるやつだ!と認識しているようで、飼育員が展示場に近づくと警戒して穴に入ってしまうのである。

驚かさないようにゆっくりと展示場に近づくが、誰もいない休園日は見やすい代わりに目立つわけで。すぐに気づかれてしまう。
しかも1頭が気づくと他の個体に合図を出して、敵が来たぞ!と告げているようなのだ。
キュ!と高い声で鳴いてみんなが警戒態勢に入る。
その後しばらく私がじっとしていると自分達のところに入ってこないと分かって各々餌を食べたりする。
プレーリードッグが少し落ち着いたその間に観察をしている。
しかし。ここからが大変である。少しでも動くとまたキュ!が始まるのである。警戒態勢に入るだけならいいが中にはびっくりして穴に帰ってしまう個体もいる。こうなってしまうとなかなか落ち着いて観察できないのである。

首を動かしてもキュ!
体重を移動させてもキュ!
指先を少し動かすだけでも誰かしら気づいてキュ!
汗ひとつふけない。

体をいかに動かさないように目だけ動かして観察するか。首を動かさないと見えない所にいる個体は、ゆーーーっくりと、まるで動いてないかのようにゆーーーっくりと首を回す。それでも少しでもブレたりするとキュ!と言われてしまう。
そこで思った。これは、まるでスタチューでは無いか。しかもかなり緊張感のある。
無数の目に見張られながら自分は飼育員ではない、動かない銅像ですという気持ちで体を固める。
飼育員スタチューとしてデビューできる日もそう遠くないかもしれない。←
本当に銅像になりきれたらプレーリードッグ達にチェックしてもらおう。きっとすぐにキュ!と喝を入れてくれることだろう。

普段はお客さんに混じってバレないようにサラッと観察している。休園日はプレーリードッグたちをゆっくり観察するチャンスである。
動物の管理のために今日も私はスタチューになる。来週はキュ!が減りますように。

今日はスタチューになった日。

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