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子どもにとって多数決は民主主義か?

多数決ならみんな納得するに決まってる?

幼児とグループ活動をしていると、多数の選択肢の中からひとつに選択する必要に迫られる場面が多々あります。
例えば、「冒険」をテーマにしたときに、森の中を進むと分かれ道に遭遇します。子ども達は、まっすぐ進むのか?右か?左か?登りか?下りか?みんなでどこに進むのか選択しなくてはなりません(先生や保護者が多い場合はチームを分けて進むという考え方ももちろんあります)。

選択肢が生まれると、子ども達はどの道に進むべきかの話し合いが始まります。活動時間が限られていると、見守っている先生や保護者は様々な思いと共に焦りが生じます。活動後に先生方の中でどんな思考が起きたかを聞くと、次のような事が湧き起こっているそうです。

  • どの子ども達の意見も聞いてあげたい。

  • なるべく平和的に合意形成をしたい。

  • 限られた活動時間を有効に使いたい。

  • みんなが満足する決定方法を探したい。

この思考はごくごく自然ですし、子ども達のことを思えばこそ出てくる思考です。ただ、なぜかこの時に大人の中から出てくる選択肢のほとんどが多数決になってしまいます。そして、一日の活動の中で一度でも多数決で結果を出すと、その日の合意形成の方法のほとんどが多数決で物事を進めていくことになってしまいがちです。

多数決が生み出すもの

多数決は全員の選択を集め、一番多数の選択を選び決定します。多数決はある種の力が生まれて、多数に決まるという流れは確実に結果を生み出してくれます。でも、幼児はこの過程と結果に納得しているのでしょうか?
多数決をしていると、子ども達からは次のような反応が出てきます。

  • 「でも○○○○…」「どうして△△△△なの…」と決定事項を後から覆したくなってしまう。

  •   「どの選択肢も選びたくない」と、テーブルに並んだ選択肢から選びたくないという意見が出る。

  • 「どうして意見を聞いてもらえないの?」という、少数派の思いが湧き出てくる、または決まった事への反発からくる声が出る。

  •    多数決の流れにまったく無反応な子どもが出てくる。

  • 「多数決自体をやりたくない」という意見が出る。

多数決が持つ力は進むべき方向は決定してくれるものの、幼児の中に自我が生まれてきている時期においては決定事項に納得がいっていない子ども達が多数いることを感じます。つまり、子ども達の中から方向性の他に、何か違う感情も生まれてきているわけです。

多数決が生み出すネガティブ

多数決は、瞬時に多くの意見からひとつの選択をするためには有効な方法でもあります。だから会社の会議や選挙など大人の世界でも多用されるわけですが、ネガティブな部分もあります。
そのひとつに、まだ経験や知識がなく、自我が生まれてきている幼児にとっては有効ではない場合があるということです。「そもそも多数決は合意形成に向いているのか?」という部分はひとまず置いておき、幼児における僕が感じるネガティブは次の通りです。

  • 何の議題で自分が今選択を求められているのかをまだ理解していないのに何かが決まってしまう。

  • 自分の思い(選択)がまとまる前に事が進んでしまうので、AまたはBにひとまず流されてしまう。

  • どうしてAやBを選択しているのかの理由を聞いてもらえないので、一方的決まった事に感じてしまう。

  • 何が起きているのか理解できていない場合がある。

  • 一方的に決まる感じがするので、多数決で選択されたAまたはBなどに納得できていない。

  • そもそも選択肢以外の選択をしたい場合の考えを聞き取ってもらえない。

もちろん決まったことに従い、それを楽しむ事ができる力は必要ですし、思い通りにならなかった時に自分の中で折り合いをつけることも必要です。でも、まずは丁寧に子どもの思いを拾っていくことも大切な事だと思います。

何を大切にして、どんな選択方法を選ぶか?

子どもがどの段階にいて、さらに今目の前にいる子ども達にとって何を学び、感じ,できるようになることが大切なのかを考える必要があります。そうでないと、多数決が子ども達によっては民主主義的な決断ではなくなってしまうからです。

もちろん、多数決が"悪"というわけではありません。しっかりと話し合いの時間をとって決定するのか?じゃんけんで決定するのか?ルーレットで決めるのか?合意形成の方法はたくさんあります。今、目の前の子ども達にとって、環境、時間、成長のステップを考えた時にベストな合意形成の方法は何か?それを考えてから進行するのが大切だと僕は思います。

ぜひ子ども達の成長にとって最良の穂法を選択してあげてください。遊びのヒントや様々な事例はこちらにたくさん書かせていただきました。



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