演劇界を震撼させた 広瀬すず
広瀬すずの登場が、演劇界を一変させるかもしれない。
野田秀樹作・演出の『Q』は、近年の野田作品のなかでも、集大成というべき舞台だった。日本の現代演劇を代表する野田の舞台は、近年、キャストの固定化があきらかにあった。
たとえば『贋作・桜の森の満開の下』は、まるで現代演劇のオリンピックとでもいうべきオールスターキャストだったが、片方で、新人の発掘という面では、物足りなさがあった。
こうした流れのなかで、広瀬すずは、野田に抜擢された。しかも、松たか子の分身という困難な役だった。
もちろん、広瀬すずは、新人ではない。
すでに映像の世界では、実力もよく知られている。けれど、『Q』は、広瀬すずにとって、まぎれもなく初舞台である。
松たか子、上川隆也、竹中直人、橋本さとし、小松和重、伊勢佳世 羽野晶紀と名前を書き連ねるだけでも、芝居巧者揃いだとわかる。
そのなかに入っての初舞台とは、どれほどのプレッシャーだろうか。
私の観た広瀬すずは、こうした重圧を全くみせなかった。
ゲネプロを含めて、複数回の舞台を観たが、回が進むうちに、広瀬の芝居は攻撃的になっていった。
惰性や疲労とは無縁だった。
たとえば、第一幕の終わり、目を覚ました源の愁里愛(広瀬)は、毒を飲んで横たわっている瑯壬生(志尊淳)を傍らに見いだす。電光掲示板のカウントダウンが行われる中、広瀬は、切々たる長台詞を語る。
ここから先は
627字
¥ 100
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。