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私が演劇評論家になった理由。

 なぜ、演劇の評論を書くようになったのですかと聞かれることがあります。

 中学三年生の夏だったと思います。東京には古本屋街として有名な神保町があります。出版社や印刷所もこのエリアに集まっています。なにか参考書を探しに行ったのだと思いますが、ふっとあるビルディングを見上げたときに、私はこの会社で編集者になる。そして、演劇評論家になるのだと、インスピレーションが下りてきたのです。

 もちろん、子どものころから本が好きでした。

 両親も理解がありましたから、近所の本屋で私は文庫本ならば何を買ってよいと言われていました。その代金は、まとめて父親に請求がくるのです。岩波文庫や新潮文庫が私のお気に入りで、夏休みは毎日、一冊読んでいきました。それほどの本好きだったのです。

 演劇についても同様です。父親に連れられて毎週、寄席に行っていました。今はもうない人形町の末廣です。歌舞伎は切符代が高額ですから、毎月ではありませんが、よく連れて行ってくれました。

 自分ではじめて演劇を観に行ったのは、唐十郎の作品で『蛇姫様』という作品です。私が現在、勤務している大学の近くに、不忍池があります。そのほとりにある水上音楽堂の公演でした。池を通る旅に、偶然を感じます。また、必然のようなものも感じます。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。