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菊之助が造形する光秀の像はいかに。

 三月の国立劇場は、『時今也桔梗旗揚』で、四世南北の「明智光秀」を見せる。
 昨年の三月は、菊之助が『義経千本桜』の三役、忠信、知盛、権太を演じる予定だった。コロナ渦のために急遽、中止となり、いち早く無観客配信されたのは記憶に新しい。
 今年は、この『義経千本桜』に再挑戦するのかと思っていたが、『時今也桔梗旗揚』とは意表を突かれた。
 近年の上演では、「馬盥」が中心となる。菊之助の演じる武智光秀が、馬を洗う盥で酒を呑まされ、過去の恥辱を明かされる。この春永(織田信長)の横暴に耐えるが、ついに復讐のために立ち上がる経緯を描いている。

 初代吉右衛門は、九代目團十郎の型を受け継いでいる。はじめから謀反の意志を持った革命的な人物として演じるのが、この系統だとされている。一方、七世團蔵は、春永に苛め抜かれた末に、憎しみが増幅していき、謀反を決意する。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。