菊之助は「敵役」を演じきるか? 2

尾上菊之助は、敵役とは無縁だと思ってきた。もっとも、歌舞伎は、敵役を大切な役柄としている。たとえば『伽羅先代萩』の仁木弾正は、「国崩し」と呼ばれる敵役である。主家ののっとりをもくろむ大悪人だけれど、立役を中心にする歌舞伎役者は、いずれは仁木(にっき)を演じたいと考える。

『グランメゾン東京』で、菊之助が演じる丹後学は、第六話まで観たところ、どうも仁木ではないらしい。むしろ木村拓哉が演じる尾花のほうが、過去にアレルギーのトラブルで料理界を追われ、ニヒルで影のある役に思える。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。