アサヒカメラ

篠山紀信が撮った野田秀樹の「Q」。あくまで、広瀬すずらのポートレートとして優れている。

 雑誌の「アサヒカメラ」が、篠山紀信が取った野田秀樹の『Q』を巻頭に掲げている。

 表紙は、広瀬すずである。

 写真雑誌がひとつの舞台についての連作を掲載するのは異例だろう。
 もちろん篠山紀信の存在があっての特集である。

 よく構成されたページを見るうちに、気がついたことをいくつか書き留めておく。

 今回に限らず、舞台の現場で篠山さんと同席することが多い。これは、篠山さんと私が同じような好みを持っているからか、それとも篠山さんが撮る現場が多いからか。どちらかはわからない。

 撮影現場はさまざまで、稽古場もあれば、ゲネプロもある。
 近年、感動的に思えるのは、篠山さんにはアシスタントが多数いるにもかかわらず、舞台を撮るときは、カメラボディをふたつ下げて、たったひとりでエネルギッシュに動き回っていることだ。

 篠山さんが身体を張っているからこそ、同じように舞台で俊寛を生きる役者たちは共感する。
 どの瞬間を撮られてもかまわないと覚悟する。こうした被写体との関係を創り出すのは、写真家としての名声ではない。一枚一枚の信用である。

 今回、掲載された写真を見ると、スタジオと稽古場とゲネが順番に構成されている。ゲネは衣装付で、しかも役者は本息である。

 ここに写っているのは、舞台写真ではなかった。
 俳優のポートレイトが主軸である。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。