「尾上菊之助の歌舞伎舞踊入門」が、明日から配信される。
尾上菊之助さんは、現在、歌舞伎舞踊の頂点に立つ一人ですが、国立劇場が独自に収録した『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』が配信されることになりました。「尾上菊之助の歌舞伎舞踊入門」芝居が休みの月に、渾身の力をもって、後世に残すべく制作された映像です。
収録は、それぞれ昨年の八月四日と二十日に、国立劇場大劇場で行われました。
収録の日には、私も劇場で拝見しましたが、藤間勘祖さんの立ち会いのもと、ぴりぴりとした空気で、舞台は張り詰めていました。
『春興鏡獅子』は、小姓弥生の美しさと恥じらいがあふれて、やがて勇壮な獅子の精へと世界が広がっていきます。女方と立役のいずれも兼ル、菊之助さん独自の世界が生まれたと感じました。
『京鹿子娘道成寺』は、玉三郎さんと何度も『京鹿子娘二人道成寺』として舞台を重ねて着ましたが、近年は、ひとりで踊る機会が多く、突出した技術の上に、白拍子花子の長年の恨みがあぶりだされてきました。道成寺伝説を踏まえて、単に江戸のバラエティショーではなく、恨みが全体を貫いていました。
七月初旬に刊行予定の『菊之助の冒険』(岩波書店)にも、このふたつの演目について、かなり突っ込んだ話が収録されています。踊りの性根を説き起こし、振りの細部まで意味を考える姿勢が、菊之助さんの舞踊を支えているのだとよくわかりました。この本には、舞踊の章があり、『春興鏡獅子』『京鹿子娘道成寺』『六歌仙容彩』をそれぞれ詳細に語っています。
今回の配信についてのトレーラーは、以下のリンクで観ることが出来ます。
期間限定の配信で、何度でも繰り返し観ることができるとのことです。三月二十五日開始、三十一日までです。https://www.ntj.jac.go.jp/kabuki/news/246.html
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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。