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小曽根さんと神野さんが、リビングから劇場に帰ってきた。

 毎日というわけではないけれども、小曽根真のリビングルームからの中継を聞いていた。

 今日はまさかのBunkamuraからの中継で、客席のスタッフには、知った顔をも見え、うれしくなった。

 劇場が閉鎖されている中で、小曽根さんと神野さんがはじめた試みは、ともかく毎日やるところで、恐るべき精神力だった。
 人間だから、いや一流のアーティストだからこそ、今日はやりたくない日もあっただろうと思う。
 ただ、ジャズミュージシャンの若き日は、クラブでの演奏が連続しているし、観客の好みを敏感に察知して応えるだけの能力が必須である。 
 ジャズミュージシャンだからこそできることがあり、今回のシリーズは、医療関係者はもちろん、本当に多くの人々を勇気づけてくれた。感謝するばかり。ありがとうございました。

 今日のライブは、劇場を愛する気持ちがあふれていた。会場はBunkamuraのオーチャードホールだったけれど、神野美鈴さんが、階下にあるコクーンに住みたいとおっしゃっていたのが印象的だった。

 私たちには仕事場があり、家がある。

 ステイホームが続いたために、仕事場と家がひとつらなりになった方々も多いだろうと思う。

 家が仕事場になり、そこから世界へと発信する。
そんな新しい生き方を称揚する動きもある。

 ただ、ライブを生きる糧とする劇場人は、天からの食事、マナを食べるための場所として、劇場空間を必要としている。そのことが、逆説的だけれども、小曽根さん、神野さんの試みでよくわかった。

 そうでなければ、リビングルームからの中継で、今回のシリーズを終えていただろう。
 劇場に帰りたい。
 観客とじかに対面したい思いが、今回の特別な放映を導き出したのだろうと思う。

年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。