【劇評324】三谷幸喜の技が冴えるエンターテインメント『オデッサ』。
三谷幸喜は「東京サンシャインボーイズ」を率いる劇作家として出発した。新宿東口、紀伊國屋書店にほど近いシアター・トップスを拠点としていた頃のことが忘れられない。
あれから、ずいぶん長い時が経過して、三谷幸喜は大河ドラマの脚本家、映画の監督としての声望を獲得した。
今回、三谷が登場人物が三人だけの台詞劇を書くと聞いて驚いた。代表作のひとつに、1996年には二人芝居として上演された『笑の大学』があるが、その流れをくむ新作が期待されたのである。
期待は裏切られなかった。『オデッサ』(作・演出三谷幸喜)では、三人の俳優とともに、舞台前面にしつらえられた字幕が四人目の演技者として舞台を席巻する。
また、標準語と鹿児島弁と英語が登場人物によって語られ、背後には字幕があり舞台上で錯綜する。このだれも思いつかなかったアイデアによって、人間にとって、母語とは何か。人間と人間が親しくなるためには、言葉がどれほどの役割を果たしているのかを問う作品となった。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。