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【劇評256】仁左衛門、玉三郎の名品『ぢいさんばあさん』を読む。

 宇野信夫は、六代目菊五郎に数々の名作をもたらした劇作家として知られる。
 この『ぢいさんばあさん』は、昭和二六年七月、東西同時期に初演された。二世猿之助の伊織、三世時蔵のるんは、歌舞伎座。また、大阪歌舞伎座で十三世仁左衛門の伊織、二世鴈治郎のるんの配役である。猿之助と時蔵は六十代半ば、仁左衛門と鴈治郎は四十代後半である。

 森鴎外の原作によると、後半、ふたりが三七年の間を置いて再会し、江戸の麻布竜土町で暮らすようになったのは、伊織七二歳、るん七一歳とされているから、初演のときの配役を考えると役者の実年齢とは、ずいぶん年齢的に隔たりがある。

 なぜ、こんな話をはじめたかというと、私がこの仁左衛門、玉三郎による『ぢいさんばあさん』を初めて見たのは、平成二二年二月の歌舞伎座のことで、このときのふたりは、実に瑞瑞しい若夫婦と、お互いをいたわり合う老夫婦を演じて見せたのだった。
 役者の実年齢によって、この若い時代と老いてからの時代との距離が変わる。今回の上演では、老いることの美しさ、愛おしさが強く打ち出される舞台となった。

 それにしても、なんと宇野信夫の劇作は、巧みなことか。
 起こってしまった事件が、偶然ではなく、必然であるかのように見えてくる。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。