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八月歌舞伎座。四部制の意味を考える。

 歌舞伎座から案内が来て、実際、紙としてのチラシを受け取ってみると、感無量でした。
 いよいよ始まる。
 四部制との変則的なかたちだが、
 納涼歌舞伎が三部制で行われたときも抵抗はあったのだから、格別、気にする必要はないのかもしれない。
 むしろ、狂言、ひとつひとつに価値が付けられるやり方は、當世ではある。
 さらに、この考えを推し進めれば、演目や顔ぶれによって、一本の値段が違うこともありえるのだろう。

 この興行を見て「一幕見で八千円か」と看破した友人がいたが、これまでも一幕見は、その実質というか長さというか、いずれにしても価格差があった。
 四部制がこれからも、月によっては、続いていくようであれば、そんなこともありえるのかもしれない。

  周知のことではあるけれども、ブロードウェイの興行も、切符は定価ではなく、プレミアで変動する。
 ホテルは二十年以上前から同様だったから、資本主義が極端に進めば、価格変動制が導入されていくのだろう。東宝ミュージカルが、これまでそんなシステムを検討しなかったわけはない。

 こうしたシステムが次第に歌舞伎に浸透するとすれば、大立者と若手花形の価値をどう判別するかという問題に突き当たる。
 これまで、昼夜二部制が維持されてきた理由のひとつには、こうした大きな問題があったと思われる。
 伝統藝能は、藝の成熟と時分の花が一致しない。
 ならば、網羅した演目をミドリで見物にご覧頂く。初心のかたも、長年かよった方も、すべてを包容していただきたい。そんな理念で成り立っていたのだろうと思う。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。