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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2022年6月の記事一覧

【劇評262】染五郎の美貌と憂い。『信康』

【劇評262】染五郎の美貌と憂い。『信康』

 高麗屋にとって掌中の珠というべき染五郎が、いよいよ打って出た。17歳。襲名でもないのに、歌舞伎座の芯に立つ。

 六月大歌舞伎第二部の話題は、染五郎による『信康』(田中喜三作 斉藤雅文演出)である。昭和四十九年に初演されたこの作品は、上演例が少ない。
 僅かに一度、平成八年九月の歌舞伎座で、海老蔵(当時、新之助)の信康、十二代目團十郎の家康で歌舞伎座の舞台に乗ったのが唯一である。
 この例を見て

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