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仁左衛門と玉三郎の永遠。

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歌舞伎を長年のあいだ支えてきた片岡仁左衛門と坂東玉三郎の舞台を集めたマガジンです。ふたりが競演した『桜姫東文章』はじめ、近年の作品について書いた劇評を網羅しています。永遠の二枚目…
仁左衛門と玉三郎の舞台を、永遠に見たい。そんな気持でマガジンを作りました。
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2021年3月の記事一覧

【劇評211】菊五郎と仁左衛門が、切り札を揃えた歌舞伎座第二部。

 歌舞伎は古典を中心とするレパトリーシアターである。  したがって、俳優には当たり狂言、当り役があり、この人がこの演目を出すならば間違いないと、観客は予想のもとに劇場に出かける。  大立者は、自家薬籠中の狂言がいつでも出せる状態でなければならぬ。令和三年になってからの歌舞伎座は、こうした大立者の切り札を次々と切ってきた。  三月大歌舞伎の第二部はその好例である。  『一谷嫩軍記』の「熊谷陣屋」は上演頻度も高く、名演も多い。そのなかで仁左衛門の「陣屋」は、自在さによって際立

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【劇評213】第三部Aプロ。玉三郎の『隅田川』。これは夢かあさましや

 役者が積み上げてきた技藝と伝承は、どんな関係にあるのか。  歌舞伎座第三部Aプロを観て、そんな疑問が浮かんだ。まずは吉右衛門、幸四郎の『楼門五三桐』である。 石川五右衛門という世紀の盗賊のイメージを極端に拡大した演目である。南禅寺に楼門に陣取り、天下を見下ろしている。その気宇壮大さがテーマの演目である。  吉右衛門は時代物での大きさを見せる英雄役者である。国崩し、辛抱立役の第一人者であるが、こうした役者の大きさを見せる芝居でも無類の大きさで舞台を圧する。 この大きさ

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【劇評214】玉三郎の後に玉三郎はいない。歌舞伎座Bプロ。『雪』と『鐘ヶ岬』の藝境。

 歌舞伎座第三部、偶数日、奇数日という演目変更ではなく、玉三郎がふたつのプログラムを出して、みずからが構築した舞踊の総決算を行っている。  Aプロの『隅田川』が、六代目歌右衛門に対する返歌であるとすれば、Bプロの上『雪』は、故武原はんに向けての献花に相当する世に思った。  玉三郎は、文学座の杉村春子の当り役を継承する試みを長年にわたって行ってきた。地唄舞の『雪』をはじめて手がけたのは平成十二年の九月、ル・テアトル銀座での公演である。武原はんは、平成十年に亡くなっているから

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