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何度も読みたい。7月に記憶に残った10記事(と書いた5記事)

7月に読んで「記憶に残った。何度でも読み返したい」そんな記事を10本まとめました。どれもおすすめなので、まだご覧になっていない記事があれば、ぜひ読んでみてください。

また、最後に自分が今月書いた記事と後記も紹介しています。こちらもよろしければ。

レシピは積極的に晒しましょう 今すぐ全世界に晒しましょう

ノウハウは人に教えたくない気持ちはよくわかる。会社にいたとき、年長者になるとその傾向がありがちで、社内でさえアウトプットを嫌がることもあった。

情報の価値というのは、相対的に下がっています。それが重大な価値を持っていた時代は確かにありました。それこそ一子相伝の技術が家を成り立たせていた時代があったことは知っています。

そうなると人は「いや俺のノウハウはまだ価値がある」と憤ったり「俺の20年はなんだったのか」と悲嘆に暮れたりする。しかしレシピを公開することは、レシピそのものの価値が下がっていたとしても、再発見やアップデートにつながる。

“あなたが大切だと思っているものは、きっと100年後には死んでいる情報”

また、いまは価値があるレシピでも数年後には分からない。公開することで、再現できる人とは同志になり、できない人は顧客になるのかと思う。公開した方が、自分にもステークホルダーにも末長く価値をもたらす。

【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書

定義から実例まで精緻に解説されていて、実践的でありながら普遍的な内容で、とても話題になった記事。

僕は冗談っぽく、大事なことはWHO(フー)を理解することではなく、"不(フ)”を理解することだと言っています。不とは、不経済・不便・不都合・不満・不安、など人が解消したいと感じる課題のことです。(ちなみに、"不"とはリクルートに関する本を読んで知ったコンセプトで、気に入って使わせてもらっています) "不"の解消こそが事業の本質であり、そのために顧客は喜んでお金を払います。英語と日本語のニュアンスの違いは多少あるかもしれませんが、"不"="Job"と考えて構いません。

ペインやジョブとも表現されるものに近いが、「不」という表現はより自分に近いものとして受け取ることができた。

戦略ーWHOーWHATーHOWと超基本的かつ普遍的な思考の流れを、なるだけわかりやすく書いてきたつもりです。

ロジカルでありながらも、泥臭く、それでいてセクシー。かなりボリュームがあり要素も多く「読んだ→真似した→成功した」というありがちな必勝法シナリオとも一線を画している。

だから、すぐ真似できたり、成功につながったり、ということはないと思うのだが、じっくりと何度でも読み返し、トライを繰り返すことで習熟されていくのだろう。定期的に読み返す必要のある、まさに教科書。

意外と知らない? UXライティングとコンテンツ戦略の密接な関係

これは熟読したい…UXライティングの視座を高めてくれる記事。

"『良い感じのエラーメッセージを書く』だけだと部分最適化に過ぎません。ひとつひとつ直しているだけだと負債の要因になりますし、工程・運用まで踏み込まなければ、組織全体で改善していこうという動きになかなかなりません"

UXライティングには個人的にも注目しているし、同じように注目度が高まっているのを感じる。Slackや動物の森のように事例を解説される記事も増えてきた。

しかし、一方で「UXライティングとはなんなのか?」という議論については、いまいち腹落ちしたものがなかった。そもそも「UX」でさえ議論の真っ最中である。

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記事内で紹介されていた、この相関図がとても腹落ちだった。職域としてアプローチ可能な部分は、末端に近いのかもしれないが、職能として「プロダクトや戦略の理解力が必要とされる」。

だからUXライティングが今後浸透していくのか、それともバズワードとして終わるのかは、この職域定義そのものの言語化と「プロダクトや戦略の理解力が実現した事例」なのではないかと思う。

「プロダクトや戦略の理解力」は自分の強みでもあるので、できる範囲から取り組んでみたい。

人に向き合う - 組織崩壊から上場まで、グッドパッチでの3年間

グッドパッチの上場を支えた「経営企画室長 兼 事業開発室長」のPenpenさんの3年間のヒストリー。ぞくぞくする胸熱な内容。これからも何度も読み返すと思う。

"社長は未来のことを考える時間を確保し、旗を立てる存在であるべきだと思います"

組織崩壊時に「人手が足りない」「まるで映画のようにスター人材が会社を救ってくれるかも」そう感じるのは自然なのに「カタログスペック」で判断しないことが凄い…。

"カタログスペックで採用を決めてしまう部分があると思います。しかし足元が固まっていないフェーズで本当に必要なのは、たとえトラブルの処理とかケンカの仲裁に追われる日が続いたとしても、いつか長い夜が明けることを信じて戦い続けてくれる人"

私自身も組織崩壊を経験した。「どうすれば回避できたのか?あるいは立て直せたのか」をずっと考えている。採用の部分とも重なるが「リソース不足による組織崩壊はリカバリーできるが、カルチャー崩壊はリカバリーできない」というのが、いまのところの仮説だ。

この一節が特に熱い…。

"個人の行動の積み重ねはやがて習慣となり、それが個人レベルから組織レベルに昇華されたときに文化を形づくっていきます。文化を作る第一歩は個々の意識や行動への働きかけから。実際に行動が発生することが重要で、理解しているだけでは不十分です"

BtoBの購買活動は本当に論理的・合理的か?

BtoBサイト制作会社で有名なベイジの扮谷さんの記事。BtoBにおける情緒性の重要性と具体的な施策例について。

BtoBは情緒購買ではなく論理購買である。BtoBは経済合理性にもとづいて意思決定される。これらはいずれもBtoBでよく言われる「定説」ですが、この記事ではそんな定説に疑問を投げかけてみたいと思います。

BtoBであっても、意思決定をしているのは結局人間だ。最近『予想通りに不合理』という行動経済学の本を読んだが、まったく人間の行動は合理性とは程遠い。倫理性が左右するテストの前に「十戒」を思い出させるだけで点数が大きく変わるくらいだ。

しかし、情緒訴求とはなんなのか?という次の疑問が浮かんでくるが、その対応策まで挙げてくれている。ロゴやサイトがカッコいいというのは情緒訴求にならない。

“情緒性とは、信頼感や安心感といった類のものです。この信頼感や安心感を抱かれる可能性を高めることが、BtoBにおける情緒的判断の対応策になりえます”

「競合はファンド」。運用型広告コンサル会社アナグラムが圧倒的な存在である理由とは。代表阿部氏インタビュー

広告運用会社で知られるアナグラム の阿部さんへのインタビュー記事。一つ一つが生々しく実践的。

・オフライン、オンラインどの経路でもアナグラムにたどり着くように仕掛ける
・「それやったらいくら儲かんの?」を答えられるのに思考する
・簡単に、口だけの無責任なLPのダメ出しをしない
・“頭のいい人”を採用し、適度に負荷のかかる環境を整える

戦略末端のクリエイティブは側から見ていると、簡単に口出しできることもある。しかし、安易に口出しすることのデメリットはたくさんある。

担当者さんにとっては、なんなら自分でディレクションして作っているLPですからね。ダメ出しされたら悩むし凹みます。明確な根拠もなしに簡単に指摘するものではないし、担当者のIQを下げてしまうような行為は許されません。

相手に寄り添うこと、担当者の上位レイヤー(経営・戦略全体)や下位レイヤー(モチベーション・自己責任)まで思いを馳せる必要を感じた。現在マーケティングや組織作りに関わっているか、この部分は特に忘れてはいけないと頭に刻み込んでいる。

Googleマイビジネス活用の基本とは? ローカル検索についてもおさらい

Googleマイビジネスプロダクトゴールドエキスパートの永山さんのウェビナーが記事化された。これはバイブル級だったので熟読・復習したい。

・ローカル検索、Googleマイビジネスの仕組み
・お客様、Googleに評価されるポイント
・上位表示のためのキーワードの関連付け
・インサイトデータの活用・FAQ
・FAQ

短期的なMEOやGoogleマイビジネスを使えばうまくいく、という怪しいコンテンツに比べると、仕組みから理解するのは少し難解かもしれない。しかしGoogleの根本のポリシーや仕組みを理解しておかないと「アルゴリズム変更」や「ガイドライン違反」にスムーズに対応するのが難しくなる。

ここまで具体的に実践ノウハウが書かれていると「もうGoogleマイビジネスやMEOで何か聞かれたら全部これを送ればいいんじゃないか?」と感じる級のコンテンツ。

感じてはいけない感情は、一つもない。不安や怒りなどネガティブな気持ちと付き合う方法とは?

少し前のものですが、とんでもなく良記事でした。

・怒りは「第二次感情」。その裏の第一次感情に寄り添うこと
・感情は生き残るためのプログラム。必要以上の解釈をつけない
・感情の程度に合わせたボキャブラリーを増やしていく
・小さい怒りでも存在を認めて、何らかの形で表現してみる

怒りは、「第二次感情」といわれています。つまり、怒りは何もないところから生まれるのではなくて、「第一次感情」といわれる不安や寂しさ、悲しさが溢れたときに起こる。根っこに別の感情があるんです。だから、怒っている人に対応するには、その裏に潜んだ第一次感情に寄り添うことが大切なんですね。

同様に、自分が怒りを感じているときには、その怒りの根っこにどういう感情があるのかを探ってみるのは良い方法です。

禅などにも通じそうな考え方。私自身よく「怒りを抑える」「感情的にならないようにする」ことを意識しがち。しかし感情が生理反応だとすると、対処法はより明確になりますし、心が軽くなりました。

感情というのは役割があり、生き残るために反応的に湧いてくるプログラムのようなものです。だから、それを起こらないようにするのは難しい。それよりも、反応として湧いてきたものに、必要以上の解釈をつけないことの方が重要です。

言葉の強さに感情が引っ張られる、という視点が新鮮。しかし、そう指摘されると、腑に落ちることがたくさんあります。

感情とうまくつきあうコツとして、いろんな感情に関して、その程度に合わせたボキャブラリーを増やしていくのがおすすめです。例えば、漠然と怒りの感情があるとき。全部「超ムカつく」と思っていると、その言葉の強さに感情が引っ張られて、怒りが増幅してしまう。

感情はコントロールできない。しかし、その感情を無理に抑制しようとすると、負担がかかったり、認知の歪みが起こる。まずは客観的に感情を指標的に捉えるという手法は、取り組んでみたい。

心のなかに溜まっているものはなるべく早めに吐き出すようにしてください。Twitterの鍵アカウントに「こういうことされて、ほほうと思った」と呟くだけでも良い。とにかく感情に蓋をしないことです。

最高のブランド体験は熱量の循環を生み、事業をドライブさせる

オールユアーズのなかごみさんの初(!)note。「グッドパッチ出身でUXデザイナーをしていた」とあり、納得の言語化力。書き出しもエモい。

・最高のブランド体験は熱量の循環を生み、事業をドライブさせる
・ユーザー体験を磨き込むことが、長期スパンで考えたときの最もレバレッジの効く事業成長ドライバー

先日私が書いた「MEOの正体」とリンクする事も多く共感の極み。リアル店舗を持つ方は必見の内容。

・既存のお客さんに徹底的に向き合う
・一見、非合理なブランドアクションが熱量の循環を生む
・いままで体験したことがない衣服の購入体験からUGCが発生する
・オフラインの優れた点は圧倒的に「深さ(体験の情報量)」にあります

「これからの店舗ビジネス」としての発見も多かったが、「UXとは」ということの解像度も上がった。コロナ禍で外出機会が減っている。これから、もっと減るだろう。しかし逆説的にこうした形で「来店価値」「リアル店舗のエクスペリエンス」の解像度を上げていく店舗は「それ自体がスタンス」となる気がしている。

日本社会にとってコロナ禍とは何か|宮田裕章

LINE調査の背景、議論でのコミュニケーションの影響力の問題、未来の作り方。多くの視点と発見を得られる記事。

"小さな波紋だとしても新しい波を作ってインターネットそのものの評価軸や、作り手たちの意識を変えるのであれば、それが社会変革にもつながるかもしれない"

LINE調査の背景。たしかに、収集データをフィードバックされたことで、心理的安全にもつながった実感はあった。

LINE調査でこだわったのは、収集したデータをユーザーに対して価値があるものとしてフィードバックできるということです。「情報くれ。以上。」みたいなスタンスは中国だったらできるんですが、日本だとこれでは協力を仰げません。

以前、台湾のオードリー・タン大臣の記事を読んでも、日本には「テクノロジー倫理」の議論が足りていないように感じた。リテラシー不足の裏返しともいえるが「万能ではない」あるいは「できることを言わずに悪用する(想定外のハックする)」ことへの倫理。倫理の土壌となるコンテクストがない。

たとえばいま多くの知識人たちが、テクノロジーによる解決に対しても反発を持っています。つまり、テクノロジーによる解決自体がデジタル・レーニン主義的な監視社会への接近であると考える人も多い。ただ、この議論は意味がない。というか思考停止です。技術主義か、反技術主義かという議論には意味がなく、最初から批判的技術主義以外の選択肢はないことは明白というか、技術とは定義的にそういうものでしかない。つまりどのテクノロジーをどう用いるのが妥当なのかという議論以外は意味がなく、これは最初から完全に政治的な議論なんです。

新しい未来を作っていく上で「いきなりマインドシェアを直線的に増やしていくのは現実的ではない」。しかし数%ずつでも、評価軸そのものやクリエイター側の意識を変えていく視点は、これから重要になってくるように感じられた。

イノベーターやアーリーアダプターから変わっていきます。つまり、いきなり全部変わるというより、1%から3%に訴求して、それが15%くらいになって、40%にいったところから一気に流れが生まれてくる、というモデルですね。この変化の兆候を掴んだ3%から10%くらいの人たちが生まれるだけでも、一石を投じることにつながると思うんです。それがたとえ小さな波紋だとしても新しい波を作ってインターネットそのものの評価軸や、作り手たちの意識を変えるのであれば、それが社会変革にもつながるかもしれない。そこから流れを作っていけるといいですよね。

7月に書いた5つの記事の紹介と後記

7月は、これまでより「ライター視点」「編集者視点」を意識しながら書いた。「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」を始めてから、ようやく自分の専門分野をきちんと発信する機会を得られた気がする。

1:愛を語っていいモノは、きっと売れ続けるコトになる

「物を売る」ことについての私的メモ。「モノ消費からコト消費」と言われ続けて、ずいぶん経つ。しばらく続けてきたリモート書店員(自分の読んだ本を中心に本をおすすめする活動)を通して、得られた「偏愛で売る」ことの解像度の思考実験。Takramの渡邉康太郎さんの『COTEXT DESIGN』の読者感想文でもある。

広い認知と濃い言及の両方が必要なのだ。そして、濃い言及は、自分との心理距離が近い人からだと強い。評論家のようなプロの書評より、友人の「なんかうまく言えないけど、この本めちゃくちゃ好き」という感情を含んだ言葉の方が、本を買うスイッチになる。

https://note.com/hasebee/n/n546ecab03d3f

2:眠い

直接的な表現をせず、読むひとの理解をわざと遅らせる、牧乃さん主宰の『イカ(異化)』企画。その過程でどんな表現が生まれるか、その種類や濃さを楽しむ。最初にしては、すらすらと書けた。こうした婉曲表現が得意なのだと思う。

https://note.com/hasebee/n/n8535f9808179

3:なにかを間違えている

『イカ(異化)』企画の2本目。2本目は、タイトルだけではテーマが分からないように少し工夫した。「辛いものを食べた」というテーマについて書いている。あるニュースで目にした出来事を書いている。反応は悪くなく、これからも、こうした軽めのエッセイ?チックなものも、リフレッシュで続けたい。

https://note.com/hasebee/n/n81033a1a6869

4:これからのGoogleマイビジネスの話をしよう。MEO、お前は一体何者なのか?

毎週火曜日、Googleマイビジネスの最新情報や個人的な考え、トピックス、ニュースなどをお届けする『これからのGoogleマイビジネスの話をしよう』というマガジンの創刊号。もともと「MEO・Googleマイビジネスの最新情報がまとまっていない」「意外とこの話題はニーズがあるのでは?」という軽い気持ちで始まった。

これは、かなり読まれた。狙っていた「マーケティング層」にまで届いた実感。はてなブックマークからも流入があった様子。

実は何度も書き直した。構成も何度もひっくり返したり、追加したりした。まるまる1本書き直したに近い。「パーツを書いていく→見出しで項目を分けていく→構成を作る→読者目線で問いと答えを見直す→もう一つ新規のnoteを開き再構築していく」という手順。内容はかなり重くなったが、読んだ方からの「注目のポイント」が人によって違い、一義の読まれ方をされなかったのが個人的には興味深かった。

https://note.com/hasebee/n/n326503892c7c

5:口コミに価値はあるのか?これからのGoogleマイビジネスの話をしよう[第2回]

『これからのGoogleマイビジネスの話をしよう』というマガジンの第2号。第2号は1号目に比べて「問い」や「自分の視点」が欠けてしまっているように感じている。もともと1本だったものを構成・ボリュームの点から後編に分けたことも影響しているかもしれない。ただ、このテーマをきっかけに、別分野の人に「Googleマイビジネスとそのテーマについてインタビューさせてください」という動きが作れるようになったのは大収穫。

https://note.com/hasebee/n/n0625f2000bf9

今後のネタ

・「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」VS悪い口コミ編
・「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」Instagram編
・「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」ホテル・観光編
・「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」Twitter編
・イベントのハッシュタグの作り方をまとめてみた
・コーチング発想でMacを買った話
・紙の会社のDXの失敗談
・ローカルビジネス・ローカルマーケティングを定義する
・キャリア紹介。私の仕事。経歴と実績
・組織崩壊はリカバリーできるが、カルチャー崩壊はリカバリーできない

これからもぜひご期待ください。



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