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【ミニ社長塾 第28講】2023年版 中小企業白書の概要から読み取れる3つのポイント

おつかれさまです。
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

先ごろ、中小企業庁から「2023年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要案」が公開されました。

中小企業白書および小規模企業白書は「年単位の報告書」でして、中小企業や小規模事業者の経済動向がまとめられているだけではなく、成長に向けた取り組みの事例も紹介されています。環境分析をするうえで、私は活用しています。

そこで今回は、速報版である概要資料から『2023年版 中小企業白書の概要から読み取れる3つのポイント』について皆さまに記事をお届けいたします。第28講のミニ社長塾も、どうぞよろしくお願いいたします!

1.ポイント①「池クジラ企業を目指してください」

2023年5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」へ移行されることになりました。新型コロナ対応は少しずつ落ち着いてきている感がありますが、依然としてウクライナ危機の影響をはじめとする物価や燃料費の高騰、そして円安。国内に目を移せば高齢化社会に伴う人出不足など、経営環境は厳しい状況にあります。

このような状況のなか、2023年版 中小企業白書の概要では日本経済を成長させていくために中小企業がやらなければならないことが3つ示されています。

それは、
①国内での投資の拡大
②イノベーションの加速
③賃上げ、所得の向上

です。

そして、これらの実現のために重要だと示されている要件が、【競合他社が提供できない価値の創出により、価格決定力を持ち、持続的に利益を生み出す企業へ成長を遂げること】です。これは、社長塾で言うところの「池クジラ戦略」のことだ! と私は思いました。

「池クジラ」とは、小さな「池(自社土俵、市場)」で、圧倒的に一番(クジラ)になることを表しており、社長塾内では共通言語となっています。一般的には「差別化集中戦略」と呼ばれているものにあたります。

競合がいない(少ない)「池」で勝負するためには、扱っている商品やサービスは差別化・独自化していく必要があります。お客様の需要を創出、もしくは掘り起こしていかなければいけないからです。提供している商品やサービスに対して、お客様が実感する価値が高まってくることで、競合他社との価格競争から抜け出すことが出来ます。その結果として価格決定力が生まれ、「圧倒的に一番(クジラ)」になることで持続的に利益を生み出すことに繋がります。

そして、持続的に利益を生み出し続けるためのポイントとしては、市場は「池」で「海」ではない、ということ。つまりは、市場は大きすぎてはいけない、ということです。なぜならば、市場が拡大していくと、自社よりも資金力やブランド力のある大企業が参入してくる可能性が高まるからです。ほどほどの市場規模であることが、大企業に対する参入障壁になり得ます。

以上から、まず一つ目のポイントとしては、経済環境が激変する状況において、中堅中小企業が成長するためには「池クジラ企業」になることを国も意識している、ということです。

2.ポイント②「人材戦略を持ってください」

前提として、中小企業白書の観点は「日本経済を発展させること」です。2023年版の大きな方向性として示されているのは「世界市場の需要を取り込んでいくこと」です。中堅中小企業が持続的な利益を生み出す企業として成長していけば、外需の獲得や地域経済の活性化に繋がります。そうすると、日本経済の発展が期待されます。

今回、この方針について、「戦略」と「経営者」の2つに分けて検討がされています。まずは「戦略」について見ていきます。

ここでの戦略は事業戦略を指しているのですが、事業戦略を見直し、変革する一番の機会は事業承継です。事業承継は、経営資源の散逸を防ぐとともに、経営者の世代交代により企業を変革する好機でもある、と白書には書かれています。今回の白書では、下記に示すデータの通り、事業承継時の事業の再構築が売上高の増加につながっていることが示唆されています。

事業承継時に事業再構築(ここでは、新たな製品を製造又は新たな商品若しくはサービスを提供する こと、製品又は商品若しくはサービスの製造方法又は提供方法を相当程度変更すること)を行った企業の7割超が売上高増への貢献を実感しています。また、事業承継時の経営者年齢が若い企業ほど、事業再構築に積極的に取り組んでいることもうかがえます。

次に、事業再構築など変革を進めるにあたって、人材や資金を獲得することは重要な論点になってきます。これについて、興味深いデータがありますので、ここでご紹介いたします。

このデータから、人材戦略を持つことは採用の成功率を高めるということが示唆されます。また、経営戦略と人材戦略が紐づいていることで売上高増加率の向上に対しても寄与していることが伺えます。

ここでの人材戦略とは、採用目的や採用人物像の言語化といったことから育成、適切な人員配置などを決めていくことです。価値創出のための事業戦略を進めていくためには人材戦略も欠かせない、ということが二つ目のポイントになります。

3.ポイント③「社員の信認を得るようにしてください」

もう一つの「経営者」の話題について、まずはこちらの統計データから。

これは、経営者の成長意欲に関するもので、結論から申し上げると「経営者仲間との積極的な交流」が成長意欲を高めるキッカケになるそうです。また、積極的な交流は同業種・異業種問わず経営者という同じ立場の方同士が良いそうです。

ある社長が、経営者は社員と違って「やめることができない」と言われていました。「ここまでにしなさい」と止めてくれる方は経営者にとっては基本的にいなくて、自らが損切りを決断しなければいけません。もし外部から「そこまで」と言われるときは、会社は取り返しのつかない状態になっているはずです。

経営者は会社で一人だけ立場が違っているから「孤独」と言われます。だからこそ、外で同じ立場の方と交流を持つことは非常に大きな意味を持ちます。社長塾は毎月交流が生まれる場を持っていますが、修了後は年2回はそのような場を持てるようにしています。是非、積極的に参加いただきたいですし、皆様同士で交流を深めていただければと思っています。

また、コチラのデータもご覧ください。

こちらは「従業員からの信認状況及び事業再構築の取組状況別に見た、 売上高年平均成長率」についてで、従業員からの信認を得ていることは業績の向上に繋がるということが示唆されます。

データを見ますと、従業員からの信認を得たうえで事業再構築に取り組んでいる場合、売上高年平均成長率が高い/やや高いの合計は【57.3%】です。信認を得ていない場合の売上高年平均成長率が高い/やや高いの合計は【48.8%】です。

信認という言葉の定義は、「相手を信用し、実力などを認めること」です。従業員から信認を得るためにも、経営者としてのリーダーシップを発揮し、小さくても成果を積み上げていくことが重要だと思います。この部分が三つ目のポイントとなります。

今回は、『2023年版 中小企業白書の概要から読み取れる3つのポイント』について記事を書きましたが、いかがでしたでしょうか?

今回取り上げたものは中小企業白書の概要であり、本文は4月末には公開されます。公開されたら、改めて他のポイントについても触れていこうと思います。 
それでは、次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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