「英語ができるフリをし、嘘をついてきた僕」から考える自分の見せ方

僕は長い間ずっと英語力を偽っていた。

これから話す経験は、ちょっとしたことがきっかけで英語の神童と崇められてしまったことから始まる英語力を身につけるまでの道のりの話である。

自分の能力を事実よりも盛る

みなさんは英語が得意だと公言したことはあるだろうか。中学で英検2級や準1級を取得することで周りから賞賛されたり、女の子から「英語教えて」と少しだけモテたりしたことはないだろうか。これは英語だけに限らず、数学でも体育でも音楽でも言える現象だと言える。

英検2級は高校卒業レベルであり、このレベルに到達していない中学生にとって、これを取得している人を「すげー!」と神格化し崇めることすらある。もちろん進学校などでは英検2級を中学で取得することも決して珍しい話ではないだろう。少しレベルをさげて想像していただきたい。田舎の一般の中学などでは十分に崇め奉られることなのだ。

まさに僕がそうだった。(まだ小学校で英語の授業が無い時代)小学校5年から町が運営する無料の英会話スクールに週一回通い、人より早く英語に触れた。大したことはやっていない。英語でゲームをしたり挨拶をしたりする程度。小6で"What is this?"をやっと学ぶぐらい緩い英会話スクールであった。はっきり言って、たかだか週一回1時間ネイティブと話す機会があるだけだ。しかし、人より早く英語に触れていただけで、中学に入った時の英語の授業など小馬鹿にして受けていた。実際、中1の英語の内容はすべて知っている範疇だったようにおもうが、特に英会話ができるわけでもないのに、ちょっとだけ知っている程度でクラスメートから「英語ができる人」扱いをされた。この時から僕は「あるプレッシャー」を感じていた。

「こんな扱いをされている以上、英語のテストでは1番でなくてはならない。」

そこからは復習よりも予習の日々が始まる。英検も5級、4級をさっそく取得し、見せかけの英語力に箔をつけた。ネイティブの先生が来る時に使えるフレーズを毎回5つほど丸暗記して、質問するときなどに使っていた。そうするとクラスメートから「すげー!ペラペラじゃん」とさらに崇められた。回答されたことなどほとんど聞き取れないのに ”Oh,Really?"  "I see.Thank you."  だけで乗り越えた。周りからしたら質問の内容や回答には興味がないことがわかった。ただ、それっぽく会話風になっていれば無条件に「あいつやべー」となるわけだ。

これが僕が「英語力を偽り、嘘をついた」ということ。

ネイティブすら騙す嘘つき

嘘がバレないように勉強をし続けた。その甲斐あって英語力は確実にあがっていただろう。その証拠に文法もしっかり理解したし、こちらから世間話程度の質問をすることなど容易になっていた。さらに、小学生から英語に触れていたこともあって発音もそこそこよかった。町でやっている英会話スクールにも欠かさず通い続けた。(記憶にある限りでは小5~高3まで一度たりとも休まなかった。)しかし、相手が話していることがなかなか理解できないでいた。大半は語彙力の問題である。

理解はできないが妙なプライドのせいで、徹底して分かっているフリをした。

これは一般的に良く無いことだと言われる。(分かったフリには反対の立場ではあることは名言しておく。)それでも徹底して分かったフリをして、質問された時は、"What"なのか”When”なのかを聞き取り、流れから予想し、"Do you"から始まる質問の時は動詞だけを集中して聞いて、副詞などはすべて無視していた。聞き取れない時は、聞き返し、動詞の意味が分からないときはその意味だけ聞いた。そのやりとりも慣れすぎて非常にスムーズだったので、ネイティブの先生からしても特に評価を下げるものではなかった。そんな偽りの英語だったのに、ネイティブの先生が僕の友人に「彼は英語の天才」と褒めていたと聞いた。実際の英語力など他の人と大して変わらないのに、ネイティブすら騙すことに成功したと思った。丸暗記しているからスムーズに言える表現と発音だけで。

英語が得意という評価を守るために、相変わらず学校の勉強は頑張った。中学の段階で英検も2級まで取得できた。(残念ながら準1級は落ちてしまい、高校1年での取得になってしまったが。)

中1から中3までの全ての学年で共通テストが行われ、徹底的に勉強し中1の時から必ず1位になるように努力した。上級生からも英語ができる子で有名な存在になっていった。

本当に快感だった。

中学時代の留学経験

中学3年次にアメリカのカリフォルニア大学リバーサイド校に短期留学をした。すべて大学側が負担してくれる特待生として参加した短期留学だった。嘘もここまで来るとすごいなと思った。外国人や日本人の大学生と同じクラスで学ぶわけだが、中学生という特異性のおかげでまたもや神童扱いをされた。もう慣れたものだ。授業は簡単であった。歴史の授業などもあったが、偽るために覚えた英単語などがピンポイントで使えた。

例えば、「自由の女神」を英語でなんて言うか。

英語学習者にとっては当たり前のことかもしれないが、そうではないならおそらく分からない人が多いと思われる。

このようなものも一通り偽りのために覚えていたため、積極的に発言をすることに繋がった。その甲斐あって留学中の授業でも「A+」の評価を得るものも少なくなかった。不思議なもので留学中は同じ人種で集まる傾向が高く、中国人、韓国人とつるむことが多かったが、英語力の低い非ネイティブとの会話は非常に簡単であった。少しでも僕より英語力が低い人の場合、(言葉は悪いが)マウントをとることができたし、そもそも早く話せない人が多いのでリスニングなどあまりに容易で会話がしやすかった。現地に行っても僕は偽ることに成功し続けた。

嘘がバレた瞬間

高校生になり、僕はある企業が主催している英語に関するプログラムに参加することになる。倍率の高い試験や面接を突破したわけだ。そのプログラムは日本にやってくるアメリカの高校生と1ヶ月近く共同生活をし、日本の文化を知ってもらうために彼らをホストするという目的のものだ。高校生外交官というわけだ、

僕はこのプログラムで初めて挫折した。なぜならば、一緒に参加した別の高校の生徒たちの英語力があまりに高かったからだ。既に英検準1級を取得し、しっかりとした英語力をそれなりには身に付け、多少の自信をつけていた僕を遥かに凌駕する英語力の持ち主が何人もいたわけだ。高校名を見ると納得した。インターナショナルスクールや英語に力を入れている高校などが多かった。名簿を見ると、一番英語力で目立っていた3人の名前が先頭に書かれ、僕の名前が最後だった。この順番は試験や面接時の評価順であるという噂すら立ち、最初から僕は英語ができない人扱いをされたように思う。それでも、僕の偽りの英語のおかげで、実際にネイティブと話をしている姿を見た他の生徒たちは「あれ?おまえ英語うまいね!」と見直したし、あるネイティブの高校生に関しては「俺がここで出会った日本人でお前が一番英語うまいよ。どうやってうまくなった?」とすら評価してくれた。

このようにもちろん僕の偽りの英語力も伊達ではなかった。

しかし、暗記しているフレーズでは対応できない場面では頭で考えてしまう。文法力も語彙力もあったとは思うが、僕がペラペラスムーズに話す技術は全て偽りだったためだ。一方であらゆる場面でペラペラと会話をしている日本人高校生がいる姿を見ると、完全に僕はただの参加者の一人と化してしまった。そのペラペラの高校生には文法のミスを指摘される始末だった。(のちのち分かったことだがミスではなかったようだがw)

偽りから現実へ

受験勉強は特に英語に力入れ、どんな大学の入試であろうがミスをしない自信すらあった。それだけ休まず勉強した。そして、受験した大学すべて問題なく合格。

受験勉強のせいで英語力は上がってもスピーキングに関してはレベルが落ちたように思うが、相変わらず英語力では目立っていた。ペラペラに聞こえるだけなのに。

しかし、この頃には偽りの英語力は気づいたらかなりのレベルに達していたように思う。世間話では全く問題はないし、頭で考える時間も随分と減っていた。さらに、"you know"などのfillerを挟むことによって、考えていることを隠す術も多く得た。リスニングで悩むことも減っていた。

大学のプレイスメントテスト(TOEFLによる英語のクラス分けテスト)においても帰国子女などと同じクラスになるレベルでスコアも取れた。

この辺りで僕は思った。

「英語が話せるようになっている」

暗記したフレーズの数が膨大かつ引き出しの数が多いため、複雑なことでも何でも言えたし、ハイレベルな語彙が分からない場合でも別の言い回しで問題なく伝えることができた。課題であったリスニングもフレーズの幅が広がり、相手が放ったフレーズが僕自身の引き出しにあったために苦労することはなくなった。

偽りの英語力が現実になった瞬間である。

特に何をやったわけではない。ただひたすら英語ができるキャラを守ることをしただけだ。

そして、今僕はハーバード大学にいる。英語力などいまだに偽りだと思っているし、この大学で僕が一番英語力が低いとも思っている。それでもここまで来たわけだ。

英語だろうが、数学だろうが、プログラミングだろうが、人よりほんの少しだけできる能力があった場合、そのプライドや立場を守るためなら努力ができるという実例である。

見られ方の大切さ

人からの見られ方はとても大切である。

イメージから人は憧れのようなものを持つ。誰かとまったく同じ発言をしてもその発言の持つ説得力がまったく異なる。それが偽りだとしても。

そして後戻りできないところに来ると、人はそれを守るために行動をする。

インフルエンサーたちは何かしらの成功者であるが、その分野において自信やプライドを持っている。意識せずとも、その自信やプライドを守るために努力をし続けていると思う。インフルエンサーになるために努力した人ばかりではないだろうが、一度得てしまった立場、見られ方を守るのはごく普通のことだと思う。

僕の経験は結果論かもしれないが、少しでも得意なことをこれでもかというぐらい自信を持って見せつけた。

これを読んだ方にとっても時にプレッシャーが糧となり、それがいい結果につながってくれたら幸いである。

(ストレスもかなりあるだろうが笑)

ちなみに僕がやってきた英語の学習方法は必ずしも推奨できるものばかりではない。

しかし、暗記だけでスムーズに話せるようになり、それをきっかけに英語力があがることは僕が保証する。


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