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こびりついたシール

ふと見ると、窓にシールが貼ってある。
子どもが以前遊んで貼ったシールだろう。
もう色あせて剥がれかけている。
それが気になって、全部剥がして窓を綺麗にしようとした。

だいたいが簡単にはがせたのだが、最後の大きな一枚だけがどう頑張ってもはがせない。
爪の間に刺さって痛くなりそうなくらい、はがせないのだ。
時間が経って、のりがこびりついてしまったのだろう。それでも最後の一枚が気になってしょうがない。

綺麗さっぱり取り除きたいのに。

カツカツ、カツカツ。
爪を立てながらシールと格闘しながら、
きっと、私の心の中にも何かこびりついたものがあるんだろうなあ。と、ふと思った。

こびりついた何か。
新しい事に挑戦したい気持ちがあるのに、色々考えて前に進めない何か。
別に気にもしなくていいのに、世の中の人と自分を比較して気にしてしまう何か。
自分に対するコンプレックス。

出来ない自分。
周りと比較してしまう自分。
優柔不断な自分。
キライな自分。

色々実はあるだろうな。

でも、本当はそんな事気にしなくて全然良くて。窮屈な自分になんてならなくて良くて。

雲ひとつない青空の様に、さあっと吹く空に飛んでいけそうなさわやかな風の様に、本当は自由なんだって。

全てがクリアになった感覚だった。
身体中に風が吹いていた。
清々しくて、なんとも言えない幸せな気持ち。

ああ、私はずっと自由だった。
今までもこれからも。

どこにでもいけるし、どこに行かなくてもいい。一瞬一瞬、大好きな自分でいるんだった。


全ては自分で決めて生きられるんだった。
なんだかそれを忘れてた感覚になった。

取れないなら違う方法でいいじゃないかと、
シールを見ながら思った。

そして、
爪ヤスリの先の尖った部分を使ってはがせた。

ああ、解決できないことなんてないんだ。
自分で考えて方法を見つけていけばいいんだ。
時間がかかっても。

そんな人生もなかなか楽しいな、
ときれいになった窓を見て思った。

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