ラグビーが持つ力(令和六年一月)

 令和六年一月七日。横浜イーグルス対相模原ダイナボアーズ戦を観戦した。秩父宮ラグビー場は真冬の寒さ。毛糸の帽子に手袋をした観客の姿が数多く見られた。
 ダイナボアーズは泥臭く突進し敵の陣地をグイグイとこじ開ける。イーグルスも負けじと押し返す。また、そのパスも巧妙。スイッチするパスが特にハマって、試合はイーグルスペースに変わっていき、接戦の末、イーグルスが勝利した。
 壮年、老年のご夫婦があちこちで観戦されていた。そのプレイ批評が聞こえてくる、これがまた楽しい。どちらのファンかわからないくらい両チームの好プレイを褒め称える。これぞノーサイドの精神だろう。更に衝撃的だったのはデクラーク選手の呼び方。ラグビーファンの馴染みの呼び名は「ファフ」だと思うが、ご婦人たち(複数いた)は「デク」、「デクちゃん」などと呼んでいる。ワールドカップ優勝チームのスクラムハーフだった偉大な選手が近所の兄ちゃんのように呼ばれるなんて。ファフ、親しまれてるな~。
 スタンド内外で障がい者の方を三人は見かけた。場外の階段をゆっくりと降りるご婦人。観客席の階段で母に手をひかれながら転ばないようにゆっくり降りる女の子。杖をついて帰り道を歩く壮年男性。プロ野球、Jリーグの観戦時には見かけたことが無い。ひょっとしたら、ラグビーにはハンデを背負った方を惹きつける何かがあるのかもしれない。
 選手には、障がい者の方々も客席で応援してくれていることを時には思い浮かべてほしい。きっとそれが、岩山のような強大な敵にタックルするときに勇気を持って突進する力になるはずだから。

令和六年一月十三日


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