ボケその17
ボケ漁も3月に入り繁忙期となる
問屋からはいくらでも欲しいとなり大潮小潮関係無く海に入る。過去に1日9万売り上げた広岡くんとも仲良くなりノズルを長くしたんですと言うのですぐに真似したりして俺とカズコも多い日は2人で6万とか色々な試行錯誤や取り子同士の連携に流石にこれだけ毎日行ってるので地形の把握と水圧や道具の改良など苦労が金に変わってきた。そして腰までの水位の中歩いたりぬかるんだ場所での作業で身体がどんどん痩せていきダイエットにも最適でボケ漁よりみんなで歩こう海の中ツアーした方がいいかもとか、とにかくヤバい病気や薬でもやってんのかぐらい体重が落ちる。
干潟は気温が上がると同時に人手が更に多くなってきた。釣り人も干潟に降りて横並びに竿を出す。大きなクマデをひたすら引きずりながらハマグリを取るものそして1番多いのがマテ貝取りに来てる人で俺たちがボケを取るのに穴を開けてると沢山マテ貝が出てくる。はじめ俺はそれが何かわからず木の棒だと思ってた。リーさんがソレマテ貝ダヨと教えてくれて中国の人みんなそれ取りに来てるとも言っていた。
リーさんはマテ貝も大量に持って帰り食べてたが一度腹を壊しそれから食べてないと言っていたのでなんかそんなイメージで俺も持って帰って食べたが不安な味だった。
コロナが開けたら「不安なマテ貝」というメニューに載せようとその時はそんな事考えたりしていた。そしてマテ貝取りはとても特殊な取り方で穴の空いた干潟の5センチほど上っ面をシャベルスコップなどで掘るそして沢山ある穴の中に塩を入れるのだ
するとしばらく経ってマテ貝がひょこひょこと出てくるそんな漁の仕方だった。
当然そんな気の長い取り方だと大して取れないだろうなってかボケの穴にも塩降ってるわけで俺的には「おめえら俺の漁場荒らしやがって」的なもう気性も姿もすっかり地場漁師となっていた。なぜ俺がそんな事になっていたかというと毎日そこにいる俺に干潟に来る人達が「漁師さんここで貝取っても良いですか?」なんて聞いてくる人が現れそれを遠巻きに見ていた人もあの人に許可取れば大丈夫なんだと勝手に変なルールができていきとにかくここの干潟はあのおじさんに聞けばいいとなっていた。おれもおれもで初めは何取ってるんですか?などの質問に敬語で応えていたがボケを取りながら「まさのぶお前それで良いのか?」と自問しながら考えた結果である
外国人が日本の干潟に遊び来てそこにいる日本の漁師がニコニコしながら敬語で答える…いやこれはダメだろ?と
まがりなりにも木更津の男である
木更津元は漁師町で新日鐵が出来たことにより漁師達に多額の金が入りみな漁に行かずヤクザの開いた盆に誘われケツノケまで抜かれた街の男である(物凄い偏見)
彼女彼らが敬語で答えるようなそんな漁師を求めてるか?
否!
彼らの期待に応えなければと俺なりの漁師
おうおめーらほよぉ!そこ穴あっから気ぃつけろよ!あんだよぉおいねぇーな
と言わば干潟が俺の舞台さぁ光の下へ行こうぜ張に漁師演じてたら心身共にそうなっていたわけだむしろ俺の外見で下手過ぎてる方が怖いし不気味だろと。すると
「きもちわりーんだよ!クソが!」
そんな声が聞こえてくるので振り返ると顔泥だらけにした女が眉間にシワ寄せながら穴を掘っている。確かあれは俺の女房だ何かにブチギレながらボケを取っている
おいおいマイハニーどうしたんだ?何があった?と話を聞くと変な爺さんがよく話しかけてくるとの事でそういえばお前のすぐ隣によく来る同じ爺さんが立ってるなと。
いやいや気持ちはわかるが少し落ち着こう世の中そんな怒る事は滅多に無いはずで魔法の言葉こんげらねはどこいった?で更に話を聞くとボケの穴を掘るとゴカイやイソメというミミズのような釣り餌もでてくる。それを欲しいとその爺さんはカズコの横に張り付いてるわけだ。
カズコよく聞けこんな平日の昼間にだぞ干潟に来てる年寄りなんてのは限られた爺さんしか来てないんだ。すげえ暇な金の無い爺さんかすげえ金持ちの爺さんの2種類だぞと。つまり良くしてあげればわしの財産全部あんたにあげよう可能性があるわけだと。それを聞いて「…そうか!そうだよね」と納得してからカズコは爺さんに優しく対応するようになり何度かそんな事が繰り返された。
俺もその爺さんとは話すようになり毎回大潮で干潟で会いながら話を聞くと92歳で去年奥さんが無くなりやる事ないからここに来てると。まぁ色んなドラマがある。
4月5月と更に気温は上がり大潮干潟に人手が増えるフジロックヘブンステージばりの人手になる。カズコの隣りにはあの爺さんと…んっ?何かカズコの隣りに立ってる爺さんも何故か1人2人と増えていてどんな状況?的なというかこの頃俺に話しかけら人より圧倒的に和子に話しかける人が多くあいつは全ての人が財産くれるんじゃねぐらいに笑顔で対応している。そして公園フェンスの下でボケ漁をしてるカズコの上には数十人のオッサンが群がり中には双眼鏡まで出してカズコを見てる
どういう事?がいつのまにか加速していきそのうちロープを使ってカズコにジュースを渡したり…凄いな1人の爺さんから何かが始まり広がったわけだ。
さながら干潟のアイドルってか
ふと俺の隣には無言でイカツイ中国人が立っているりーさんか…キンさんはアレだけどねぇ。
へーしか言えん。
次回救急車騒ぎに続く
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