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腹筋トレーニング不要論。フットボールパフォーマンスを科学する。



コロナウイルスによる自粛ムードの中、皆さんは自宅でどのようなトレーニングをしていますか?

ほとんどの方が自重トレーニングしかできていないという状況ではないかと思います。

今回は、自重トレーニングの中でもみんな大好き(?)腹筋トレーニングについて考えていきたいと思います。



以前このようなtweetをした通り、僕は多くの選手にとって腹筋トレーニングは不要なのではないかと考えています。今回は、その腹筋トレーニング不要論を詳しく解説していきます。

本題に入る前に1つ断っておきたいのですが、全ての人に腹筋トレーニングが不要であるという主張をしたい訳ではありません。

ここでの僕の主張は、僕自身、選手時代には盲目的に腹筋トレーニングに取り組んできましたが、フィジカルに関する知識をある程度身に付けた今、再び腹筋トレーニングの意義について考えてみると、当時の自分には腹筋トレーニングが不要であった可能性がある、また多くの選手にとって不要である可能性があるということです。

腹筋トレーニングを今すぐやめるべきだということではなく、今一度腹筋トレーニングの意義について考えてみようという趣旨なので、1つの考え方として取り入れていただけると嬉しいです。


腹筋トレーニングの定義


まずは、この記事における腹筋トレーニングの定義を示しておきます。

この記事においては腹筋トレーニングを、

腹筋(特に腹直筋)の長さ変化を伴うトレーニング

と定義することにします。

具体的な例としては、シットアップやクランチ、レッグレイズなどがここで言う腹筋トレーニングに含まれます。

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筋肉としての特性

続いて腹筋の特性に話を移します。

腹筋に限らず筋肉には至適長というものがあり、筋肉は至適長において最大の力を発揮します。

至適長は一般に筋肉の自然な長さの100~130%の長さであると言われており、この長さよりも少しでも伸長されると急速に発揮張力が低下します。同様に、筋肉が短縮された場合にも発揮張力は減少し筋肉の長さが自然な長さの60%程度になると筋肉の発揮する力は限りなく0に近付くと言われています。

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また、ここでは詳しい説明は省きますが、腹直筋はその構造が故に、至適長周辺で大きな力発揮をするのには適しているが、筋肉が至適長から短縮、伸長した際の張力の低下は著しく激しいという特徴を持っています。

あまりピンと来ないかもしれないので、腹筋トレーニングの例として挙げたシットアップを考えてみましょう。

シットアップを行なっている時、腹直筋は実は最大張力(正確には最大随意収縮力)の30%にも満たない程度の張力しか発揮していないという研究データがあります。腹筋トレーニングの定義の部分でも述べたようにシットアップは腹直筋の筋長変化、特に短縮を伴うトレーニングなので、このシットアップの発揮張力の小ささは至適長から外れた状態では腹直筋の張力が著しく低下することの具体例であると言うことができると思います。

また、この至適長から外れた時に発揮張力が著しく低下するという特徴は脊柱起立筋にも見られます。これはこの後の話に繋がってくるのでここで述べておきます。



サッカーの動作の中での腹筋

次はサッカーの試合の中で実際に腹筋が使われる場面を考えてみましょう。

僕の経験上、腹筋を使う動作としてよく挙げられるのは

・強いシュートを打つ時に体を被せるようにする

・コンタクト時や方向転換時に体がブレないようにする

の2つだと思います。

まず、強いシュートを打つ時について考えてみましょう。

体を被せることでふかすことなく抑えの効いた強いシュートを打つことができると言われますが、これは本当でしょうか?

2018年のロシアW杯準々決勝ベルギー対ブラジルでデ・ブライネ選手が決めたスーパーミドルを例にとって考えてみましょう。このシュートは(彼にとっては)割と時間的な余裕がある状態から打っているので、最大限強いシュートを打つための理想的なフォームと位置付けて良いと思います。


それにしてもこのシュートはエグいですね笑笑

これだけ抑えの効いたシュートを打っているデ・ブライネですが、インパクトの直後の写真を見てみると体が被さっているという感じはなく、むしろ地面に垂直にまっすぐ立っています。

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当たり前の話ですがシュートの軌道はボールにインパクトする瞬間で決まるので、地面に対して水平方向に足をインパクトできていれば問題ないので、体を被せるというのは実際にそうなるようにすべきという訳ではなく体がのけぞらないようにするための意識付けというレベルに留めておくのが良いと思います。

より詳しく腹筋の活動を推し量るために、シュートモーションの最初と最後を見てみましょう。

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