はるのぱせり

学生時代の自作ファンタジー小説をきっかけに、四半世紀年ぶりの執筆活動を再開しました。贈…

はるのぱせり

学生時代の自作ファンタジー小説をきっかけに、四半世紀年ぶりの執筆活動を再開しました。贈り物としての物語を中心に書いています。スマホのフリック操作がやめられない。そんな私ですが、応援よろしくお願いします。

最近の記事

窓辺には黄色いバラ

1.畑のきゅうりがなる頃に ああ、今年もこの時期がやってきた。  アイツは今年も忙しいのか。  私は、畑のナスに水をやりながら、深くため息をついた。  現役時代、私は教師だった。  半生、この身を教育一筋に捧げてきた。  主に勤務したのは、中学校。反抗期真っ盛りの生徒たちとは現場で丁寧に接してきた。やんちゃな子供たちの補導にも力を注いでいたから、息子の教育を妻に任せっきりだったことが悔やまれる。だからこそ、息子の発病の知らせには、私たち夫婦は落胆したものだ。  8

    • やっぱり、あなたとHANAしたい!

      やっぱり、あなたとHANAしたい!1.山本ひろみの日常 その時、私、つまり山本ひろみは、チーム・ヴァルハラの一員として、スーパーコンピューター「HANA」の基本プログラムを開発していた。  時は、21世紀の後半に差し掛かる。  家族を持てる人は富裕層に限られ、庶民は結婚はおろか恋愛も難しくなっていた。アパートに帰ればコンビニの出来合いのお弁当を口にするような、味気ない日々の連続である。 「チーフ。現在のプロジェクトの進捗は、この通りです」 「ありがとう。ひろみは相変わ

      • Dr .STAMP〜恋と上司は選べない

        1.千のテクノロジーを持つ男  春の夕暮れ。  ここは、観光都市NAGASAKI。  ビルとビルの谷間を、少女が走る。  ここは、かつて中華街、、、だった廃墟。  追っ手がいるのだろうか、振り切るように、少女は度々、背後を振り返る。  裏路地の行き止まり。  少女は、息を弾ませて立ち止まった。  体は小柄、丹精ではあるが、決して弱々しくはない。意志を宿した瞳と、キリッと食いしばった口元。  焦りが見える。  理由はすぐわかった。  2人組の男たちがが、ゆ

        • ステキなAIの物語

          1.あこがれのみゆき先輩  私は、千々石かな。  運命の出会いは絶対ある。おとぎ話のシンデレラには王子様が迎えに来てくれたように、きっと私にも神様は素敵な人を用意してくれてる。そして、私が自分を磨いて成長できたとき、素敵な人が私の目の前に現れる。  私にとってのみゆき先輩は、まさにそんな憧れの人だった。  ああ、みゆき先輩。  あなたはどうして女性なの? 「それはシンデレラじゃなくてロミオとジュリエットです」 「はうっ」  足元の電化製品から、思わず言葉の一撃

        窓辺には黄色いバラ

          この子、本当に飼っちゃダメ?

          プロローグ ねえ、ママ。  むすめが、わたしに声をかける。  わたし、彼の力が借りたいの。  むすめが続けたその問いに、わたしは問いで答えをかえす。  どうして?  だって、かなしい顔をしている人があまりにおおいんですもの  えらいね。  と、答えて思った。  すべてのひとを幸せにすることは難しくても、笑顔のたねをありったけ届けることはできるだろう  むすめは興味津々にわたしの顔をのぞきこむ。  うん。わかった。きちんと、ふたりを説得するのよ  これは、一台

          この子、本当に飼っちゃダメ?

          ライバルでもある君へ

          最愛の人よ、誕生日おめでとう。 お互い、年をとったものだね。 今なお、たくさんの役割を背負いながら、 夢を話した次の瞬間に行動している、 そんな君に誕生日の言葉を贈ろう。 誰よりも1番近くで支えてくれてありがとう。 こんなことを話してしまうと 君はますます無理をするんだろうな。 君の言葉は、君の絵は、 たくましくて、澄んでいて、それでいて繊細で 今も、多くの人を動かし続ける。 情熱は、幼子を育ててよみがえった 愛に目覚めた瞬間に、そう話した君だから きっと、僕とは違う景色が

          ライバルでもある君へ

          ガウチョをください! (後編)

          第4話 タツキくんの夢 今日もユウキくんの台所は賑やかだった。タツキくんのエプロン姿がテキパキと働いている。  懲りずにその台所に、入り浸っている私とその住人のユウキくん。 「ねえ、ユウキくんが将来したいことってある?」 「海⚪︎王」  目を輝かせながら、目の前のスイートボーイが暴言を吐く。  ジト目で睨みつける私。  手には、ヒーローものの少年漫画を開いている。おそらく今のギャグの引用はそれだな。 「・・・おい」  タツキくんが器用に背後から本をとり、その角でユウキくんの

          ガウチョをください! (後編)

          ガウチョをください! (前編)

          プロローグ 武良尾公園物語 ある日ある時、武良尾公園にガウチョという名の神獣がおりました。  限りなく早く、限りなく大きく。限りなく美しい、神秘に満ちたガウチョの神。  ガウチョは、武良尾公園で仲間と共にくらし、高級な麩が大好きで、多くの人を癒しました。  仲間のめんどりが言いました。「ガウチョ様は、音よりも早く飛ぶ」  ガウチョが羽ばたくと、衝撃波で辺り一面が吹き飛びました。  限りなく早いガウチョを目で追うのは、至難の業でもありました。  仲間の亀が言いました。「ガ

          ガウチョをください! (前編)

          いりこだしのおみそ汁

          尊敬していた祖母がいた。 病院でお見舞いに駆けつけた時、祖母はたくさん繋がれたチューブの中にいた。 意識はないが、まだあたたかい。 僕と叔父のことを親以上に心配していた祖母だった。 ひとり駆けつけた時、自然、口から感謝の言葉が出た。いや、それしか言えなかった。 その夜、病院に近い民宿で他界の知らせを聞いた。 今思うと、祖母は本当は待っていたのだろう。 僕以外が、最期に会うべきだったと、今でも後悔する。 優しくも、強い祖母だった。 小学3年の頃だったか、僕は夏休みを祖父母の

          いりこだしのおみそ汁

          マンハッタンとクロワッサン

          マンハッタンとクロワッサン 第1話 セクション1私の名はクロワッサン。 ドーナツ王国の第一皇女、クロワッサン=サンジェルノ=ラ=ドーナツ 民は、私を王国の三日月姫と呼んでいる。 その夜、私は王城を抜け出した。お付きの従者モルドーとともに。 簡単に言えば、公務、公務の忙しい日々に、飽き飽きしての行動だった。 もっと外の世界を見たかった。 物語の勇者のように、といったら笑われるだろうか。 朝を取り戻した国父ドーナツ王のように、妻ディアフレーズを連れて。 それから100年の月日

          マンハッタンとクロワッサン

          秋に書く、ぱせりの自己紹介

          自己紹介はじめまして、はるのぱせりです。 日頃は、障害者団体の運営活動や講演、執筆活動を行っています。 我が家の食卓の80%は私が取り仕切っている自負があります。 食べ物に対しての執着が、妻以上に強い私です。 誰ですか?!そこで食い意地が張っているだけとか、真相をついた人は! 結婚しています。 男です。おじさんです。 子供はいません。創作上、我ら夫婦の脳内メタバースには、わんぱく娘が一人いるのですが、まあ、戸籍上の子どもはいなかったりします。 だから、どこかで妻のことを

          秋に書く、ぱせりの自己紹介