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電力業界に革命は起こり得るのか

電力の業界は、国の経済とともに成長し、国家と強く結びついている会社が多い。その、特にダークな内情をキャリア官僚が告発した小説として原発ホワイトアウトも話題になった。昨今では、関西電力の小判の問題が大きなスポットライトを浴びた。

では、その電力業界を大きく変える革命は起きるのか

僕は、電力業界を大きく激変させ、再生可能エネルギーの普及を後押しするのは、電力の個人間売買だと思っている。しかし、その電力の個人間売買にも課題がある。

課題 1) 太陽光発電の普及

まず、太陽光発電について考えたい。

太陽光発電は、今までコストが高く、補助金なしでは成立しないと考えられていた。

しかし、太陽光の価格はここ10年で約10分の1まで下がっている。

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また、この価格下落を受けて、今年7月にポルトガルの電力会社が応札した価格は、1.664 cents/kwh(約1.83円/kwh)まで下がっている。

https://www.forbes.com/sites/dominicdudley/2019/10/17/cheapest-solar-energy-in-the-world/#5b1d33db4772

現在のJEPXと呼ばれる日本の取引市場での価格が7.5円/kwh程度なので、いかに太陽光発電が電力市場で競争力を持ち始めているかがご理解いただけると思う。

電力の売電契約には、設備利用率を含んだ売電条件の前提、税務、プロジェクトのファイナンス条件、国による建設費や運営費の違いなどなど複雑な要素が絡むので、一概に比較できる数字ではないが、太陽光発電の価格が競争力を持ち始めているというイメージを掴んで頂ければと思う。

さらには最近では、屋根がしモデルというビジネスモデルが誕生し、太陽光を買うのではなく、自宅の屋根を貸し出すことで太陽光を設置し、その太陽光から発電される電気を市場価格より安価な価格で買い取るというモデルも出てきている。

つまり、これであれば屋根を貸すだけで、初期コストがゼロで太陽光を導入できるばかりか電気代の節約にもなる

課題 2) 蓄電池の普及

昨今の千葉や北海道での停電問題で、多くの太陽光発電システムの保有者が蓄電池を導入し始めている。

また、2019年11月に固定価格買取制度を10年前に導入した世帯が蓄電池を導入するという流れができている。

これは、これまでは1kwhあたり48円で電力会社に売電できていたのが、10年間の固定価格買取制度が終了したあとでは、高くても1kwhあたり10円程度でしか売れないという世帯が今年で53万件、2023年まで165万件出てくることに起因する流れだ。

仮に、電気の市場価格が25円/kwhだとすると、10円で売るのであれば、蓄電池にためて自家消費した方が1kwhあたり15円特になるという計算だ。問題は、この15円の値差で蓄電池のコストが回収できるかということになるが、今の蓄電池の価格ではギリギリ回収できるかどうかというレベルだ。

しかし、この方程式が劇的に改善するトレンドがある。

それはEVの普及だ。

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EVは、それ自体は移動手段として購入されるので、電気的な限界費用はゼロと考えられる(もちろん、そこまで加味してEVの導入を決めている場合はそうではないが、それでも蓄電池のための蓄電池ではないので費用は激安だ)。

一時期は、普及に疑問符を投げられていたEVだが、世界的に見てテスラの強烈な後押しもあり、EVの普及はもはや間違いないグローバルでの流れだ。

課題 3) 個人売買のプラットフォーム

太陽光発電と蓄電池(EV)が普及した世界において、一般過程は単なる電気の消費者ではなく生産者の顔を持つようになる。世に言うプロシューマーだ。

そこまで来れば、あとはじゃあそのプロシューマー同士をいかに繋いで電気の個人売買をさせるかと言うことになるのだが、それがまさにNatureで開発中のNature Remo Eだ。

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Nature Remo Eは、ベンダーフリーで、スマートメーター、太陽光発電システム、蓄電池システムと連携し、電気のモニタリングと制御が可能になる。

このNature Remo Eを全ての太陽光システム、蓄電池のオーナーが使っていれば、どの家でいつどのくらい電気が足りないか、余っているかというデータを統合して管理できるし、プラットフォームとして電気の売買すらもそのプラットフォームで完遂することができるのだ。

じゃあ、どうやってその電気を売るのか。

それは、簡単だ。既存の電力会社の送配電網を使えばいいのだ。今でも、すでに太陽光発電の保有者は電力会社の配電網に対して電力を流し、電力会社に売電している。つまり、仕組みはすでにあるのだ。今、必要なのはそこを統合して管理できるプラットフォームなのだ。

それをNatureではNature Remo Eを使って実現し、分散電源の普及を加速させたいと思っている。

課題 4) 託送料金の問題

ここまでは、未来の不確定要素はあるものの、実現する蓋然性が十分あることをご理解いただけたと思う。

ただ、電力の個人間売買の世界を実現するためには乗り越えないといけない大きな課題がある。

それが、電気の託送料金だ。

今の託送料金の仕組みは、電力会社が垂直統合されてきた時代に作られたもので、電力自由化が起こり、再生可能エネルギーが普及してきたことで電力の需要家側にも発電リソースが持たれている今の実態に全く合っていない。

現状の託送料金の制度の最大の問題は、福島から東京に送っても、東京都内にある隣の家から電気を送っても、同額の託送料金を支払う必要があることだ。

これはどう考えてもおかしい。例えば、品川から福島までの鉄道料金と隣に家に行くまでの交通費が同じと言ってるようなものだ。

と言うと、電力会社からは、託送料金には単純な距離だけの問題ではなく、電気の需給調整というネットワークコストもかかっていると言う反論がでるかもしれない。

もしそのネットワークコストが高くついているのであれば、①ネットワークコストを別の料金体系にする、②ネットワークコストを払わない代わりに需給調整までを個人間売買の世界で実現すると言う2つのアプローチが考えられる。

今、託生料金に関する改革が行われているが、正直中途半端な内容になってしまっていて、発送電分離の議論と同じく、日本の電力業界のイノベーションを大きくな阻害要因になる。しかし、その流れも徐々に変わりつつある。

化石燃料を持たない日本という島国の国益を考えた、健全な議論と政策策定が進むことを願ってやまない。

それが起これば、これまで変わらなかった電力業界を揺るがすような大きな革命だって実現可能なのだ。そして、それはそう遠くない未来に起こる。





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