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ちょっと脱皮できた2021年(個人編)

2021年は、組織や人のことを色々考えさせられた1年だった。

僕個人としても、大きく価値観の変わるような体験があった。その中でも、いちばん自分の中で大きかったのは、人生初の睡眠障害に陥り、

自分がいかに自我という幻想に縛られて生きてきたか

ということに気づけたことだ。これによって、僕の中でモノの見方がバッサリと変わった。

2021年では、もう1つアドラー心理学との出会いがあった。アドラー心理学のことを実践していたことが、自分の自我への向き合い方を変えるきっかけになっていたかもしれない。

アドラー心理学との出会い


僕がアドラーに興味を持ったのは、組織を考える上で人の行動原理をしっかりと理解したいと考えたところからだった。

アドラーは、元々フロイトの下で学んでいたいが、フロイトのリビドー(性衝動)を人間の行動の根源とする考え方に違和感を感じ、独自の心理学を形成していった。

それで、アドラーは、「過去の経験が原因となり、今の行動を行っている」というフロイトの原因論を否定し、「現在の目的を実現するために、今の行動を行っている」という目的論を打ち立てた。

僕もそれまで対人関係において、原因論をベースに考えていた。一方で、アドラー心理学の考え方の方が、現代人の心理の実態を正しく反映しているのではないかと考えるようになり、その考え方を少しずつ実践してみた。

そうすると、思い通りにならない状況に直面した時に、フラストレーションを感じる代わりに、どうやったらその人の目的を別の方法で達成することができるのかという建設的な思考が徐々にできるようになってきた。

驚いたことにそのシンプルな発想の転換で、お願いしてもなかなかやってもらえなかった仕事がお願いしなくても率先してやってもらえるという状況にいくつも直面した。なるほど、僕が思ってた以上に僕がやって欲しいということはみんな気づいていたのか。自分のコミュニケーションの方法に課題があったということを痛感した。

動物としての人間


昨年の9月に仕事とプライベートのストレスが溜まりに溜まったせいか、生まれて初めて24時間眠れないという睡眠障害(入眠障害)になった。これまで、どんなときでも布団に入って1分で入眠できていた自分にとっては驚くべき出来事だった。

おそらく、身体の悲鳴を無視してきた結果、自律神経がズタズタになっていたんだと思う。そんな状況で無意識の自分の抵抗が表にできてたのかもしれない。

実は、健康的な人でも、途中覚醒(夜中に目が覚める)、早朝覚醒(早朝に目が覚める)はよくあるのではないかと思う(日本人の5人に1人がなんらかの睡眠障害を抱えているらしい。60歳以上だと3人に1人)。よくよく思い返すと、自分も数年間その症状があり、夜中に目覚めて仕事をして、また寝るというのを頻繁に繰り返していた。

この睡眠障害の経験を通じて、僕は自分ではコントロールできない(無意識の)自分という存在の大きさを痛感した。それから、今、自分が感じている自分(意識)とは何なのか。それより、大きい自分の存在(無意識)とは一体何のか、を考えるようになった。

そんな大きな疑問を抱き、心理学・哲学、生物学、人類・社会学の書籍を色々と読んだ。そうすると、人間の意識に対する理解や遺伝子に対する理解がこの10~20年で劇的に進んでいることを知った。

ホモ・デウスのハラリ氏によると、「現代科学の最高の仮説として、人間の意識には生物学的機能は何一つ果たさず、特定の脳の作用の、生物学的には無用な副産物だ」、と言うのだ。

また、物理学者のアインシュタインも、「人は自分自身とか、自分の思考や感情などが、体のほかの部分とは切り離されているもののように考えています。これは自分の意識に対する一種の幻想です。」と、晩年プリンストン大学に入院していた頃に書いた手紙で言っている。

そうか意識は生物としての意味がなく、ただの幻想なのか。

それで僕は、人間が生物としてアルゴリズムに従って、自分の人生を全うしているのであれば、全てをありのままに受け入れて、自分がその上でどう行動するかを判断すべきではないかと考えるようになった。

それは自分の力でいかに道を切り開くかに躍起になっていた僕にとって天地がひっくり返るくらい衝撃的な気づきだった。

自律神経の乱れに関しては、この4ヶ月間、毎朝、瞑想、ランニング、入浴、ストレッチ、筋トレ、ギター練習、読書(時間が許せば)という3時間コースのルーティンを継続した結果、ほぼ回復し、睡眠に関しても通常の睡眠を取り戻せた(fitbitのスコアで今週は平均80点を超えている。日本人の平均が77点らしい)。このルーティンは、自己研鑽と体調管理にとても良いことがわかったので、今後も継続したい。

意識と無意識に関しては、心理学者ジョナサン・ハイトの「幸せ仮説」のメタファーが秀逸なので紹介したい。

ハイトによると、意識(理性)とは「象使い」であり、無意識(感性・情動)とは「象」のようなものだという。象使いは、象に指令することはできるが、それは像が欲望を持たないときだけであり、象が本当に何かをしたいと思ったら、もはや象使いは象にはかなわない、と。

自律神経を整えるために始めた、僕のルーティンは、意識下にある象使いとしての僕が、自分の感性や情動という象とうまく付き合うことを助けてくれている。

<心理学、哲学、人類学の面白かった本>

ホモデウス テクノロジーとサピエンスの未来
インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル
しあわせ仮説
サイエンス全史 文明の構造と人類の幸福

最後に


今、エピジェネティクスやクルスパーについての本を読んでいる。

遺伝子がいかに体験を後世に継承するか、遺伝子をどう編集できるかという内容で昨今の科学の進歩を感じて非常に面白い。

科学技術の進化に負けないように、自分自身も成長できるように2022年も自己研鑽をしっかり積んでいきたい。


<エピジェネティクスや遺伝子編集の面白かった本>

クリスパー CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見
遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実

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