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父からの電話

*身内のことなので私は平気ですが、心霊的なのが少しでも苦手な方は読まない方がいいです。ホラー10段階だとすると2ぐらいだけど笑





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父親と私は結構仲が良かったと思う。
子供の頃も、成人してからも2人でドライブに行ったり、「お父さんが昔トラックに乗ってた頃はこっちの道(旧道)を走ったんだぞ」とかよく話してて、私の「旧道好き」はそんな父の影響もあると思う。

ある時、実家に初めて遊びに来た友達が父と私の様子を見ていて言った。
「ともは本当に愛されて育ってきたんだな。今のとも見ててわかるけども」他人の家と比べたことなんてなかったから、そーなのか。と思った。

父と私の会話はいつも漫才をしているようだと母親にはよく言われた。私も父と話しているのは楽しかったしいろんな知識を持ってる父を尊敬していた。

ワイシャツにネクタイ姿で写真を撮るときも普通に写ればいいのに、ネクタイを口元にくわえておどけてみたり、寡黙なとこもあるけれど基本的には人を笑わすことや驚かす事の好きなひょうきんな父だった。

若い頃からそうだったみたいだ。

そんな父が亡くなったのはもう16年前。私はその頃東京に住んでいて(そろそろ帰省しようかな)と考えてメールを送った矢先だった。
いつも通りに買い物をしてる時に、実家で両親と住んでいた弟から連絡が来て父の訃報を知り頭が真っ白に。急いで飛行機に乗って実家へ帰った。

久しぶりに会う父はよくテレビで見る白い布を顔にかけてた。気づけば涙は出ているけど理解は出来ていない。そんな状態だった。

そこからはもう親戚のおじさんおばさんや、お手伝いしてくれる近所の人やいろんな人が入れ替わり立ち代わり、バタバタと事次第を進めていった。

いよいよ父が家を出て葬儀場へと向かう時。
叔父さんや弟、男性陣が父の棺を運び外の車へと向かう。後から続いて家を出る女性陣、その時叔母さんが玄関で私に声をかけた。

「ともちゃん、お父さんの携帯がねさっき鳴ってたの。でもね、着信見たらここ(実家)の電話番号なんだよね」

え??どーゆうこと?
おばさんと2人でクエスチョンがいっぱいに。

実家は不在にする事が多いから、普段家に掛かってきた電話は父の携帯に転送するようになっていた。
けれどこれだけ人がいる時に掛かってくれば、母は出れなくても叔母さんなり手伝いに来てくれてる人なりが出るはず。

なにより家を出るまでの間に電話なんて鳴っていないし、これからお通夜、という状況で家電から父の携帯に掛けることなんてありえない。

わけがわからないまま、そのまま式場へ。お通夜を済まし告別式、親戚への挨拶や葬儀屋さんへの挨拶。誰と話したのか何を話したのかも朧げで体はここにあるのに気持ちがどっか飛んでるような心地で終わった。

そうしてお葬式が終わって実家に戻り、親戚も帰ったあとの静まり返った実家のリビングで、ようやく自分の方に意識が向いた私は叔母さんが言っていたことを思い出した。

そういえば携帯が鳴ってたって言ったっけ…
あらためて携帯の着信履歴を見てみると…

あ…本当だ。間違いない。
実家の電話番号からの着信が履歴に残ってる。時間もそう。父が家を出た時間だった。でも確かに実家の電話は鳴ってなかったよなぁ…。

どういうこと…

…。

あっ?いや、まさか…。でも…もしかして???

亡くなるずっとずーっと前に、父が言ってた事を思い出した。

「もしお父さんが死んだら(家の電話を指して)ここから電話するから。携帯鳴らすからな(笑」

笑いながらも「へー。なにいってんだ笑」と聞き流してた会話。なんの話をしていてそんな事を言ったのか話の前後は覚えてないけれど、いつものようにおどけた感じでいたずらっぽく笑いながら確かにそう言ってた。
それを実行した…?えっほんとに?そんな事できるの?できたの?信じられない気持ちだけど、そう考えれば納得できた。それ以外の要素が考えられない状況だったから。

普通に他人からこの話を聞いたら怖くなりそうだけど、父の事だから怖くはなかった。

むしろ、もし出てたらなにか話せたのかな、とか
どっかで反応見て(してやったりだな笑)って笑ってるんだろうな、とか。
そんな事ばかり考えてちょっと悔しいようなでも不思議な気持ちだった。

人を笑わせることや驚かすことが大好きだった父だけれど。

ねぇ父さん。
これはあまりにもびっくりして文句も言えないや。
本当にびっくりしたよ!って驚きをどこに伝えればいいのさ。
仏壇の前で恨み恨み呟いちゃうからな笑


本当のところはわからないけれど、他の説明が出来ないとても不思議な体験をしたお話。

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