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VTuberが雀魂で日本語のわからないブラジル人に0から麻雀を教えて4ヶ月で雀豪まで育てた話(追記あり)

 皆さんこんにちは。YouTubeで麻雀やゲームの配信をしているはるとふーると申します。
 今回、とても嬉しいことがあったのでnoteを書いてみました。
 タイトルの通りですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。


はじめに

 弟子のジュリオ君が2021年1月12日、晴れて雀豪(Master)に昇段しました。

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 雀豪というのはオンライン麻雀【雀魂】の段位のことです。段位は下図のようになっていて、初心1から始まり、勝ってポイントを増やすことで初心2、初心3、雀士1・・・というようにあがっていきます。
 もちろん負ければポイントは減りますし、ポイントがマイナスになって降段することもあります。段位に応じて入室できる対局場が変わり、雀士3までは国ごとにマッチング、雀傑1から入場できるようになる【金の間】からは世界中の強豪たちとマッチングするようになります。

 その強豪たちを相手に勝ちを重ねてようやくたどり着ける段位が雀豪です。

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 日本語のまったく通じないブラジル人のジュリオ君に、0から麻雀を教えた話を書こうと思います。

事の始まり

 2020年8月、ブラジルの大手YouTuberが日本のVTuberを紹介した影響で、私の小さなYouTubeでの生放送にもたくさんのブラジル人が遊びに来てくれました。
 ブラジルは日本から見て地球の裏側に位置する国で、時差は12時間だそうです。だから、彼らにとって深夜から早朝に活動していた私の配信はちょうどいい時間帯だったみたいです。
 ブラジルの公用語はポルトガル語で、英語が話せる人はそれほど多くないらしく、日本と同じくらいだそうです。そのため、私にとっても彼らにとっても、拙い英語でコミュニケーションを取り、あるいは翻訳ツールを駆使し、配信を楽しんでいました。

 私の配信は雀魂による麻雀がメインコンテンツで、他にもPCやSwitchのゲーム実況等もやっています。後者に関しては言語の違いはあれど、なんとなく面白さが共有できていたように思います。しかし、前者に関しては雀魂が海外展開をしているとはいえ、日本のリーチ麻雀の認知度は低く、彼らにとっては完全に意味不明なゲームだったに違いないでしょう。

ブラジル対日本のフレンドリーマッチ

 9月の半ばに入り、ブラジル人の新規来訪者が減ってきました。おそらくブームが落ち着いたのでしょう。それでもいくらかのブラジル人たちは遊びに来てくれていました。約1か月もの間、意味不明な麻雀というゲームを見続けていてくれたのです。
 その中の一人であるジュリオ君が、私の参加型麻雀配信でこう言いました。

 "​Can I play with you in phone?" (スマホで一緒に遊べますか?)

 私は喜びを爆発させながら"Yes!!"と言いました。もちろん彼は役も遊び方も、文字すらも知らない状態です。一緒に遊んだらどうなるかは想像にたやすいでしょう。それでも私のような弱小VTuberがきっかけで日本の麻雀に興味を持ってくれたことが嬉しかったですし、彼が望むなら一緒に楽しく遊べるように麻雀を教えたいと思いました。
 この時はさすがに役無しのチーや放銃などでジュリオ君がラスってしまいましたが、麻雀そのものにはかなり興味をもってくれたようで、その翌日から大量の質問が飛んでくることとなりました。

ブラジル人のための麻雀入門

 普段から麻雀配信中に自分の考えを説明したり、ちょっとしたテクニックを話したりすることはあったんですが、日本語を使わずに、日本語のわからない相手に麻雀の遊び方を説明するというのは初めての経験でした。
 拙い英語で、時には翻訳ツールに頼り、少しずつ教えていきました。

 まずは、牌の数と種類について説明しました。そもそも字が読めないので、萬子については漢数字を覚えてもらうことから、字牌は記号として序列を含めて覚えてもらうところから始まるわけです。こればっかりは暗記してもらうよりほかにありません(海外版の雀魂には牌の右上にアラビア数字を表示する機能がありますが、ジュリオ君の希望でその機能は使わないことになりました)。
 まさに、彼にとっての最初の大きな壁と言えたことでしょう。

 次に、和了るために必要な4面子1雀頭についての説明です。つまり【数字の牌で123や456のように順番になった3枚、または同じ牌3枚】を4組、そして【同じ牌2枚】を1組を作れば完成し、点数がもらえるということを教えました。
 また、この時に役の存在についてもトランプのポーカーに例えて説明したのですが、とにかく麻雀は役の数が多いのが入門者にとってのネックです。最低限、1つは役がないと完成しても点数がもらえないので、役を覚えるまでは鳴きをせず、リーチを目指していくように教えました。

 これで一応は最低限の麻雀が打てるようになりました。そして、実際に一緒に打って遊べるようになったのです。
 彼は対局を重ねる中で、和了る楽しさを知り、また、人によって勝率に差があることにも注目しはじめました。

初心者から中級者へ

 最初に役について話した時、ジュリオ君は「40ほどもある役をすべて覚えるのは不可能だ」と言っていました。しかし、私が「勝率の高い人たちはそれらをすべて覚えて使いこなしている」と伝えると、彼の中の闘争心に火が付いたのか、「全部覚える」と言ったのです。
 しかし、彼にとっても英語は外国語であり、麻雀に関する資料はインターネットの力をもってしても十分とは言えませんでした。
 そこで、私は彼のために役について英語で説明する配信をすることにしました。
 役の重要度と一緒に、一つずつすべての役を説明していったのです。彼も手元でメモを取りながら、私も麻雀用語を英語でなんと表現するのかを調べながら、時には牌譜で実際の形を見せたりして、時間をかけて少しずつ説明していきました。

 通常の麻雀放送に比べると同時接続者数はかなり少なかったように思いましたが、それでも、彼が麻雀に興味を持ったこの千載一遇のチャンスを逃すほうが後悔が大きいと考え、一生懸命丁寧に教えました。

 それから彼は少しずつ実戦の中で役を作れるようになり、また、他の人が和了った役を見たりしながら覚えていきました。

 また、麻雀そのものの細かいルールについても、より詳しく知りたがるようになり、例えばドラについてとか、フリテンとは何かとか、親の連荘流局についてとか、途中流局とか、3万点返しの南入とか、役牌バックとか、サンマの北抜きとか・・・彼自身が実戦の中で体験したものも、していないものも、様々な質問が来るようになり、一つずつ丁寧に回答していきました。

 彼は私の麻雀放送を見ながら時折、「なぜそれを捨てたのか」を聞いてくるようになりました。
 「受け入れ枚数が~」とか「狙っている役が~」とか、その都度英語で説明していました。特に守備の大切さ降りについての説明をしたところ、彼の中の麻雀熱はさらに高まりました。自分の手をぶっ壊してでも守備に徹することが衝撃だったのかもしれません。
 麻雀は4人で和了を競い合うのが基本ですから、全部を無理に和了りに行こうとするともったいない放銃をしてしまいます。ですから、そうならないためにもベタ降りという選択肢を教えました。牌の安全度についてもワンチャンス2枚切れや3枚切れの字牌など、説明するたびに"ahhhhhhh"と感嘆しながら理解し、自分のものにしていきました。そして、潔く手じまいをすることを"yamepi"と教えました(私が麻雀放送の中でベタ降りするときに「やーめぴ」と言っていたからです)。

2pを止めた理由を聞かれて画像で答えたシーン(この判断自体には賛否両論があるかとは思いますが・・・)

 そこからの彼の上達は早かったと思います。
 多少の牌効率や安牌見落としなどはさておき、押すべきところはしっかり押し、やめるべきところはしっかりやめ、確実にポイントを増やしていきました。
 そして、自分の段位戦の牌譜を私のところに送り「どこが悪かったのか見てほしい」と聞いてくるようにもなりました。
 また、バーチャル雀荘はるとふーるのDiscordでの牌譜検討にも彼は積極的に参加し、稚児さん新篠さん、他にもたくさんのはるとふーるのメンバーたちに牌譜を見てもらい、可愛がってもらっていました(みなさん本当にありがとうございます)。

雀傑昇格、さらなる高みへ

 そんなこんなで11月、彼はついに雀傑に昇格しました。

当時のツイート、嬉しすぎてはしゃぎまくってました

 この画像にもあるように、彼のモチベーションは右肩上がりでした。ブラジルで麻雀牌を購入する方法を探したり、日本の麻雀アニメを見たり、自動卓の存在に感動したり、ブラジル人の友達に麻雀を教えたり・・・。
 そして彼はさらなる高みを目指し始めます。

 「点数計算についてもっと詳しく教えてほしい」

 私たちがスムーズに点数を申告したり、ギリギリの点差でまくったりする様子を見て、彼も自分でそれをできるようになりたいと思ったのでしょう。

 日本人でも点数計算のできない人は少なくはありません。オンラインの麻雀であれば自動で計算してくれるため、それが出来なくてもゲームの進行上は問題がないのです。
 格闘ゲームで例えると、攻撃を繰り出す際、何フレームかけて当たり判定が出て、当てた時にどの程度ライフゲージが減るのか、というのは知らなくても遊ぶことはできます。
 しかし、ガチ勢はそれらを正確に把握し、最小限の努力で最大限の結果を残すことができます。
 彼も麻雀でついにその領域を目指し始めたのです。
 配信を通して、日本人を相手に、日本語で点数計算について説明したことはありましたが、ブラジル人を相手に、英語で点数計算について説明したVTuberは私が最初ではないでしょうか。

即席でペイントを使い英語で符の計算を説明していた時の様子(文字が汚くてすみません・・・)

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 ジュリオ君はしっかりをメモを取って一生懸命覚えました。私が牌譜を使って問題を出し、答え、それを楽しんでいました。

 ある日の友人戦、全員が3万点を切った状態、子のジュリオ君が27000点持ちで迎えたオーラスに、平和ドラ2の手をダマテンで和了しました。彼は和了ればギリギリ3万点を越えることを知っていたのです。この時のバーチャル雀荘はるとふーるのDiscordは大騒ぎでした。

 みんながジュリオ君の成長速度に驚愕し、圧倒され、日を追うごとに彼の牌譜検討はレベルの高いものになっていきました。時には理不尽なラスを引いてポイントを減らし、落ち込むジュリオ君もいました。そのたびに私たちは”Never give up!”と励まし、丁寧に打つことの大切さを説いてきました。彼は諦めずに打ち続けました。

地獄モードを脱出したと思われる時のジュリオ君

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そしてついに・・・

 2021年1月12日、はるとふーるのDiscordに1枚の画像が投稿されました。

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 9月の半ばから打ち始めて4か月、ついにジュリオ君が雀豪に昇段したのです!
 私は、自分が昇段した時以上に大喜びしました。この時ほど、麻雀やっててよかったなと思ったことはありません。
 確かに私たちはジュリオ君に麻雀を教えましたが、彼がこの段位に到達できたのは彼自身の努力によるものです。本当におめでとうございます!

打ち始めて4か月の初心者とは思えない成績・・・

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 もちろん雀豪がゴールというわけではありません。雀豪の先には雀聖があり、そのさらに先には魂天という最高段位があります。
 時間はかかるかもしれませんが、いつの日か、彼は魂天になると信じています(私も負けていられませんね・・・)。
 私のしたことは小さな一歩かもしれませんが、日本のリーチ麻雀が世界に普及し、世界中の人たちと楽しめるようになったらいいなと思います。

追記1

 2022年11月18日午前0時頃、ジュリオ君からDMが届きました。

雀聖(Saint)到達!おめでとう!

 最初は日本語も麻雀も全くわからなかったジュリオ君でしたが、毎日コツコツと勉強を積み重ねて、今では翻訳ツールを使わずに日本語で簡単な会話もできるようになりました。また、麻雀についても日本語でいろんな人たちと意見を交換しあうことができるようになりました。
 本人のモチベーションはまだまだ高く、今後も目が離せません。

追記2

  2023年12月8日午前9時半頃、ジュリオ君からDMが届きました。

ついに魂天(Celestial)到達!すごすぎるぞジュリオ君!おめでとう!

 あれから約1年、DMで突然この画像が送られてきました。魂天到達!おめでとう!すごい!すごすぎる!!!まさに感慨無量です。0から麻雀を始めて(しかも日本語もわからなかったところから)3年と4か月で魂天到達・・・すごすぎます。
 しかもまだまだランキングで上を目指していくそうで、モチベーションの高さがうかがえます。いったいどこまで昇っていくんでしょうか・・・。

 麻雀を好きになってくれてありがとう!これからも頑張れジュリオ君!

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