ありがとうの向こうがわを想像する
やってみたかったこと、先日小学生と一緒にグラフィックレコーディングのワークショップをしました。
一緒に描いてくれたのは、「堀川こども団」の子どもたち。
堀川こども団は、子どもの自信と可能性が奪われない世界をつくりたい、という植松努さんの思いに共感し、1000人を集めて植松さんの講演会を実現した、元小学校教諭ニシムラさんが主催する「子どものより良い育ちを支える会」の活動の中で生まれた集まりです。
堀川こども団の秘密基地は、玄関から台所を通ってお縁に風が通る、伝統的な町家。懐しい黒電話に、階段のない2階、縁側の先に小さなお庭。
絵本に出てくる優しいおばあちゃんのおうちのような素敵な場所です。
興味があって集まる大人と違い、初めてグラレコに触れるこどもたち。
描いてくれるかな?という不安もありましたが、ペンと紙を見ると、前のめりになって、目をキラキラさせながら、すぐに手を動かし始めます。
「よく聞くこと」「よく見ること」
グラフィックレコーディングは描く技術だと思われがちですが、大切なのは「よく聞くこと」「よく見ること」。ことばに頼らない伝え方。
言葉は便利だから、言葉をやりとりしてわかった気になってしまうけど、よく聞いて、よく見てみたら、もっと色んなことが伝わるよ、というメッセージを込めて。
最後にしたワークは「ありがとうの向こうがわ」。
最近ありがとうって言われたときに、その人の顔、しっかり見てたかな?
「ありがとう」という言葉は、とても単純で、一般的な、感謝を伝える言葉ですが、人はこの言葉を口にするとき、実はいろんな顔で言っています。
笑顔の「ありがとう」もあるし、涙を流しながら言う「ありがとう」もあるし、疲れて言う「ありがとう」もあるし、とりあえず言った「ありがとう」もあります。
ここで、突然ニシムラさんに無茶振りし、適当な状況を想像しながら、「ありがとう!」と言ってもらいます。
私も彼女の頭の中はわからないので、答えは知りません。
皆は、その顔よーく見て、ありがとうの声もよーく聞いて、どんな顔をしてありがとうと言ったのか描いてもらいました。
「うわ、確かにそんな顔してたわ!」「目尻下がってたわ!」
今回の彼女がしていた顔は、眉間にしわを寄せながら、目尻を下げた笑顔。皆よく見てる!
じゃあさ、どうしてニシムラさんはそんな顔で「ありがとう」って言ったんだと思う?と尋ねてみます。こたえはニシムラさん誰も知らないから、想像して答えてもらいます。みんなそれぞれに、一生懸命彼女の顔を見て、描いて、考える…
じーっと自分の描いたニシムラさんの顔を見て出したこどもの答えは、ドンピシャの大正解。
「私な、めっちゃ困っているときに、助けてもらったところを想像して「ありがとう」って言ってん!!」というニシムラさん。
私も、ニシムラさんの「ありがとう」は、嬉しそうな声とともに、どこかほっとしたような表情を含んでいたな、と思いました。
とはいえ、当たろうが当たるまいがそれはどうでもいいことで、「ありがとう」の向こう側を一生懸命想像し、その時間を皆で楽しめたことが何よりだったと思うのです。
「実はいろんな表情しながら話してるんだな」
「そういやいつも顔見て話してたかな?」
「描いてみるとただしゃべるより伝えやすいな!」
さて、ひとつでも発見として心に残ったかな?
楽しかった〜!!また教えて〜!!という笑顔に、大人だけでなくこども巻き込んで一緒に学び合えるのだと、私の中にもひとつ可能性がひろがったように思えました。
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