フリーランスさん、契約の基本を知る②
①はこちら↓
契約書は作った方がいい、というのは大前提として、実際には、契約書を作成しないフリーランスさんは、思いの外多いようです。
フリーランスさん始め、一般的になぜ契約書作成をしないのかというと、
契約書を作成したり検討したりするのが難しいし…
クライアントに手間のかかる取引先だと思われたくないし…
そして、契約しようかとなったときというのは、大抵お互いに信用があって、総じて前を向いていて、上手くいかないときどうするかなんて考えが及ばないから、という理由もあるようです。
かくいう私もグラフィックレコーダーとして依頼を受ける場合に、全て契約書を作成するかというと、しませんので…況や、契約書に抵抗のあるフリーランスさんをや。
(弁護士として依頼を受けるときは必ず委任契約書を作成しますが)
小さな取引の場合や、特にリスクを感じない場合には、メールで条件を確認して終わりの時も多いと思います。
じゃあ、どんな場合に契約書を作成する?
次の場合、フリーランスさんならどうする!?
① 会ったことのない友人の知り合いのクライアントから報酬5万円でイラスト2点作成の仕事を受ける場合
② いつものクライアントから1年間のプロジェクトに報酬30万円で継続的に関わって欲しいと依頼された場合
③ 親戚から空き部屋をオフィスとして借りるときはどうする?
契約書作った方がいい?
どういう契約書を作ったらいい?
考えるのが面倒くさいから全部作らない、はナシで!
リスク回避と信用を天秤にかける
契約書の重要性について考えるときいつも思い出す、ある相談があります。
複数の会社が出資をして共同研究を行ったものの、途中で上手くいかなくなり、うち1社が当初責任を持つと約束していた点を認めないとのことで、相談者は大変憤っておられました。
基本契約書はあるものの、責任の詳細な取り決めについては契約書がありませんでした。なぜ作らなかったのか尋ねると、「まさかこんなことになるとは思わなかった。」「信頼していたから。」とのこと。
その責任についての約束は、当事者の記憶の中にしかありませんでした。
「契約書を作らないのであれば、契約書がないことによるリスクを甘受する覚悟で」
これは、そのとき、当時の兄弁が憤慨する相談者に伝えた一言。どっしりと、契約書一枚の重さを実感しました。
契約書一枚、条項の定め方ひとつで、報酬を回収できるのか、心を込めて作成した作品がどう扱われるのか、泣き寝入りせざるを得ないのか、後で何かあったときにとてもとても大きく影響します。
契約書は、後でトラブルが起こったときのリスクを予想して、事前に権利関係や責任の所在を約束して証拠化するもの。
取引の際、相手を信用して契約書を作らないということは、リスク回避より信用を「選んだ」ということです。
契約書をつくるかつくらないか、どの程度詳細な契約書をつくるかは、経営者としての経営判断であり、リスクと信用を天秤にかけて、フリーランスさんが一経営者として選択するしかないのです。
というわけなので、契約書を交わす間もなく早急な対応を求められるフリーランスさんが、契約書を作らないというのもひとつの選択ではありますが、今は電子契約書など簡易に結べる手段もありますし、その選択はどうか慎重にしてほしいな、と思います。
悩んでしまうフリーランスさんは、
「取引金額が○○円以上だったら契約書を必ず作成する」
「初めての取引先の場合は契約書を必ず作成する」
などのマイルールを定めておいて、「私はこういうルールでやっているので、お手数ですがお願いします。」とお伝えすれば、断るクライアントはいないと思います。
また、こちらが大切だと思う取引について契約書を作成してくれないクライアントであれば、取引自体、お断りした方がよいと思います。
よく締結する種類の契約については内容をきちんと理解することが大事、弁護士に見て貰った契約書をマイ契約書として持っておくのも一つの手です。
もし契約書を作成しないのなら
最低限、メールで重要なポイント(報酬の支払い時期、成果物の権利関係)について確認事項を送信→確認した旨の返信を貰い、証拠に残すというのもまた一つのリスクヘッジです。
作るか作らないか、詳細にするかどうか、の基準
ざくっと目安を図示するとこんな感じ↓かなと思います。
濃いピンクは「契約書は必ず作ろう!しっかりきっちり作ろう」
薄いピンクは「契約書は作ろう!簡易でもまあ良し!」
黄色は「契約書は作らなくても良しとする!」
黄色はとっても狭いですね。
最初の例をあてはめるとどうでしょう?
① 会ったことのない友人の知り合いのクライアントから報酬5万円でイラスト2点作成の仕事を受ける場合
② いつものクライアントから1年間のプロジェクトに報酬30万円で継続的に関わって欲しいと依頼された場合
③ 親戚から空き部屋をオフィスとして借りるときはどうする?
フリーランスさんにとって、この報酬金額がどういった金額なのか、修正の多いクライアントかどうかなど状況によっても判断は変わるとは思いますが、ザクっと上のような図を思い浮かべながら、いち経営者としての選択の参考にしてもらえたらと思います。
最後に、契約書がなくても、報酬の請求や相手の責任を追及できないわけではありませんが、契約書がある場合に比べて請求が難しくなります。
そういった場合でも他の証拠を積み上げて請求できることもありますので、諦めずに弁護士に相談してみてください。
ということで、ようやくNDAの話に入ります。続きます~
サポートはより温かい世の中になるよう使わせていただきます。