見出し画像

#074「ある女流作家の罪と罰」

生き方を変えるのは難しい。歳をとって時代が変わって、居場所を失った時に行動を変えられる人は少ないんじゃないかな。と思う。
自分は変わっていないのに、自分は何も悪いことはしていないのに、こんな目に遭うなんて理不尽だと思うだろう。
でも、世界ってそういうところよね。真面目に生きているから良いことがあるわけでもないし、酷い目に遭ったのは自分が悪いから。でもない。自分も誰かも責めなくて良い。たまたま状況がそうなだけ。でもどうしろと。

主人公は元ベストセラー作家で、時代が変わって売れなくなってしまう。書きたいものはあるけれど、もうそのジャンルは受けないと言われてしまう。もっと変われと言われても受け入れられず、お金に困って風変わりな罪に手を染めてしまう。
日々世の中の理不尽さに不満を溜めて、自分に閉じこもって攻撃的になって傲慢な振る舞いをしてしまう。友達も恋人も、そういう彼女にうんざりして離れてしまう。
家賃が払えなくなれば大家は出て行けと言うし、治療費が払えなければ、病院は愛する猫をみてくれない。当然のことだけど、でもどうすれば良いのだろうか。

罪を犯したことで、やっと彼女は自分が思い込んでいた世界を手放すことが出来た。例えば、都会で家賃が払えて時々レストランで食事が出来るって、別に特別なことじゃない。でも、当たり前のことでもない。
手放してみると生き方ってもっと全然違うところにある。そんなことはどっちでも良いのだ。大切な瞬間の幸せだった理由は、もっと他に沢山あったのに。

原題は、Can you ever forgive me
俳優の演技が素晴らしい。素晴らしいシーンが沢山あった。
最近は上手く映画が観られなくなっていたんだけど、ふと観たいと思えた作品。観られて良かった。

あと、音楽が地味だけれど最高。