057たかが世界の終わり

#057「たかが世界の終わり」

家族って何でしょうか。
私はもう随分前から、この問いについて答えを求めることも、解決しようと思うことからも離れているので、コミュニティーのひとつということにしている。

この映画は、その、答えることも説明することも到底不可能な、家族の手触りそのものを映画にして見せてくる。
家族というものは本当に不思議で、家族が家族を文字通り構成しているのに、それが何であるかを当人同士が共有出来ていない。家族と聞いてイメージするものや、そこに思い起こされる感情は、それぞれ異なっている。

毎日繰り返されてきたであろう決まり事や、馴染みの会話。言い争いや、小さな苛立ち。12年振りに帰って来た主人公は、そこに居心地の良さを見付けることが出来ない。だからといって、その生活を続けている彼らにとっても、それが居心地が良いわけではない。
ただ、そうやってやってきたのだ。

簡単には解決出来ない根本的な問題は、根本的であるが故に、馬鹿みたいに何度でも繰り返し浮上して、だけどやっぱり解決なんて1mmも出来なくて、その都度絶望的な気分になったり、もうここで終わりだと思ったりする。
だけど、それを何度も何度も無限に繰り返していくうちに、いつか解決出来るかも知れないんじゃなくて、それが、私達にとっては見慣れた、なじみ深い、懐かしい景色みたいなものになっていくんじゃないか。と、思った。
解決しない。という、選択。
それは、毎日を積み重ねてきた人たちだけの、一緒に居続けるための方法なのかも。傍から見たらみっともなくても、理解出来ない様な形でも、問題を内包する方法。


また此処に出てしまいましたね。困りましたね。と、一緒に途方に暮れて、また引き返して同じ家に帰って、ご飯を食べて眠れば良いのではないか。と、思う。
それが、家族なのかどうかは、私には分からないけれども。