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#095 「アフターサン」

普段一緒に暮らしていない父親との夏休みのバカンスの記録。記憶。
人と人は一緒に居ることが全てでは無い。
本当に支えになるのは、その人とどういう時間を過ごしたことがあるか、どうやって自分に何を伝えようとしてくれたか、そういう記憶の断片だと思う。
懸命に話してくれた言葉や態度は、仮にその時言っている意味が分からなかったとしても必ず覚えているし、時間を超えて、行き詰まった自分を導いてくれる。

私には父親は居ないし、見たことも聞いたこともないし、どういった人であるかを誰からも知らされなかったので、彼が私に言いたかったことなんて無かったんだろうなと思う。恐らく、本当に。興味が持てなかったのだろう。今の自分には、分かる気がする。
しかし残念ながら、人は不在に影響を受けることが出来る。存在する人と同じくらい、居ないということから沢山のことを学び、真の空虚を穴が開くほど覗き込んできた。
他者を思いやれるのだから、身内に特別思い入れられないということだって充分あるだろう。それで良いのだ。
喪失もまた、人に何かを残すもの。
綺麗で、退屈で穏やかな時間の中で、突如揺れて波打つ人の心情が、断片的に描かれて、その細部がいちいち痛々しくて困る。身に覚えしかない。

エンドロールが終わるまで入り込んでいたけれど、現実に戻った途端、わーー!もう暇なのが、良くない。バカンスなんて中止して、布団干したり米炊いたりしなよ。と思った私は、バカンス音痴。